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銃弾創造だけの役立たず (異世界)

作者: セロリア

魔法学校、ミリタリア学園。

男女共学。

小学校。


主人公の一人、男の子、7歳。

名前は、クランツ。

黒髪で東洋人の顔立ち。

昔々、遥か昔、異世界から来た渡り人が祖先らしい。

3歳の時、協会から言い渡された力は。

無から銃弾を作り出せる。


クランツの力はそれだけだ。


しかも一発ずつ、凄く時間が掛かる。

当初は一発5時間。

今は一発10分。


効果は普通の銃弾で、何の効果も無い。

普通に買った方が早い話。


そんなクランツは銃を開発して、資産家として有名な家、の忌み子であった。


奴隷が産んだ子供である。


無理矢理当主からレイプされ、奴隷である身分、抵抗出来る筈は無い。


母は耳、鼻を奥様方から削ぎ落とされ、馬小屋に監禁されながら、クランツを産んだ。


奴隷法に違反しているとして、家が国から家宅捜査を受け、使用人供に、大量逮捕された。


母は手遅れであった。


その際、騎士団のやり手と言われる女騎士に拾われ、今まで育てて貰ったのだ。


だが、何の才能も発現せず、本当に申し訳なかった。


クランツは最低ランクのFの下、Gランクの教室で一人で過ごして2ヶ月が来ようとしていた。


クランツはせめてと、魔物の生態系、弱点、食べられる草、実、飲み水として使える植物、火打石に使える鉱石、様々なサバイバル術、それらを修めた頂点、生存の教科書一級という国家資格を受けるつもりで勉強に日々取り組んでいた。


最難関とまではいかないという世間の認識だが、意外に甘くない狭き門であり、魔力や、実力が無い者らにとっては、冒険者達と供に冒険出来る唯一の手段である。


だが、一級しかパーティーには誘われず、また、誘ってはいけないという暗黙のルールがある。


戦えない者を連れて行くのだ、当然である。


しかし、クランツはギルド職員になり、様々な情報で冒険者を助けたいと思っていた。


やる気がない先生が珍しく離れボロ教室にやって来た。


男教師「あー、転入してきた奴だ、仲良くなー、んじゃ」


おかっぱの金髪、前髪で見えないが多分蒼い瞳。


深いフードコート、目が死んでいる。


静まりかえる教室。


クランツ「あ、ぼ、僕はクランツ、よ、宜しく」


名前も言わず、完璧無視し、離れた席に座る。


男の子か女の子かさえ解らない、しかし、美形だ。


クランツは仕方なく、いつもの日課をこなす。


午前中は勉強、午後からは弾作りを最速化特訓。


自分に出来る事を極める。


クランツはめげない。


死んだお母さんの台詞。


あなたはお母さんの生きた証しよ。


という言葉。


今のお母さんの台詞。


甘えんな、お前が役に立つか立たないか、敵にはどうでも良い事なんだ、お前が例え高位の魔術師でも、死ぬ時は死ぬ、忘れるな、死は万人に共通する結末だ、死にたくないなら、生きたいなら、自分の武器を作れ、磨け、メンテナンスを怠るな!


クランツは自分に出来る事を伸ばす、これだけをやって来ただけだ。


そんな姿を1ヶ月程見ていた転入生。


ある日の朝。


転入生「・・おはよう」


クランツ「!?う、うん!おはよう!」


少しずつ、少しずつ、会話が増えていった。


転入生は女の子だった。


名前はアビー。


しかし、本当の名前はリヤンというらしい。


何故名前が二つあるかなんて、この貴族社会では聞くだけ野暮だ。


クランツはアビーと呼んだ。


アビーのギフトは運動神経は勿論だが、ずば抜けた動体視力だった。


集中したアビーは全てがスローモーションの世界に見えるらしい。


アビーは最初は戸惑いがあったが、クランツの事を知っていく内に、だんだん打ち解け、二人は次第に心から友人になっていった。


しかし、女性の方が思春期は早い。


次々と落ちこぼれがGクラスにやって来る中、12歳を過ぎた辺りからアビーはクランツと少し距離を起き始めた。


クランツは不思議がるだけだ。


月1の普通の生徒達との合同実習。


同じ教室の子供達がやられて行く中、アビーだけが、異彩を放つ。


短剣を扱い、魔法を避けながら倒していく姿が、優秀な教師の目に止まり、魔力が籠った短剣、即ち、超高級な短剣ならば、アビーの力が解放される、そう分析され、アビーは、Gクラスを去り、一気にSクラスへ。


