第10話:群体の餓者髑髏
魔界にも、人間界と似たような木が生えていないわけではない。
港町バーバラの北にある森は、パッと見はあちらにもあるような広葉樹林だ。
馬車が通ることもあるのか、広めの道に轍の跡が残されている。
「ライト。キミの偵察術は、次元の裂け目を見つけられるかい?」
「少し時間は掛かりますけど、可能です。いつもより広めに探るので、集中しますね」
ライトはその場にしゃがみ込んで、祈りのために胸の前で両手を合わせ、まぶたを閉じた。
普段は簡略化しがちな呪文を正式な語順で唱えていく。
「──霊智の風を従えし、占導の神ペリストルコよ。
今ひとたびの加護を我が身へ。立ちし風にてこの鈴を導け──」
ライトの周囲に淡い光が立ち始める。
脳内に森の地図が浮かび上がって、怪しい区画が導き出された。
ライトは術を停止して、ゆっくりとまぶたを開き直した。
「わかりました、ホタルさん。
あっちのほうに、穴が空いてます。距離は約1kmってところです」
「⋯⋯その方角だと、道からは外れるね。
悪路を行くことになるが、二人とも大丈夫かい?」
「ボクは冒険者ですよ。そのくらい問題ありません」
「はい⋯⋯、わたしも大丈夫です⋯⋯」
ライトとサクラが頷き返す。
ホタルはいつものように微笑んで、ライトの顔を見た。
「偵察は頼んだよ、ライト。私とキミで、彼女を魔獣から守るんだ」
「わかりました。裂け目までボクが先導します。ついてきてください」
「は⋯⋯、はい⋯⋯っ!」
ライトは慣れた足取りで、茂みの隙間から森の奧へと入っていく。
サクラがその後を追いかけて、ホタルも続いた。
歩きながら、サクラが話しかけてくる。
「あの⋯⋯、ライト様⋯⋯。先程の詠唱は、聖句ですよね⋯⋯?
ライト様は神聖教会の神官様なのですか⋯⋯?」
「違うよ。この格好を見ればわかるだろ」
「そうなのですか⋯⋯? では、どこであの聖句を⋯⋯?」
「父さんが教えてくれたんだ。旅に出たいなら暗記しろ、って」
ライトの父親は、若い頃は冒険者だった。
妖精を追いかけ回ってて危なっかしい息子に、父はあれこれと生存のコツや冒険知識を教えてくれたのだ。
ライトが年齢のわりに、魔獣の特徴に詳しかったり、罠の分析が早かったりするのはそのせいである。
彼は妖精以外にはまるで興味が湧かなかったが、妖精探しに役立つかもしれないと思えるような内容ならば、つまらない座学にも堪えられた。
「ライト様のお父様は、名のある冒険者だったのですか?」
「知らない。そういうの、興味無かったし」
ライトは素っ気なく言って、偵察術を起動した。
定期的に偵察術を使い直すのも、父親からの教えのひとつだ。知らないうちに魔物の住処へと迷い込む可能性を潰せる。
ライトは周囲の気配を探って、ホタルのほうを振り返った。
「ホタルさん。次元の裂け目の真ん前に何かがいます」
「悪魔かい? それとも魔獣かい?」
「解析⋯⋯、完了。この感じはたぶん、アンデッド系ですね。
魔力の拡散率からすると⋯⋯、憑依型かな⋯⋯?」
「並びを変えよう。私が前に立つ。キミはサクラを見ててくれ」
ライトは頷き、ホタルと場所を入れ換えた。
ホタルはカンテラを掲げながら、油断無く森を進んでいく。
次元の裂け目が出来ていたのは、森の中にある湖の畔だった。
空間が歪んで、環境魔力が大きく歪み、空気が重く感じられる。
いつの間にか曇り始めていた空の下には、一匹の魔物が待ち構えていた。
「ほう。これはなかなか、立派な餓者髑髏だな⋯⋯!」
湖に半身を沈めるように、巨大な骸骨が横たわっている。
