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0029 イベントと2日目(昼)

『メッセージが届いています』


紬がログインすると、1つのメッセージが届いている。

何かあったのかと思い、紬はドキドキしながらメッセージを開けた。


『紬!俺たち、水晶の鍵見つけたぜ!これで限定ダンジョンに入れるってことだよな?相当目標達成に近づいていたんじゃないか!?それじゃまた3日目なー 迅』


「えーっ!!まじか……迅たち水晶の鍵、手に入れたんだ……。すごいな……無理だと思ってたのに……」


紬はそう言うと、メッセージを閉じた。

探してくるようにお願いしたのは紬だったが、まさか見つかるとは思っていなかったのである。それも、入手したのは1日目である。相当衝撃だった。


紬は自分がログインしていなかった13時間の間に何が起きていたのかを、把握するために自分のダンジョンのログとスレを表示した。

ログには300を超えるプレイヤーが侵入して、その8割が死亡していると書かれている。


「えっ!みんな魔晶ゴーレムに挑戦しているの!?」


そう、なんと全ての死亡したプレイヤーの死因は、魔晶ゴーレムによるものだった。紬がいなかったこの13時間の間に何が起きたのか。それを説明するには、6時間前に巻き戻る必要がある……。



◇ ◇ ◇


6時間前……。一つのスレでは……。


【時代到来】水晶ゴーレムの進化系、倒すととんでもねえもの出るんだがwww


1.名無しのプレイヤー

来たわ、俺らの無限強化モンスター。こいつがいれば上位の仲間入りが余裕www


2.名無しのプレイヤー

どうせ嘘だろ?そうやって自分と同じようにプレイヤーを死に追いやる。それがしたいだけだろ


3.名無しのプレイヤー

いや、すまんが俺もそれを知ってしまった。最強パーティが倒したところ見てたからな


4.名無しのプレイヤー

最強パーティって……まさかリヒトのことか?


5.名無しのプレイヤー

ああ、かなり苦戦してた。最後はかなり危なかった


6.名無しのプレイヤー

いや、リヒトで苦戦してたら勝てねぇだろ。どんなに強くても俺らには無理だよ?


7.名無しのプレイヤー

それでも、やる価値があるレベルなんだよ


8.名無しのプレイヤー

まじで、やべえからwwwあのアイテムwww


9.名無しのプレイヤー

どんなもんだったのー?私気になる


10.名無しのプレイヤー

倒したらドロップするアイテムは、紫色の水晶みたいな見た目だった。それで目の前でリヒトが使ったんだよ。そしたら、MPとINTが上がったらしい


11.名無しのプレイヤー

一時的じゃなくて、永久か?


12.名無しのプレイヤー

ああ、そうだ。私の能力値は永久に+5されたみたいだな


13.名無しのプレイヤー

本人?


14.名無しのプレイヤー

ああ


15.名無しのプレイヤー

まじすか……じゃあ、やり得じゃん。ワンチャン、イベント終わったらいなくなる可能性あるし、デスペナ考慮してもやるべきだな


16.名無しのプレイヤー

でも一個しかドロップしなかったら取り合いになるんじゃね?


17.名無しのプレイヤー

それはそうだな……取り合いでBANされたくないし、めんどいのも嫌だしな……やらない方がいいか?


18.名無しのプレイヤー

いや、それは大丈夫だ。私のパーティの人数分ドロップした。最低でも4つはドロップするということだろう。あくまでこれは私の憶測だが……戦闘に参加した人数分ドロップするのではないか?