面白くない他クラス。


しかし、アビーの実力は本物だった。


全てが遅い世界に居る彼女を捉えられる者は、Sクラスの中でもたった一人。


Sクラス実力ナンバー1、長刀の使い手、男性、鉄壁の風と水の加護を持ち、基本は、攻撃に風、防御に水を使い、本気になれば、二つ同時に防御、攻撃を可能にする数分間が存在するらしい。


性格も良い。


優しくて、気遣いも出来る、家柄も高い、長男。


名前は、スレンツ・ミガ・ランドヘルム。


しかし、アビーはなびかない。


スレンツは普通に照れながらアビーに話しかけるが、アビーは照れる様子は無い、普通に話し、そそくさ立ち去ろうとする。


その日々が過ぎ、月1の合同実習の日。


いつもよりアビーがおめかし。


皆疑問。


しかし、その答えは直ぐに知る。


クランツと話すアビーの様子。


乙女だ。


後ろに手を組み、胸を強調しながら、モジモジしている。


明らかに明らかだ。


アビーはクランツが好きなんだと、皆が理解出来る。


しかし、当の本人、クランツは気づいていない様子。


笛が鳴る。


アビーはクランツから離れ、集合する。


スレンツはアビーに質問した。


スレンツ「良い奴そうだな、あいつと友達なのか?」


アビー「うん・・残念ながら、まだ友達」


はかなく笑う、その切ない笑顔に、スレンツは全てを悟った。


そして。


産まれて始めて味わう屈辱。


人は、同じ痛みを知った後で、ようやく話合いが出来る。


クランツは屈辱、苦痛を味わった。


それでも。


めげない、諦めない、心の強さを証明してきた。


スレンツは今回が初めてであった。


心の強さを試されるのは。


スレンツ「(なんだ?何だよ!この感情は!)」


自負していた。


良い奴だと。


誇り高く、強い。


優しくて、頭も良い。


顔立ちだって。


背丈だって。


なのに。


それなのにー。


スレンツは初めて味わう劣等感にわなわな拳を震わせた。


スレンツは初めて、己の中の闇に触れた。


魔法使いにとって。


心の暗黒面に囚われる事を、魔道に墜ちるという。


魔道に墜ちた魔法使いは最終的には魔物になってしまうという。


そして、それは、純粋で、優秀な者程に。


心が弱い。


合同実習が終わり、また日々の暮らしに戻った皆。


そういうジレンマな時間が過ぎに過ぎた。


卒業まで残り半年。


クランツは相変わらずGクラス。


アビーは訓練では短剣を使用していたが、Sクラスは週に二回森に入り、実戦授業が行われる。


そこで持つ事が許されるアビーの武器、手銃剣。


オートマチックハンドガンに魔剣が溶接されたモノ。


魔剣には穴があり、魔石を嵌め込む事で、その種類の付与効果をエンチャントが出来る。


銃弾には付与は不可能。


かなり実戦的な武器である。


その任務の最中、アビーがピンチになり、スレンツが助けた。


しかし、アビーが素っ気ない感じを出した為、スレンツが無理矢理キス。


アビーは抵抗するが、大柄な男性の力の前になす術がない。


仕方なく、アビーは刺そうとしたが、水の加護により、止められた。


舌を入れられ、弄ばれる。


アビーはスレンツの舌を噛み、痛がるスレンツの股間を蹴り、うずくまるスレンツの顔を前蹴り。


アビーは泣きながら、途中リタイヤした。


2日後。


学園に帰ったアビーは、校長に直談判。


スレンツは謹慎処分の上、降格。


アビーは暫く休養となった。


アビーは急いで身支度をし、部屋を出た。




一方クランツは畑整備の任務に就いていた。


そこで一緒の任務に就いていた田舎出身の娘、ゴランダというゴリラみたいな娘と仲良く話すクランツ。


アビーはそれをじっと隠れて見ていた。


ゴランダはクランツが好きなようだ。


しかし、相変わらずに鈍いクランツ。


