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これからの俺たちに乾杯



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「責任とってください」


「ないね、責任」


「アナタのせいです」


「証拠がないなぁ」


「逃げるんですか?」


「意味がわからないなぁ」


「そうやってすぐはぐらかす。変わりませんね」


「真っ当に答えてるんだけどなぁ。……なぁ、酒まだか?」


「なんのことでしょう?」


「最初の1杯は奢りだろ?」


「知りません」


 紅潮した顔を背けながらゲオルの隣に座っていた。


「ハァ、おしぼりで顔拭きにここへ来たんじゃないんだぞ俺は」


「……わかっていますよ。アナタはお客様、私は従業員。昔みたいにはいつまでもできない……」


「そんな深刻に考えんなよ。いい動きだったさ。ブランク本当にあんのかお前?」


「ふふ、さぁ、どうでしょ?」


 そう言うとウェイターにオーダーする。

 さっきまでのあれは羞恥心もあったのだろうが、懐かしさからくる複雑な感情だったのかもしれない。


「約束通り、最初の1杯は私の奢りです」


「ありがとよ。お前と酒が呑める日が来るなんて思ってもみなかったな」


「お酒は堕落に誘う悪魔の水。そんなことを言ってた時期もありましたね。ホント、馬鹿みたい」


 酒が届きグラスに並々と注ぐさまは惚れ惚れするほどの所作だ。


「……美味い」


「そうやって美味しそうに飲んでるのを見るのも久しぶりですね」


「そう、戦いのあとの1杯はいつもこうだった。たとえばあんときなんて……」


 その後も咲かせる思い出話は屋上のときと比べれば格段に明るかった。

 久々に楽しい酒の席だ。


「すみませんお客様。あと、ティアリカさん」


「あら、なんでしょう」


「その、支配人がお呼びです。支配人室までご案内いたしますので、どうぞこちらへ」


 ウェイターにつれられ、ふたりは店の奥へと続く廊下を歩く。

 まるで古城のような重々しい雰囲気が緊張を誘った。


 ドアを開くと執務机に支配人がいた。


「やぁティアリカ。そしてお客様、ご足労いただきましてありがとうございます」

 

 スーツを来た、見た目若そうな痩躯の男がにこやかにソファーを勧めた。


「よっこらせっと。ふぅ、どうですお客様。楽しんでいただけていますか?」


「あぁ、お陰様でいい酒が呑めてるよ」


「それはよかった。……さて、実はおふたりに話がありましてね」


「……もしかして、さっきの戦闘のことでしょうか?」


「さすがはティアリカ君」


 彼は分厚い眼鏡をカチャリと直す。


「いやぁ驚きだよ。まさかティアリカ君にあんな力があっただなんて……」


「あの、その……」


「どんな職種であれ、働く者にはそれなりの過去があったりする。だが、あれほどの魔力量は……ははは、恐れ入ったよ」


 支配人の言葉に震えるティアリカ。

 力のことをこれまでずっと隠していたのだろう。


 バレてしまってどうなってしまうやら。

 その恐れゆえか彼女はゲオルの袖をつまんでいる。


「なぁアンタ。ティアリカをどうする気だ?」


「ふぅむ」


「すんげー力持ってたら、コイツはもうお払い箱か?」


「ふふ、どうやらふたりは知り合いのようだね。あの動きからして、かなり熟達した連携プレーだ……なぁティアリカ君」


「は、はい」


「……────戦うバニーガールってどう思うかね?」


「え? 質問の意味が」


「月夜に舞い降り、華麗に悪を倒すバニーガール。どうだと思うかね? 非常に、インパクトがあると思わないかね!?」


「え? ……あの支配人!?」


「ウチはお酒のほかに君らガールやカジノを売りにしているが、やはりどこかインパクトに欠けているッ!!」


「なにが一体どうなってんだ……」


 曰く、ティアリカをこのキャバレー・ミランダのイメージキャラクターにしたいのだとか。


「お~なるほど。酒の聖女ってのも悪くないんじゃねぇの?」


「ちょっとゲオル!」


「酒の聖女……そのアイデア採用!! あとはそうだな……決め台詞なんてのもあるといいな」


「あの支配人? 勝手に決めないでいただけますか?」


「いーじゃねぇか、なんか楽しくなってきた」


「そうだろう! よ~し、決め台詞は……『月に代わって、お────」


 ゲオルは全身全霊でそれを阻止した。

 それ以上はいけない、という超次元的な本能が警鐘を鳴らしたから。


「……いいと思ったのだがね」


「まぁいいじゃねぇか。なぁおいティアリカ」


「もうなにがなんだか……」


「お前にここにいてほしいってことだよ」


「その割には変な属性ついていってませんか私?」


「人生の醍醐味ってやつなんだろ、多分」


「あ~、ときにお客人。え~っと」


「ゲオルだ。ゲオル・リヒター。今日からこの街に住むことにしてね」


「ほう」


「職業はなんでも屋っぽいの。荒事は大の得意だ」


「それはまた、だがそういった仕事は軌道に乗りにくいぞ? ……どうだね? それまでこのキャバレー・ミランダで働いてみるというのは?」


「バーテンか? それともウェイターでも?」


「いやいや、用心棒さ。客によってガンの悪いのもいる。今は黒服たちだけでローテを組んだりしているが、やはり心配な部分もある。君の腕も信頼しているよ。あの戦い、実に見事だった!」


「……まかない、つくか?」


「いいだろう。詳しいことはまた明日話そう」


「へへへ、今日はいい日だねまったく」


「……お客様。貴重なお時間をいただきまして、誠にありがとうございました。引き続き当店のサービスをお楽しみください」


 支配人は立ち上がり一礼。

 部屋から出て、再び席に戻る。


 支配人からの餞別(せんべつ)として、少し高めの酒と料理を出してもらえた。


「俺あの支配人好きだわ」


「あんなに嬉しそうな支配人久しぶりです。……ホントに今日は嬉しいことばかりです」


「乾杯しようぜ」


「……いいんですか?」


「別に飲んでいいんだろ?」


「はい、では……」


「ふたりの再会とこれからに」


 緩やかに過ぎていく時間の中で、ふたりは祝福を明るく祈る。


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