細かな魔獣の骨が組み合わさって形作られたそれは、一行の来訪を感じ取り、カタカタと音を鳴らしながら首を持ち上げた。
眼窩に睨め付けられて、サクラがびくりと肩を震わせる。
「魂のほうも、一人や二人では無いな。いったい誰の作品なのやら──!」
ホタルが飛翔術を展開し、空の上へと飛び上がった。
青白い火の玉がカンテラの中から撃ち出され、敵の指先を砕く。
「サクラ、こっち! 隠れて!」
「は、はい⋯⋯!」
ライトはサクラの腕を引き、木の陰にある茂みへ隠れた。隠遁術の呪文も唱えて、餓者髑髏からは気配がわからないようにする。
敵の興味は、攻撃を仕掛けながら飛び回るホタル一人へと向いた。
巨大な骸骨の腕が、怪火を握り潰さんと宙に伸びてくる。
ホタルはひらりとマントを翻しながら、華麗に指の隙間をすり抜けた。
「ガラ、ガタ、ガラガラガラガラ──」
髑髏が骨々を揺らして大きく嘶く。
サクラは初めて見たアンデッドの恐ろしさで思わず、ライトにすがりついてしまった。
ライトは動じない。
腰の短剣に手を掛けたまま、偵察術を油断無く張り続け、不意の第三者からの襲撃にも備えている。
「ライト様⋯⋯!」
「静かに。お前を守れなくなる」
冷静な声でそう言われ、サクラは自分の口を指先で押さえた。
涙目で餓者髑髏へと視線を向けるが、やはり恐ろしくて直視は出来ない。
サクラは肩を震わせながら、ライトが真剣な顔で戦況を見守っている様を見つめた。
ライトはサクラの護衛を任され、普段より気が立っていたのだが、会ったばかりの彼女にはその鋭い眼差しが格好良く感じた。
髑髏はホタルの炎に穿たれ、体躯に欠けが目立ち始める。
しかし、このペースでは、倒しきるまで時間が掛かりそうだった。
「⋯⋯巨大過ぎてキリが無いな⋯⋯」
餓者髑髏は、複数の遺骸による「群れ」だ。
例え首を刎ねたとしても、残された体に宿るいずれかの魂が次の指揮権を得て、新たな髑髏を形成していく。
「異界送りは⋯⋯、ここだと次元の裂け目が活性化して、サクラの故郷に飛ばされかねないか⋯⋯」
ホタルは空中から敵を見下ろしながら考える。
なかなか捕まらないことに業を煮やしたらしい餓者髑髏が、大口を開けて体を起こした。
「おっと⋯⋯!」
ホタルは更に上空へと飛び、髑髏の噛みつきを回避する。
ガチン!と噛み合わされた骨々が、それでも相手を食らおうとして、ぐわりとその形を組み換えた。
頭骨を象っていた場所が、スライムが伸び広がるかのように表面を波立たせ、無数の角を突き出してくる。
ホタルの視線が背後に向いた。海霊である自分には、これ以上は高く飛べない。
「くっ、── EKSPLODU !」
ホタルは怪火を前方に飛ばして、炸裂魔法を叩き込んだ。
炎が勢い良く爆発し、骸骨の角を強引に押し返す。
バラバラと砕けた骨片が湖に落ちて、水面を荒らした。
危機は脱したが、追撃が来る。
餓者髑髏の全身に棘が現れて、ホタルを鋭く突き刺そうとする。
まるでハリネズミのような見た目へと変わった敵の姿に、ライトが短剣を握り締める卯での力も強まった。
もしかしたら、ホタルさんが負けるかもしれない。不安で魔法の制御が揺らぐ。
隠遁の効果の薄まりを感じ取ったのか、餓者髑髏の顔がライトたちのほうを向いた。
「──ミラクル♡エレガンス☆ビーム!!」
森の奧から声が聞こえて、魔力の螺旋が湖の上を通過した。
夜闇ように暗い霧状の魔力が、嵐のように乱暴に餓者髑髏の体を叩き壊す。
甘い香水の香りが漂い、優雅な足取りで現れた夜魔が高らかに笑みを浮かべた。
「おーっほっほっほ!