アビーは安心した。


瞬間、ゴランダは振り向いたクランツにキス。


驚き離れようとしたクランツ。


抱きつき、離れないゴランダ。


アビーは一気に沸点に達し、持ってきた練習用短剣に手を伸ばしながら走る。


クランツはゴランダの指を握り、捻り、合気道の動き

で、ゴランダの片足を軸に利用し、投げた。


走って来たアビーの頭とゴランダの頭が激突。


アビー、ゴランダ、失神。


クランツ「!?あ!アビー!?」


アビー「きゅー」


ゴランダ「あばばばば」




アビー「うーん、は!」


勢い良く起きた。


誰も居ない。


良く良く見ると、どうやらクランツの部屋だ。


何回か訪れていたから解る。


クランツが冷や水とタオルを持って現れた。


クランツ「あ!ゴメンねアビー、大丈夫?痛くない?でもどうしたの、びっくりしたよ突然現れー


アビーはクランツに抱きついた。


クランツと供にベッドに倒れる。


クランツ「ふえ!?」


アビー「私、無理矢理キスされたの、クランツと一緒」


クランツ「!?だ!誰だ!んな事!許さない!誰!?」


アビー「ふふ、もうぶっ倒した」


クランツ「そ、そうか」


アビー「私も、クランツが無理矢理キスされたところ見て、頭に血が登ってしまった」


クランツ「あ、それって」


アビー「私、誰にでも抱きつく訳じゃない」


クランツ「・・うん」


アビー「好き」


クランツ「・・うん」


アビー「私、実戦があるの、死ぬかもしれないんだよ?」


クランツ「・・うん」


アビー「好きな人と結ばれてから死にたいって、強く思って・・そしたら、気づいたら、こっちに来てた」


クランツ「うん、解った、もう良い」


アビー「クランツに会いたいってんむ!?」


雨が降る。


扉の前から走るゴランダ。


雨が降る。




恋人になったら、ギルドに提出しなくてはならない。


手を繋ぎ、恋人になりましたと報告に行く二人。


ギルド職員達はスルー。


淡々と判子を押す。


皆アビーがクランツに恋している事、スレンツがアビーを好いている事は有名であった為である。


恋愛経験で、強さ、魔力に変化が起こる事は知られているが、この二人は例外的に普通枠から外れた。


クランツ、一瞬にして弾丸を24発作成可能に。


アビー、動きにしなやかさが加わり、芸術性が増し増しになり、エロチックに、ミリ単位で体を正確に動かせるように。


そして、初めてクランツが作成した銃弾を銃に入れ、打つ。


驚くべき事が発生。


クランツの銃弾の効果が初めて発現。


その効果とは、あらゆる魔法、事象の破壊。


魔法陣は空中に普通現れるが、それを壊す事が出来る。


それどころか、人に撃ち込めば魔力回路を破壊し、二度と魔法を使えない体にしてしまう、魔術殺しの弾丸だった。


事象の破壊とは、魔法現象ではなく、科学現象により生じた霧、レーザー、毒ガス、それらを消す効果を発現出来る現象。


つまり、無敵の弾丸である。


効果が付与された短剣が超高級品なのだ。


この弾丸がいくらの価値があるのか想像に固くない。


直ぐにこの結果は国家機密扱いとされ、国王との謁見も済ませた。


しかし、問題があった。


クランツの弾丸の効果は、何故かアビーにしか発動出来ないという点、そしてアビーの近くにクランツが居る必要がある点である。


アビーとクランツ。


この二人が組むと、最強の弾丸が撃てるという訳である。


クランツ、生存の教科書一級試験、合格。


アビーは現在組んでいるパーティーを抜ける事を発表。


他メンツは当然とし、特にスレンツは納得いかない。


アビー「私がパーティーを抜ける理由は、私が最強になったから、クランツの弾でね、サバイバルは一級資格を持ってるクランツに任せて、アイテムは収納鞄に入れれるし、二人でやっていけるから、だから、抜けるわ」


