私がお巡りさんに追いかけられた話
みなさま、ごきげんよう。
ここだけの話ですが、私、お巡りさんに追いかけられたことが過去に何度かあります。
お見苦しいところをお見せすることになりますし、読まれる方によっては義憤にかられたりするかもしれませんが、すべて私が大学生の頃の話ですので、若気の至りという便利なことばでお許し下さい。
1つ目は軽く。
田舎の国道を250ccのバイクで走っていました。
前のほうがやたら混んでいる。大行列を作ってノロノロになっている。
こんな信号も少ないところでなんだこれ? と思って、道幅も広かったので私は左からすり抜けて前へ行きました。
先頭を白バイさんが走っていました。
制限速度マイナス15km/hを保って、車道の左側を。
黒いサングラスをかけた、40台ぐらいの、偉そうな顔つきのおじさんでした。
みんな迷惑してるよ〜、せめて制限速度で走ろうよ〜、と私はその背中に無言で語りかけましたが、『俺が交通を支配しているんだ!』みたいに背筋を後ろに湾曲させて、ペースを変えません。
これ……
追い越しちゃってもいいよね?
私はそう考えました。お巡りさんの右横は大きく空いていたので、センターラインを越えなくても追い越しできる。制限速度で追い越してしまえば、何も悪いことしてないんだから、文句言われる筋合いないんじゃね? と。
ゆっくりスロットルを開けて、お巡りさんの右隣へ近づいて行きました。
ドキドキする表情をフルフェイスヘルメットとスモークシールドで隠し、お巡りさんに並びました。
お巡りさんがプライドを傷つけられたような顔で『あっ』と口を動かしましたが、私何も悪いことしてませんよ、と心で言い伝えて、そのまま追い越して前に出ました。
ウ〜ッ! ウウウウーーッ!
赤いランプが回り、けたたましいサイレンを鳴らして白バイが追いかけて来ました。
なんで?
私、なんにも悪いことしてないのに!
そう思いながらも、止まれと言われるからには止まりました。
何も悪いことしてないので切符は切られませんでしたが、口頭での注意を結構な長時間に渡ってされました。
「何考えてんの!? 白バイ追い越しちゃダメでしょう!? 名前、住所、電話番号! ここに書きなさい」
えー……。
拒否しちゃいかんの? これ…。
私が絞られてる間に大行列だった車さん達はスイスイ流れて行きました。
この話はこれでおしまい。
3つお話するつもりでしたけど、いっぱい話すと長くなるからもう1つだけにします。
原付で50km/hオーバーして一発免停食らった話もあるんですが、さすがに叩かれそうなので、やめておきます。
2つ目はハードに。
海を見に行った帰り、私は町へ向かう田舎の県道を走っていました。250ccのオフロードバイク。DOHC単気筒エンジンを軽い車体に積んだ愛車は加速に自信アリ。大きなタイヤにボトムの深いサスペンションでどこでも走れます。私が所有した中でも一番値段も高く、性能もいいやつでした。
まっすぐの道を制限速度程度で走っていたところ、後ろから黒いセダンがやたらと車間距離を詰めて来ました。
私が遅いのかな? と思って左端に寄り、抜きやすくしてあげようと微減速するも、さらにビッタリ後ろにくっついて来ます。
バイクをいじめる四輪というのはたまにいるもので、そういうのをかわそうとしたら幅寄せされて、ドブに落ちたライダーさんの話とかを何かで読んだことがありました。
怖くなり、そんなに広くもない道路がまっすぐ続いていて逃げ場もないので、また、ムカついて来たこともあり、私は心で叫びました。
なめんなよコイツ……
ぶっちぎったる!!!
スロットルをなめらかに、しかし急速に開けました。
DOHCエンジンがビヤー!とモーターみたいな音を上げ、ぐんぐん加速を始めます。
乗用車もスピードを上げ、追いかけて来ます。ビタ付けして来たので、私はさらにスピードを上げて逃げました。
すると黒いセダンの天井の上に、パトランプ出ました。
それが赤く回転を始め、けたたましいサイレン音が響き渡り、お巡りさんのマイクで喋る声が聞こえました。
「前のバーイク、止まりなっさーい」
……まじか
卑怯だ、卑怯すぎる
止まってたまっかよ!!!
すぐに止まっていたら、もしかしたら注意だけで済んでいた?かもしれません。
でもその時の私はひたすら「ふざけるなー」としか考えられず、「怖かったんだぞー!」と泣き叫ぶように、さらにスピードを上げて、逃げました。
DOHCエンジンがウギャアー!!!と吠えました。
乗用車の列をゴボウ抜きすればついて来られないだろう! と映画『氷の微笑』の女主人公のごとき蛇行で自由に前へ出るも、みなさんさすがパトカーに協力的でした。あっという間に乗用車に退いてもらい、黒い覆面パトカーは私を追って来ます。
赤信号は歩道をショートカットしてコーナリングでかわし、止まることなくビャンビャン走り続けました(今思うと歩行者さんいなくてよかった…)が、サイレンの音は遠くなりません。逃げおおせてもどうせナンバーとっくに控えられてるだろうなんてことは考えもせず、確か19の時だった、私は必死で逃げ切ることしか考えていませんでした。
うそ……
うそ……!
自慢の愛車で振り切れないなんて!
なんてドラテクなの!
パトカー嫌い!!!
田んぼのあぜ道を爆走してもアスファルトをずっとゆっくり並走してついて来ます。「おーい」「いいから止まれ」と宥める声を私にかけながら。
あぜ道の出口で待ち構えられ、遂に私はお縄となりました。
ヘルメットを取るなり、私は泣いて抗議しました。
「怖かったんだから! 殺されると思ったんですよ!?」
その抗議が通じたのか、25km/hオーバーの青切符で許してもらえました。
信号無視は取り沙汰されず、歩道を爆走したことも、たぶん瞬間的に60km/hは速度オーバーしていたことも、許されてしまいました。
今はお巡りさんに追いかけられることもなくなり、安全運転をしています。
お巡りさんにも気遣ってあげて、でも片側複数車線の道で流れに乗って追い越せる時は遠慮なく追い越させていただいています。
今でもパトカーとか覆面パトとか白バイとかは大嫌いですが、関わることなく運転することが出来るようになりました。
何が言いたいかというと……みなさん、あの時の私みたいな暴走バイクにはご注意を。