ワタクシのお気に入りの魔族に、傷をつけようだなんて蛮行は、ワタクシが許しませんことよ~!!」
ノクタリオは笑いながら、扇子で宙にハートマークを描いて、もう一発ビームを撃ち込む。
湖に沈んでいた餓者髑髏の下半身まで、完膚なきまでに砕かれていく。
強い。迷宮作成はてんでダメなのに、なんだこの威力は。強すぎる。
拍子抜けするほどあっさりと片付けられた餓者髑髏を見て、ライトは目を白黒させていた。
⋯⋯こいつ、本当にあのリオか?
「ありがとう、ノクタリオ。助かったよ」
ホタルが地上へと降りてくる。
ひとまず、ライトもサクラを連れてリオのそばへと歩み寄った。
ノクタリオは自慢気な顔で微笑んでいる。
「ワタクシに掛かればこのくらい、何てことはありませんわ!」
「ふーん、そうなのか。ところでリオ、なんでこんなところにいるんだ?」
「お礼くらいちゃんと言いなさいよ! 本当に貴方は失礼ですのね!」
「は、はわわ⋯⋯! あ、あの⋯⋯、助けていただいて、ありがとうございます⋯⋯!」
リオの剣幕に気圧されたのか、サクラが慌てて頭を下げる。
ライトは特に何もしなかった。別にいいだろ、相手はリオだし、と完全に舐め腐った態度を取っている。
リオは苛立った表情でライトの顔を睨みつけた。
「ふん、なによ! 貴方が魔獣を増やせと言うから、こんな田舎まで来てあげましたのに!
予定をキャンセルして、帰ろうかしらっ!」
「魔獣を捕まえに来たのかい?
この辺りには、キミが好みそうな種族はいなかった筈だと記憶しているが⋯⋯」
「まあ、嬉しい! ホタルはワタクシの話をちゃんと覚えていてくださったのね!」
リオがホタルの体に抱きつく。
夜魔と言えば、他者を魅了して骨抜きにする恐ろしい悪魔種族の筈だが、ホタルに対しては何故かリオのほうがメロメロだ。
リオはニコニコと笑顔になって答え始める。
「ええ、そうですわ。貴女の言う通り、ワタクシの目的は在来の魔獣ではありません!
最近この辺りで目撃情報が増えている『キュマイラ』を捕まえに参りましたの~!」
「⋯⋯そんなに沢山のキュマイラが目撃されているのかい?」
「そうなんですのよ! 何匹かは処分されてしまったそうなのですけれど、次から次へと湧いていますの!
だからワタクシが五十匹ほど頂こうかと!!」
ノクタリオが楽しげな声で言う。
キュマイラは既存の生物を魔術でツギハギした生命体であり、基本的には狂った魔術師の被害者なのだが⋯⋯。
50人以上の人間が怪物に加工されているという前提を、リオは全く気にしていない。流石は悪魔だ。
「せっかくですから、貴方にも手伝わせてあげますわ。喜んで奉仕なさい、人間」
「やるわけないだろ、ばーか。
⋯⋯ホタルさん、サクラを早く帰しましょう」
「そうだね。⋯⋯すまない、ノクタリオ。
私たちは彼女を次元の裂け目まで連れてくる依頼を受けていたんだ」
ホタルがノクタリオに断りを入れ、サクラのほうへと視線を向ける。
リオは仕方なさそうな顔で抱き締めていたホタルを離した。
「さあ、サクラ。そこの揺らぎに向かって進めば、あちらの世界に戻れる筈だ」
「は、はい⋯⋯! ホタル様、ライト様⋯⋯、誠にありがとうございました⋯⋯。
これ、約束の魔晶石です⋯⋯。どうぞ、お受け取りください⋯⋯」
サクラが手首からアクセサリーを外して、ホタルへ手渡す。
彼女はぺこぺこと何度も頭を下げながら、次元の狭間へと消えていった。
これにて、依頼は達成だ。
「後はカカオカの木の実集めだけですね。
行きましょう、ホタルさん」
「そうだね、ライト」
ホタルは魔晶石のブレスレットをポケットにしまって、優しく微笑む。
湖の畔から立ち去り始めた二人の背中に、ひどく狼狽えた声が慌てて追いかけてきた。
「ちょ、ちょっと、お待ちなさいな二人とも!
