おまけ01 11月11日は〇〇の日!
「今日はなんの日でしょうかっ?」
突然、横にいたレッドスライムがゴーレムに話しかけた。
ゴーレムは戸惑うように、頬に手を当てた。
「今日?今日って何日だっけ?」
「11月11日だよぉ」
いつからそこにいたのか、スポナーから湧いたただのスライムも話に参加してきた。実は普通にモンスター同士なら、スポナーから湧いたモンスターでも話せるのだ。
「11月11日でしょ……?なんかあったっけ?」
「あるよ!あの美味しいお菓子の日だよ」
「ああ、〇ッキーの日か」
ゴーレムは、そうだった、そうだったと笑いながら、地面に座った。
周りにいたモンスターもゾロゾロとゴーレムの周りに集まっていく。いつのまにかゴーレムの周りにダンジョンのモンスターが集結し、雑談が始まった。
「〇ッキーの日だと、ミッ〇ーみたいになるからやめようよー」
「隠すのメタ読み発言しなくていいんだよ」
スポナーから出てきたスライム2匹……AとBとしておこう、が高度な会話を広げていく。周りのモンスターたちも理解している子もいれば、理解できなくて「……?」の子もいる。
「違うよ!今日はサムライの日だよ!」
「サムライの日?どうして?」
「どうせ嘘ついてるんでしょーレッドちゃんすぐ嘘つくもんー」
「ちょっと黙ってて!僕わかるもん!」
レッドスライムがぷんぷんしながら、近づいてきたスライムを手でどかした。
「えっとね、『十一』をね組み合わせるとね、『士』になるでしょ?でね、この字がね、サムライって読むからね、サムライの日なんだよ」
「無理やりじゃなーい?」
「まあ、でもこう言う記念日?って大抵無理やりだからねーこんなもんなんじゃなーい?」
スライムが違うよ、と否定すると、違うスライムはそうかもしれないじゃん、とスライムの中で対立ができ始めた。
それを見かねたゴーレムは、2匹の間に入り、
「まあまあ、いいじゃないか。あってもなくても」
「まあ、そうだけどさぁ」
「バットも知ってるよ、今日は『いい出会いの日』の日でもあるんだよ」
空でずっと黙って話を聞いていたバットが降りてきて、そう言った。
その話を聞いたスライムは、いやいやいや、と言って、
「もしそうだったら僕、進化してみせるよ。どうせ無理だろうけど」
「おー言うねぇ」
スライムAが大きく出ると、スライムBがひゅーひゅーとうまくできていない口笛を鳴らした。
「本当だよ、だって11 11 が人が集まっているように見えるでしょ?だから、1+1=2 でいい夫婦になれますように、って願うから、今日がいい出会いの日なんだよ」
「あれ?でも『いい夫婦の日』って別にあったよね?」
ゴーレムはバットの説明を聞いて、ふと思ったことを言った。
すると、バットは、
「うん、11月22日にあるよ!でも、そっちも同じ意味なんだって」
「じゃあないみたいなものじゃん、これ僕の勝ちでしょ?」
「いやあるんだから負けでしょ」
えー、とスライムAは口を尖らせながら言った。
実際どちらもある記念日なため、スライムAの負けなのだが、認めたら進化しなくてはいけなくなるため、認めたくなかった。
ちなみに、普通のスライムは、できれば進化せずに過ごしていたいと思っている。やられても、またスポナーから同じ意思を持ったまま復活するので、意外にデメリットはなかった。
『2名のプレイヤーが侵入しました』
「あーっ!またいつもの人だよ……この人達懲りないよね」
「ゴーレムにやられても悔しいから来るんだよ、多分」
「変なやつー」
プレイヤーがダンジョンの中に入ってきたことで、集まっていたモンスターたちはバラバラに自分の持ち場へと戻っていく。
それを見たゴーレムも、地面から立ち上がり、戦う準備を始めた。
これが紬のいないモンスターたちの日常。




