探偵ウォン・ルーと拳法対決
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あの少年に殺意を抱く人間とは?
被害者を探っても貧乏人や身寄りのない者だったりで、とてもではないが念密な殺しができるとは思えない。
その他の線を洗うべく調査をしていたところだった。
「おい! おいったら! 聞こえてんのか!」
「あん?」
男の声だ。
やけに荒っぽく、そのわりにまだ少年っぽさすら感じる。
「お前だな! 俺の街で『何でも屋っぽいの』なんてふざけたことやってる男ってのは!」
「やる気溢れるアットホームな仕事になんてこと言いやがる……おたくは?」
「ふん、オレはこの街で長く探偵をやってるウォン・ルーってモンだ! やいお前! 先輩に挨拶もなしに勝手に看板かかげて商売ようなんざ、ずいぶん生意気なことをしてくれるじゃないか、ええ!?」
「先輩って……まぁ広義的に見れば? でもアンタは探偵だろ? 俺は……」
「うるせぇ! 探偵だけで食っていけるほど甘くはないんだッ! 飲食店のバイトに屋根裏修理のバイト、その他もろもろかけ持ってんだ! ……それなのに、お前が来てからバイトが激減だ! あの雨続きの数日なんか仕事なさ過ぎて散々だったぞコノヤロウ!」
「そりゃご愁傷さまだな。運がなかったんだよ。それで? 俺は今仕事で忙しいの」
「仕事? おい、その仕事、報酬はたんまり出るのか?」
「さぁねえ……相手の気分次第だからねえ。貰えても昼飯夕飯で消えるだろうな~」
「オレに嘘をつこうってのか? オレはこういうのに鼻が利くんだ」
したり顔で近づいてきて仁王立ち。
ゲオルよりかは小さいが鍛錬を続けてきた者の風格がそこにあった。
「お前の顔を見ればわかるぜ? でっかいヤマ、ガッポリ報酬、だが難航してるそうだろ?」
「はぁ、さすがは大先輩……」
なるほど、ユリアスが言っていた"アイツ"とは彼のことなのかもしれない。
「いよっし! この大先輩のオレが手伝ってやる。その分け前でこれまでの無礼を許してやる!」
「は? 分け前?」
「安心しろ。全部奪っちまうってほど、このウォン・ルー様も鬼じゃない。そうだな。6:4でい。オレが6だ。かなり良心的だろ?」
「はぁ!? テメェふざけてんのか!? これは俺のお得意様の依頼なんだ。先輩かなにか知らねぇが勝手に首突っ込まないでくれねぇか!」
「な、なにをぉ~~ッ!?」
一気に顔を赤くして、これまで抑え込んでいた闘気をこれみよがしにゲオルに放った。
「オレの仕事を奪いまくった挙句手柄も奪いまくるってのか!」
「それはアンタの営業努力不足なんじゃあないですかねえ大先輩!?」
「言いやがったなッ! もういい、どうやら一度痛い目に合わないとわからねぇみたいだな……ッ」
ウォン・ルーの構えは思った以上に腰を低く。
両の掌を前にして指を曲げて構える様は、獰猛なる虎が獲物を狙うが如く。
「やれやれ、アンタもそういうクチね」
「……お前もか」
野次馬が集まってくる。
ウォン・ルーを知る人間は多いようで、彼の喧嘩を賭けの対象にする者も少なくない。
「おい、相手って……」
「あぁ、『何でも屋っぽいの』のゲオル・リヒターだ。アイツも腕が立つ」
「へぇ~、どっちが勝つかねぇ」
一瞬逃げようかとも思ったが、彼のしたり顔を思い出してしまい、それが癪に障ってしまった。
「喧嘩か、腹ごなしの運動にはいいかもしれないな」
「飯まで食ってやがったのか……オレは今日まだなにも食ってないってのによぉ! でりゃああ!!」
飛びかかるウォン・ルーに、フェンシングのような素早さで右拳と右サイドキックを連撃。
それらすべて打ち下ろし、蹴りを繰り出して、足を素早く降ろしながら踏み出し、裏拳をゲオルに打ち下ろしてきた。
「くっそ、なんて重い一撃しやがるッ!」
「なるほど、コップに注げばコップの形に、花瓶に注げば花瓶の形に……流水みてぇな武術だ。ならオレのは、────荒ぶる虎の勢いだッ!!」
再び構え引っ掻くように連掌底を繰り出してくる。
ゲオルは素早い連打で応じた。
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッ!!