ワタクシを置いていくつもりですの!?」
「リオは元々、一人で探すつもりでここに来たんだろ? なら別にいいじゃん」
「良くありませんわ! せっかくホタルと会えたのに!
ワタクシに着いてこないなら、ワタクシがホタルに着いていくことにしますわ!!」
「え、やだ。リオめっちゃうるさいし」
「はァ~!? 誰が騒がしいですってぇ~!!
人間風情が生意気ですのよ!! ワタクシの魅力に屈従し、ワタクシの言葉に隷従しなさい!」
「⋯⋯ノクタリオ。あまりライトを困らせるようなら、私がお説教することになるよ」
「そ、それはあんまりですわよ、ホタル~!
ワタクシ、ホタルに怒られてしまったら、ショックで寝込んでしまいますわぁ~!!」
リオがまたホタルに抱きついて、甘えるように頬を擦り寄せる。
ライトはリオの関心が自分から離れたことに安堵して、眉間に出来ていたシワを伸ばした。
不思議なことに、リオがホタルにベタベタしていても、ライトには不快感が無い。
⋯⋯ホタルさんの態度が、優しすぎないからかな。
ライトはぼんやりと考えながら、二人の会話を耳に入れていた。
「木の実を摘みに行くのでしたわよね?
でしたらワタクシ、見ましたわ。そっちのほうにミューワルの林がありましたの」
「そうなのか。情報ありがとう、ノクタリオ」
「うふふ。お礼は言葉だけじゃなく、行動で払ってくださってもいいんですのよ♡」
「悪いが、私はキミの迷宮で門番を勤めるつもりは無いよ」
「つれないですわねぇ⋯⋯。でもそのクールな反応がまた魅力的ですわ~!」
リオがまた何かはしゃいでいる。
ライトは偵察術を起動して、周囲の様子を探ってみた。
この森は、次元の裂け目が出来やすいという話の通り、魔力の反応が不安定だ。
サクラの移動をきっかけに揺らぎが大きくなっているのか、先程までよりも淀んでいる。
魔獣は近くにいないようだが、時空のゆらめきと共に、不穏な感覚がじっとりと肌に纏わりついてくる。
「⋯⋯危険は感じないけれど、なんかストレスだな、これは⋯⋯」
例えるならば、騙し絵をずっと見ているような気持ちになってくる。
ライトは早々に魔法を閉じた。
リオの言っていた林はもうすぐそこだ。
木立の色味が変わって、少し開けた空間に出る。
まばらに生えているミューワルの木には、楕円形の黒い実が幾つもぶら下がっていた。
果実の見た目は、人間界の桑の実にやや似ているだろうか。あちらとは違って表皮が硬く、簡単には潰れそうにない。
「ライト、摘んだ実はこの袋に入れてくれ」
「わかりました」
ライトは枝に手を伸ばし、果実を収穫していく。
ホタルも飛翔術を使って実を摘み取った。
「これって人間も食べられるんですか?」
「そのままは無理だね。柔らかく加工して瓶詰めにしたものが、市場などで売られているよ」
「⋯⋯魔界って、意外と人間向けの食品が流通しますよね」
「人間は悪魔の元で働いていたり⋯⋯、⋯⋯人間に体質が近い獣人もいるからね」
ホタルが何かを誤魔化すように微笑んだ。
悪魔の中には、人間を家畜のように扱って魔力を搾り取っている者もいるのだが、わざわざ教える必要は無いだろう。
ライトは興味が薄そうな顔で、雑に相槌を打っている。
「そうなんですか。⋯⋯木の実、これくらいで良さそうですか?」
