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0026 イベントと新アイテム

1日目が終わる4時間前……。


「茜、本当にここなの?なんか何もなさそうなとこだけど」

「ええ、そうね……。私もそう思うけど、お目当てのものがあるのはここで間違いないわ」

「なぁ!こっちに宝箱あるぜ!」


先に進んでいた迅が曲がり角から顔を出して、そう言った。

茜と陽毬は顔をお互い見合わせ、迅のところへと走って行った。


「見つけたってほんと?」

「いや、嘘なんかつかねぇよ。これ見てみろよ、すっごい豪華な見た目だよな」


確かに迅の目の前には、他の宝箱とは違う宝箱が置かれている。

金の縁で、鮮やかな発色のいい赤色で塗られた金属製の宝箱は、陽毬たちが探しているものだった。


「やっぱりあったわね。早く開けて確認してみましょ」

「そうだね。一応、モンスターの可能性もあるから警戒しておいてね」


陽毬の言うとおり、この豪華な見た目の宝箱がモンスターである可能性は否定できない。万が一のことも考えて、宝箱にすぐ攻撃できる位置に、迅と茜は移動した。


2人が移動したのを確認して、陽毬は宝箱を開けた。


「わぁ……すっごい……これが水晶剣か……」


水晶剣。

宝箱に入っていたそれは、このイベント期間内にしか手に入れることのできないアイテムの一つである。効果は剣を振った時に水晶が勢いよく振った方向に飛んでいく、というもので使い方によっては強くも弱くもなる難しい武器だった。

この武器こそ、陽毬たちがこのダンジョンに来た目的である。


「水晶剣……俺に使いこなせるかは微妙だな。耐久は高いが、STRが高いとは言えねえし……」

「まあ、武器の性能はいいんだよ。それより、他のアイテムも探しに行こ?まだここに、3つ発見されている新アイテムがあるからさ」

「そうね。モタモタはしてられないわ。明日は他にやることがあるのだし」

「まあ、そうだな」


迅は水晶剣をインベントリの中にしまい、代わりにインベントリから一本の剣を取り出した。


「今日はこいつで戦うことにするぜ」

「はぁ……邪魔しないでよ?」

「大丈夫だって。こいつ、銅剣カッパーを信じろよ」

「信じられないから言ってるのよ……」


迅が使おうとしている銅剣というのは、このゲームの中でもかなりの癖強の武器である。STRは当たり前の如く高くなく、耐久も高くはない。

では何が癖を生み出しているのか。それはその剣の追加効果にあった。


「50%で行動不能スタンと毒だぜ?強いだろ、どう考えても」


そう、この剣の最大の癖強ポイント。

それがこのギャンブル確率効果である。迅のいう様に、50%で行動不能と毒を与えるという効果だけなら強い。しかし、この剣はもう一つ追加効果がある。


「50%で自分のAGIが一時的に半分になるのよ?使い勝手が悪いでしょ」

「それにその剣、錆びるもんね……」


茜と陽毬が言った効果。

それがこの剣のデメリット効果である。50%でAGIが半分になるという化け物効果にプラスして、この剣は時間が経つにつれて錆びていく。錆びは3段階あり、3段階目の錆びに到達すると、さらにこの剣の効果が変わる。

しかし、まだその効果は誰も知る者はいない。そもそもこの剣を使っている人が少ないから、効果を知っている人も少なかった。


「俺は先行くぜー!」


迅は準備ができるなり、まだ行っていない道へと走って行った。

迅と同じところに行くと時間の無駄になってしまうため、茜と陽毬は迅が行った方とは別の道へと進むことにした。


「茜はさ、今後このゲームでしたいこととかある?」

「突然どうしたの?」

「いや、私はこのゲームで街とか作れたらいいのになーと思ってさ。茜はそういうしたいことないのかな、って思っただけなんだけどね」


そう言って陽毬はへへへ、と笑った。

「そうだなぁ……」と茜は言って、


「私だったらこのゲームの中の最強になってゲームをクリアしたい、とかかなぁ……まあ私より陽毬とかの方が強いのだから叶わないわね」

「そんなことないよっ!きっと茜なら最強になれるって」

「ありがとう。まあ、他に言うとするなら温泉に入りたいわね。なかなか、現実では行く暇がないから」


温泉、私も入りたい!と元気よく陽毬は言った。

陽毬と茜はそれから、このゲームでしたいことを話しながら宝箱を探した。


「あっ、迅くんからメッセージ来てる」


『こっちに宝箱あったぞ!中身は水晶杖だったぞ。俺らに使えるやつはいないけど、普通に嬉しいぜ!そっちは収穫あったか?』


盛り上がっているうちに、迅は宝箱を発見していた。

迅が発見した水晶杖は、MPを消費して水晶を飛ばせる様になるという武器である。しかし、紬を含めても杖を使う人はいないため、獲る必要はほぼないのだが、限定品ということで獲得していた。


「こっちは収穫ないよ……っと」

「陽毬ーこっちに宝箱あったわよ!」

「ええーっ!今行くー!」


陽毬は迅にメッセージを送ると、茜の元へと向かった。


「わぁ、ほんとだ。また豪華な宝箱だ」

「開けるわね」


茜が宝箱を開けると、中には他のアイテムとは少し違う様に置かれている石があった。


「石……だね」

「どうみたって石……ね」


とりあえず手に取ってみないとわからないよっ、と言いながら陽毬は石を手に取った。インベントリの中にしまい、その石の説明を確認してみる。


「水晶の輝き……?」


その石のアイテム名は「水晶の輝き」で、特に説明文は書かれていない。

他のアイテムと比べると何が何だかわからないアイテムで、名前も抽象的である。


「ハズレかなぁ……まぁいいや」

「あ、迅が最後のアイテムも回収できたみたいだわ。さっさと合流してこのダンジョンもクリアしてしまいましょ」

「そうだねー、私も結構疲れたや」


そう言いながら、んーっ、と声に出しながら手を上に伸ばして伸びをする。

探索を開始してからすでに2時間が経ち、陽毬たちは疲れてきていた。


「おーい、こっちにボス部屋あるぜー」

「おーっ、迅くん。いいところに来たよー」

「疲れたしさっさとクリアしましょ。10分もあればボス戦は終わるわ。陽毬、もうひと辛抱よ」

「うん、頑張るー!」


陽毬は元気よく返事をして、ボス部屋へと歩き出した。

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