0013 ダンジョンと迷宮セット 1
「危なかったぁ……」
家に帰ってきた紬はベッドに腰掛けて、先ほど学校で起きたことを思い出していた。このままではいつかバレる。
そのことをどこか遠くで、しかし確かに感じ取っていた。
ため息を吐きながら押し付けられるようにして受け取った、2人のプレイヤー情報を机の上に置いた。
「とりあえず、ゲームやろう。うん」
自分に言い聞かせるようにして、ハードを頭に装着する。
電源を入れると、すぐに紬の意識は仮想世界へと入っていた。
帰ってきて早々にステータスを開いて、溜まったDPを確認する。
DPの欄には+8900と書かれている。
「やっぱりすごいな……」
紬がこの数字のような10000近い数字を見るのは、今日で3度目のことであった。
最強プレイヤーを倒してから、この大量DPは始まった。
紬は知らなかったが、注目度ランキング1位のスレで「最強プレイヤーも負けたスライムダンジョン」という名前で、紬のダンジョンは一躍ゲームの中でトップ3の有名ダンジョンへとなった。
「もし俺が踏破できたら、俺が最強……?」と馬鹿なことを考えた奴らが一定数はいるわけで、そんな奴らによるDPである。
あの日から3日経った今、溜まったDPは28300となっていた。
そして今日、その大量のDPを使ってダンジョンを改造するのだ。
「とりあえず立ち入り禁止にして……っと」
立ち入り禁止。それはダンジョンの中を改造するときにだけできる、特殊状態である。立ち入り禁止にしないこともできるのだが、改造中にプレイヤーが入っていて改造に巻き込まれると、100%バグが起きる。
それを阻止するために、この機能は紬のために作られていた。
「いやぁ、どうしたものかなぁ……」
28300というDPがあれば、ある程度のことはできる。
とはいえ、やってみたい階層追加の1万DPには至らない。新しい機能を増やすにはDPが足りず、意外にもできることは限られていた。
「ダンジョンっぽくするか……?」
紬が目をつけたのは、「風景セット」というダンジョンの中の様子を全て変えるものだ。現在、ダンジョンにセットされているのは「洞窟セット」で、スタンダードなものである。
セット系は基本的に全て高いのだが、「風景セット」と「迷宮セット」は安く手に入れることができた。
迷宮セットは、なんとなく予想がつく。
しかし、風景セットはまるで予想のつかないものだ。わからないものを選ぶのは危険な気がして、消去法で迷宮セットを手に入れることにした。
「えーっと……使用方法は使用というボタンを押すだけ……ならやってみようかな!すぐ戻せそうだし」
特に深く考えることもなく、5000DPで手に入れた迷宮セットの使用のボタンを押した。
カチッ
ゴゴゴゴゴ
ゴーレムの鳴き声よりも低い大きい音を立てながら、ダンジョン全体が大きく揺れ始める。危険を察知したのか、ゴーレムたちは管理部屋の前へと向かってくる。
「これ……大丈夫なやつ?」
紬が心配しても時すでに遅し。
ダンジョンは大きな音を立てながら崩壊し始めた。
「押しちゃダメなボタンだったぁぁぁぁ!!」