19.名無しのプレイヤー

それはそうかもな……やってみるか


20.名無しのプレイヤー

俺もいくわ



「本当に倒せるのか?だってそいつ30人のプレイヤーですら勝てなかったんだろ?」

「ああ。でも大丈夫だ。今回は強いプレイヤーが30人だからな」


この2人を含め、スレからやってきた30人のプレイヤーが一斉にダンジョンへと入った。ダンジョンに入ると、真っ直ぐ魔晶ゴーレムのいる部屋へと向かっていく。


「いくぞ!」


その掛け声で戦闘は始まった。


「総員、用意!発射!」

「「「「火球」」」」


4人の魔法使いがリーダーの声に合わせて、火球を放つ。

リヒトによって、弱点が炎であることをあらかじめ知っていたのである。


魔晶ゴーレムは防ぐように「反射リフレクト」を発動した。

4方向から放たれたうちの2つは跳ね返し、逆に倒すことができた。しかし、残りの2つは直撃し、魔晶ゴーレムは大きなダメージを負った。


「気にするな!やられるのは覚悟の上だ!死んでも攻撃さえすれば報酬は受け取れるはずだ!いけー!」


もちろん、死んでも大丈夫と言うことはわかっていないのだが、戦意を削がないためには嘘でもそうやって言うのが最適だった。


リーダーの指示で残っていた28人のプレイヤーは、魔晶ゴーレムを囲むようにして一斉に突撃していく。

いくら魔晶ゴーレムとはいえ、全ての方向からの攻撃を防ぐことはできない。近づいてきた1方向の10人ほどを倒すのが精一杯だった。


そして、多くの攻撃を喰らった魔晶ゴーレムはHPが尽きた。


「やったぞー!」

「ドロップ数は……23個だ」

「攻撃をできなかった奴の分はドロップしていないってことか……とりあえずここにいるみんなはもらおう」


ドロップしたアイテムを受け取り、生き残った18人のプレイヤーはバラバラで帰っていった。



◇ ◇ ◇


108.名無しのプレイヤー

ガチでした


109.名無しのプレイヤー

しかも人数分ドロップ。これ人数多い方が得するっぽい


110.名無しのプレイヤー

てか復活はやくね?何分?


111.名無しのプレイヤー

「倒したら魔力チャージ中」って出たから、多分結構はやく復活する


112.名無しのプレイヤー

いってきまーす



早速帰ってきたプレイヤーが情報を共有した。

その情報は瞬く間に広がっていき、気づけば300人を超えるプレイヤーが訪れていたわけである。


しかし、倒せた魔晶ゴーレムの数は4。

紬の方が大きく得をしていた。


「いや……13時間で色々起こりすぎだよ……?」


情報が出回っているスレを見終えた紬は、かなり驚いていた。

まさか自分がぐっすり寝ている間にこうも動くとは思っていなかったのである。


紬が見ている間にもスレはどんどんと更新されていき、気がつくと1000を超える書き込みがされている。


「てか、どうやって魔晶ゴーレム復活したんだろ?」


紬は、なんで??と言いながら、魔晶ゴーレムのステータスを開く。

すると、そこには驚きの復活方法が書かれていた。


「えっ!MPで復活するの!?コスパ良すぎでしょ!」


すごっ、と一人で盛り上がっていると、一つ疑問点が浮かんできた。


「ん……?だれがMPで復活させてたんだ……?まさか……また……?いや、そうだったらこんなに死んでないか……」


紬の頭の中でビジネスのプロとかいったプレイヤーの顔が浮かんだ。

しかし、もしそうだったらこんなに多くのプレイヤーが死んでないはずである。


「あっ、マスター帰ってきてたんだ。おかえりー」

「シルトー誰が復活させてたか知らない?」


うーん、とシルトは手を頬に当てて考えるような仕草をした。

ちなみにシルトはあまりの強さにプレイヤーが来なくて、とんでもなく暇をしていた。


「あ!レッドスライムが復活させてたよ。なんかマスターがきっと喜ぶからっ、みたいなこと言ってた気がする」

「レッドスライムか!」

「呼んだーっ?」


紬が声のした背後をバッと振り返ると、そこには「悪いスライムじゃないよ」とでも言いそうに、体をプルプル振るわせているレッドスライムがいた。

ちなみに、体をゆらしているのは、別に怖いからではなく、この子なりの喜びの表現である。


「いつから喋れるようになったの?すごいや、進化したの?」

「うーん……なんかね、朝おきたらね、進化してね、ふれいむすらいむ、ってやつになっててね、喋れるようになったの」

「そっかぁー!すごいねー!」


まるで3歳ぐらいの子供の喋り方をしているレッドスライム、フレイムスライムにつられて、紬も小さい子供に接するような話し方になっていた。


紬はフレイムスライムを撫でながら、ステータスを確認してみることにした。



フレイムスライム

Lv.6

HP 30 / 30

MP 165 / 165


STR 12

VIT  28

AGI  43

DEX 41

INT  87


スキル

「火魔法:中級」

-「火球」

-「煙火」

-「火炎放射」

-「地爆」



「すっごいスキル増えてるし……強いな……」


相変わらず低い自分のステータスと比べて、悲しくなっていると、フレイムスライムは小さな手で紬をポンポンした。


「ありがとぉ……」

「うんとね、名前欲しいの!」

「ああ、そうだよね……」


紬は思わず、名前ねぇ、と呟いた。

ネーミングセンス0の紬にとって、それはかなり大変なことだった。


「また姉ちゃんに頼りたくないしな……」


できるだけ、姉の力は借りたくない。

色々と迷った結果、自分で頑張ってつけることにした。


「ちょっと待っててね、すぐ帰ってくるから」

「うん!楽しみー」


嬉しそうにフレイムスライムはぴょんぴょんと跳ねている。

それを見た紬は自分にこの子にあった名前をつけられるのかと不安になった。


これ以上ここにいたら自信がなくなる。

そんな気がして、紬はログアウトした。

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