0019 ダンジョンとイベント
「イベント……?」
突然送られてきた運営からのメッセージに紬は戸惑っていた。
ゲームが発売されてから約1ヶ月半。ずっとイベントなどが開催される様子はなく、まだイベントができるほど進んでいないのでは、という意見やイベントというものがそもそもないのでは、という意見など様々な考察がされるほど、イベントはプレイヤーから期待されていた。
そんな待望のイベントの開催が突然なんの前触れもなく、告知されたのだった。
「イベントの内容、なかなか濃いわね。かなり盛り上がりそうな内容が多いわ」
「あっ!イベントなら私たちも役に立てるんじゃない!?」
「それだ!」
迅と陽毬は役に立てることを見つけて、ニコニコで喜んでいる。
うん、それなら、と茜までも笑みを浮かべて頷いている。
紬だけまだイベントの内容を見ていないため、何がそんなに3人を笑顔にしているのか、全くわかっていなかった。
「見てみるか……えーっと、水晶の奇跡についての説明……」
今回開催されるイベント、水晶の奇跡。
今からちょうど一週間後の日から3日間にわたって開催され、その期間に様々なことが行われる。
イベントの目的は、期間中に今回のイベントの鍵である「水晶」を多く集めること。上位10名に入ると、限定スキルを与えられる。「水晶」は、期間中にダンジョンに設置され、それを取ることや、水晶を落とす限定モンスターを倒すこと、迷路などに隠されている水晶を見つけることの3つで入手することができる。
他にも、イベント限定のダンジョンが開放される。
そこでは、水晶の入手が比較的しやすく、ユニーク装備と呼ばれる、そのプレイヤーのプレイに応じた限定の装備が、手に入る宝箱が設置されたり、倒すと水晶装備が手に入るボスがいたり、とイベント期間にしか入手できないものが多く揃っている。
しかし、その分入るための難易度は高い。
入るためには専用の「水晶の鍵」と呼ばれるアイテムが必要で、その鍵の入手方法はわかっていない。相当入るのは難しいと言えるだろう。
また、2日経過時に上位15名のプレイヤーは、水晶が手に入りづらくなり、さらに個数と順位が全プレイヤーにイベント終了まで公開される。
ここまでしか説明は記載されていなかった。
しかし、最後には「他にも色々な要素が盛り沢山!お楽しみに!」とあることから、まだ色々と隠されていることは明らかだった。
「うーん……大変そうだなぁ……これ」
紬は一通り説明を読み終わり、メッセージを閉じた。
するとウィンドウには、もう一通のメッセージが届いたという通知が表示された。
「これはなんだろ?」
紬がメッセージを開くと、そこにはイベントに追加情報が書かれていた。
『ツムグ様に今回のイベントに関してお知らせしなければいけないことがあります。今回のイベントで鍵となる水晶。それは主にダンジョンに設置されます。それはツムグ様のダンジョンも例外ではありません。要するに、ツムグ様のイベントに関する義務がございます。義務は……』
そこから長々と紬のしなければいけないことが書かれている。
簡潔にまとめると、ダンジョンの中に水晶を3つ設置して欲しい、というものと水晶を落とすモンスターのスポナーを設置して欲しいというものだった。
義務が多い代わり、紬にも有益なことはあった。
それは、イベント期間DPの入手が2倍になること、そして2日までにDPが10万貯まると、自由に紬がダンジョンから出られるようになるというものである。
今、紬はダンジョンから出ることを許されていない。
ダンジョンから出れば無条件に死亡扱いとなり、ダンジョンマスターが一時的にいなくなるという事態が発生する。
しかし、そのせいで紬はこのゲームのフィールドや町といった場所に行くことができていない。さらにレベル上げもままならない。
ダンジョンから出られれば解決することは意外に多くあった。
さらに紬を喜ばす内容がそこには書かれていた。
「3日目限定で、ダンジョンを攻略すると、コアを入手することができます!?」
それは、そのダンジョンを破壊し、紬のダンジョンと合体することでダンジョンを大きく強力にすることができるということである。
それができてしまえば、紬のダンジョンは大きくなり、攻略するのが難しいダンジョンとしてさらに成長できる。紬がいない間に攻略されてしまうという心配もなくなるだろう。
紬の声に反応して、3人が近づいてくる。
「どうしたの?なんかいいことでもあった?」
「2日目までに10万DPを貯めれば、ダンジョンからとうとう出れるようになるんだ!それに、他のダンジョンの攻略に乗り出ることもできる!」
「そのDP?ってやつをどうやって貯めるのかはわからないが、なんか俺たちに協力できることはあるか?」
「そういえば、さっき協力できる!って喜んでたけど、あれは何?」
迅と陽毬は顔を見合わせて、ニコッと悪い笑みを浮かべた。
「私たちが活躍することで、紬くんのダンジョンを有名にできるんじゃないか、と思って!」
なるほど、と紬は陽毬たちが何をしたいのか理解した。
陽毬たち3人が活躍して、上位プレイヤーに仲間入りを果たし、「このダンジョン、稼ぎやすいよ」と紬のダンジョンを紹介することで、多くのプレイヤーが紬のダンジョンに押し寄せるというわけである。
そうすれば、DPも溜まりやすい。紬には最高の行動だった。
「なるほどね。お願いしてもいい?」
「もちろん!それでDPも貯まるでしょ!」
なんで知ってるの?と思いつつも、スルーし、紬は3人にとある仮面を渡した。
「この仮面をつけてイベント中行動してくれない?」
「なんかこの仮面、効果でもついているの?私には特に何もないように見えるのだけれど」
「いや?特に何も効果はないよ。ただ、僕もその仮面をつけて戦うから、何か関係性を予想させて、イベントに関係あるんじゃないかと思わせようかと思って」
「いい……けど、それじゃ紬くんがプレイヤーってことバレそうだけど……」
「うん。多分、このイベントでダンジョンマスターがプレイヤーってことはバレる。だから先に予想させて利用しようと思って」
「……?俺にはよくわからんかったが、とりあえずこの仮面をつければいいんだな?」
「うん、頼むよ」
仮面を受け取った3人は、イベントに向けてレベル上げをすると言ってダンジョンから出ていった。
3人がいなくなった後、紬は一人10万DPに向けての作戦を考えて、何か企んでいるような笑みを浮かべた。
「楽しみだなぁ……イベント」
祝!! 1章終了!
読んでいただき、ありがとうございました!
今回で1章、「ゲームスタート編!」は完結を迎えました。
公開してから約1ヶ月。カクヨムでは1500PV、小説家になろうでは7000PV、210ptと、8500人もの方に作品を見ていただきました。
小説を書き始めて3ヶ月ほど、さらには中学生の新参者の作品を応援してくれた皆様、さらには全ての話を見てくれた方、ブクマ、星をしてくださった方、全ての皆様に感謝申し上げます。
次の0020からは2章「イベント編!」に突入します。
これからも紬たちをよろしくお願いします。
ちなみに2章に超かわいいキャラが登場します。お楽しみに!