時折肘や前腕をぶつけながらの応酬による衝撃音と余波で、野次馬は圧倒される。
ビリビリと心を震わせ、ふたりの戦闘に手に汗握り見守っていた。
互いに連打をし合いつつ、足を前に踏み込み、蹴り合い、腰を使ってバランスを崩そうとする。
「いい加減懲りてくれないかねえ!」
「オレにも分け前!」
「うるせえ!!」
双推手めいた押し合いから、お互い勢いよくすっ飛ばし間合いをあける。
そしてすぐさま距離を詰め、肘、裏拳、掌底、指、足底、足刀、膝、肉体のあらゆる部位を用いて強靭な体術を繰り出していった。
「ちくしょう、商売敵の分際でよくもオレをここまで手こずらせやがったな……」
「そろそろ衛兵が来るころ合いだぜ?」
「……」
その言葉にニヤリとし、ウォン・ルーはコマのように回転して横移動。
勢いを駆使して、地面に転がっていたイスを次々と蹴り飛ばしてくる。
「あ~そういうことしちゃう」
ゲオルは地面に落ちていた長い棒を棍代わりに振り回しすべてを払いのけた。
今度は武器術合戦、ウォン・ルーは長イスを持って襲いかかる。
「武器のチョイスおかしいんだよテメェ!」
「いついかなるときでも戦えるように心構えし、どんなものでも武器として使えるよう鍛錬する……お前知らないのかぁ~?」
ウフンと女めいた動作で座りながら挑発するウォン・ルーに、すかさず棒を叩き込む。
「うぉっと!!」
長イスの下に潜り込んで攻撃を躱す。
起き上がりざまにイスを背負うようにして横回転し、ゲオルの棒を弾いていった。
「さぁ勝負はこれからだ!」
「望むところだバカヤロウ!!」
だが警笛が近くなり、野次馬も散り散りになって逃げていく様を見るや、ふたりも武器を放ってダカダカと逃げ出した。
「ふぅ、ここまで来れば大丈夫だろ……」
「おい、ゼェ、ゼェ、……さっきの勝負オレの勝ちだからな?」
「せめて引き分けとか勝負はおあずけとか言えないもんかね?」
「あのままいけばオレが勝ってた! 武術である以上拳だけで決まるわけがない。武器を用いた技巧も────」
「あーはいはい、そういう暑っ苦しいのはごめんこうむる。……あーあ、せっかく情報収集してたのに、ここどこだよ?」
「なんだ、ここは初めてか?」
「……そうだな。この街全部は把握してない」
「ふん、まだまだだな。オレはとっくの昔に把握済みだぁ」
「自信満々に言うことでも……いや、あるな」
「いいだろう。勝負はおあずけってとにしといてやる。オレはこっち、お前が向かう先はあっち」
「そっちにはなにがあるんだ?」
「オレの事務所だ。……なんだ興味があるのか?」
「いいや、これ以上寄り道はごめんでね」
「ふん、最初から上がらせてやるつもりなんかねぇやい」
「だったら聞くなよ」
奇妙な出会いから解放され、入り組んだ路を進んでいくと、普段見る日常的な表通りへと繋がった。
見慣れた景色に安堵を覚えつつ、ゲオルは再び調査を続ける。
次話は昼か夕方くらいを予定いたします。
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