「ああ。助かったよ。ありがとう、ライト」
ホタルは果実でいっぱいになった小袋の口を閉じて、魔法のポケットの中へとしまった。
二人の作業中、暇を持て余していたノクタリオは、ぶらぶらとミューワルの木の周りをうろついている。
ノクタリオがなんとなく視線を上げてみると、木の葉の陰に隠すように貼り付けられていた小さな紙切れが瞳に映った。
「あら? これは何かしら⋯⋯」
ノクタリオは手を伸ばし、紙切れを剥がす。
紙の裏側には、リオにはイマイチよくわからない記号と呪文が記されていた。
「ホタル。そこで、このようなものを見つけたのだけど⋯⋯」
ノクタリオがホタルの手袋に差し出す。
ホタルと一緒にライトも手元を覗き込んでみた。
「これは⋯⋯、呪符の類いかな⋯⋯?
書いてある文字は古代語だね。何かの神の聖句のようだが⋯⋯。ライト、わかるかい?」
「うーん⋯⋯。ボクには読めないので、音読してもらえますか?」
「上から順に『偉大なる古き神』『世界を廻る者』『共に離れること無かれ』、だよ」
ホタルがスラスラと読み上げる。
精霊学者として、古い文献も調べているため、古代語にも精通しているのだろう。
ライトはホタルの言葉から、合致しそうな聖句を脳内の知識で探した。
「それは⋯⋯、召喚術の呪文ですね。
魔力が不安定なこの森に仕掛けられていたということは、人間狙いかもしれません」
「次元の狭間に近づいた人間を引き寄せる罠か⋯⋯。
ひょっとすると、私たちの転移事故もこの仕掛けのせいかもしれないね⋯⋯」
ホタルが苦い顔になる。
もしもそうなら、森に貼られている御札を始末しておかなければ、次元移動で安全にライトを運んでやることが出来ない。
ホタルはノクタリオのほうを見た。
「⋯⋯ノクタリオ。少し手を貸してくれないか?」
「ええ、勿論。貴女の頼みなら構いませんわよ。ワタクシに何をお望みかしら?」
「カカオカにこのミューワルの実を届けてきてくれないか?
私はこの罠を破壊して、人間に対する魔力干渉を止めねばならない」
ホタルがノクタリオに小袋を手渡す。
ノクタリオは少しつまらなそうにしながらも、ホタルの依頼に頷いた。
「せっかくワタクシを頼れるのだから、森の木を魔法で全てひっくり返せとか、犯人のことを骨抜きにして傀儡にしてこいとか、言えばいいのに。
ホタルって、本当に変な人⋯⋯」
「払える代価があまり無いものでね。⋯⋯頼んだよ」
「ええ。任せてちょうだい」
ノクタリオが袋を受け取り、夜魔らしい優美な足運びで、森の外へと向かっていく。
空間移動も使えるリオが、敢えて徒歩を選んだのは、道すがら御札探しもしてくれるつもりだからなのだろう。
ライトが想像していた以上に、リオはホタルに甘かった。
「さて、ライト。この森に貼られた呪符を剥がして回ろうか」
「わかりました。この御札と同じものが近くに無いか、偵察術で探ってみますね」
ライトはホタルから御札を受け取り、偵察術を起動する。
御札は地面に円を描くかのように、全部で七つ配置されていた。
手元のひとつは既に剥がされているため、残りは六つだ。距離はそう遠くない。
「行きましょう、ホタルさん」
「ああ。案内してくれ、ライト」
二人は何者かによる罠を壊すため、森の中を進み始めた。