闇医者を追って
3/25、コミカライズ発売中です!!
ヘヴンズ・ドアで一番大きな大病院。
顔パスが効くのか、ガゼットは関係者用の入り口へと堂々と入っていく。
「ホテル代浮かすためにここを根城にしてたのかな? 大病院が闇医者を雇ってるなんて、なるほど、いいこと考えた」
正面玄関へと回り、受付へと
「なぁ、ガゼットって医者に会いたいんだけど。酒飲み友達なんだ」
「申し訳ありませんが、そのような医師は当院には……それに受付時間はすでに」
「いやいや、さっき裏のほうから入ってたの見たんだよ。……あ、ところでアンタ美人だな。どう? 今日夕食とか。ここのオススメある?」
「いや、あの……」
「え~、いいじゃん。それともここの食堂まずいの? そりゃいかんね。じゃあ俺が上手いレストランをさ」
ベラベラとナンパを吹っかけていると、当然周囲の視線が集中してくる。
普段なら上層部は気にも留めないが、ガゼットを探しているという噂はすぐに行きわたった。
特に院長室ではガゼットをかぎまわっているということで、パニックに陥っていた。
「なんなのだあの男は! くそう、まさかゴシップを書きに来た記者か? くぅ、しかし、こんな時間にまさか……」
「ご心配には及びませんよ院長」
「が、ガゼット先生……」
「その人物ですが、おそらくは私の知り合いです。彼と話をつけましょう」
「し、しかし!!」
「ご安心ください。明日の手術はかならず遂行します。……お望み通り、タダのような値段でね」
「う、うむ」
ガゼットは院長室を出たあと、受付のほうまで歩いていった。
警備員が来てややこしいことになっているが、彼が姿を現し場を収める。
「こういうのは大変迷惑なので、やめていただきたいですね」
「悪い悪い」
「しかし奇妙な話だ。さっき出会ったばかりのアナタにこうも追い回されるとは……」
「男のケツを追う趣味はなかったんだが、アンタは特別だ」
「なにか聞きたいことでも?」
「凄腕なんだって?」
「ご依頼ですか?」
「そうじゃない。アンタがなんでこの街に来たのかなって」
「仕事ですよ。仕事をしながら、旅をしているんです。それに……」
ガゼットはフッと笑う。
「実際に見てみたかったんですよ。この街が、あのシェイムという男にどれほど滅茶苦茶にされたかをね」
「ハハ、さすがに知ってたか。稼ぎどきを逃したな」
「えぇ、どうやら誰かさんたちのお陰で終息していたようなので……」
しばらくの沈黙ののち、ゲオルは再度切り出す。
「アンタ、なんで闇医者なんてやってんの? いっそのこと病院勤めしたほうがいいんでない?」
「別に。こっちのほうが気が楽ですから」
「気が楽なのはいいが、大金吹っかけるのはどうなのよ」
「アンタは自分の腕に大金をかけないんですか?」
「さぁねえ」
「ならきっと、私とアナタは対極の関係にある。アナタは命が危ぶまれる現場でもきっと安値で走り回るのでしょう。私は違う。私はその場に見合った請求をする」
「ほう、ますます興味が湧いたな。どうだい? これから一杯」
「……いいでしょう。私もアナタに興味を持ちました」
それから大病院から離れたバーにふたりは赴いた。
客の入りは少なく、カウンターに座れば酒の風味と室内の空気が鼻腔をくすぐる。
オレンジに落としたランプが暗闇をほのかに照らすその下で、ふたりは酒をかわした。