メンツ女1「ふざけんな!アビーは貴重な戦力よ!あなたが居なきゃ前衛が!」


他メンツ「そうだ!そうだ!そうだ!」


アビー「クランツをあなた達に任せられない!」


他メンツ「!!」


アビー「あなた達は私が無理矢理スレンツにキスされてるところを黙って見てた!私の中の信用はもう、ゼロよ」


メンツ女1「だって・・」


アビー「だっても糞もない!私は!クランツ意外の男に興味ない!」


スレンツ「何故だ!理由を言って欲しい!何故あの時点で君は!あの時はまだ彼の力は発現していない!何故だ!?」


アビー「彼は特別な魂を持ってるからよ」


クランツ「?」




アビー「あなた達には・・いえ、きっと私にも真似出来ない、彼の生立ちを思い浮かべてよ!腐らずに!真っ直ぐ!自分に出来る事を必死で努力して!私は!彼が愛おしい!」


クランツ「・・〈ポロポロ〉」


スレンツ「そんな、そんな理由で!?」


アビー「あなたは良いわよね?産まれてから一度も挫折、悔しさを味わった事がないんだもの、賭けても良いわ、もしあなたがクランツと同じような境遇に産まれていたら、あなたはとっくに自殺してるか、物乞いをしてるわ!だってあなたは自分の弱さに負けて私に無理矢理キスしたんだもの!クランツは絶対に自分に負けたりしない!」


戸惑うスレンツ。


戸惑い、スレンツにどうする、どうすると聞く仲間達。


涙を拭うクランツ。


アビー「私は、クランツと歩む、邪魔をしたら許さない」


アビーはクランツの手を取り、ギルドを出ていった。


それを追いかけるスレンツ。


スレンツ「待て!理由は理解した!しかし、それと君がパーティーを抜ける話はまた別だ!無理矢理キスした事は謝る!確かに私が悪かった!すまなかった!どんな事でもする!だから!考え直して欲しい!君は重要な戦力なんだ!頼む!」


他メンツも頭を下げる。


アビー「・・別の話じゃない」


スレンツ「いやしか」


アビー「はあ、意味が解らないなら、はっきり言うわ、私達二人でお金を稼ぎたいの、もっとはっきり言うわね、足手まといなの、あなた達全員ね」


スレンツ「ピク、なに?」


アビー「あら?本当の事よ」


スレンツ「・・良いだろう、そこまで言うなら、私と立ち合え!アビー、貴様に決闘を申し込む!」


アビー「良いわ、ただし、あなたのパーティー全員でかかってきなさい、それが条件よ」


野次馬、スレンツパーティー全員「!?!?!?」


スレンツ「・・い、いや、まて、君は自分が何を言ってるのか解っているのか?冒険者、それもSクラスパーティー6人をまとめて相手にすると言っているのか?」


アビー「そうよ」


スレンツ「〈ビキビキビキ〉」


アビー「ただし」


スレンツ「?」


アビー「クランツの弾を使用します、クランツの弾は当たれば魔力使いにとって猛毒よ、二度と魔法は使えない体になる、それでも良ければかかってらっしゃい?魔法を使えない体になるとはどういう意味を持つか、震えると良い」


スレンツパーティー「!?」


アビー「言っておくけど、私の銃短剣の力は理解してるわよね?鋼鉄の盾でも切り裂くわよ、加えて、魔法破壊の銃弾、事象破壊の銃弾、そっちこそ、よく解ってないんじゃないの?わ、た、し、がその二つの力を持つその意味を」


スレンツパーティー5人「た、確かに、無敵かも、アビーは身体能力と動体視力があるし、銃弾も普通に避けるし、ギフトの勘もあるし、やば、こっちが不利じゃない?やば」


スレンツ「ぐ、ぐ、ぐ、ぐう」


アビー「解ってくれた?」


背を向け、歩き出すアビー。


スレンツ「ぐぐ・・・・・・ふす!!」


スレンツが長刀を抜き、アビーの腰の前後にある銃短剣の内、後ろにある銃短剣へ横薙ぎ。


クランツ「あ!」


アビーは右肩を後ろに捻り、半分だけ銃短剣を抜き、滑らしながら少しだけジャンプ小回りながら、長刀を撃つ、前腰の銃短剣を抜く。


短刀を素早く抜くスレンツ。


二人の動きが止まった。


スレンツの長刀はクランツの弾により途中からカチンと音を立て落下。


スレンツの短刀はどうみてもアビーには届かない距離。


アビーは一方は長刀に、一方はスレンツに銃口を向けている。


銃口が冷たく光る。


スレンツ「あ・・」


アビー「魔法を使えない意味を知れ」


スレンツは目を閉じた。


パーティーメンツ女「待って駄目え!」


〈ドフオォン〉


スレンツのアンチ魔法鎧に穴が空いた。


パーティーメンツ女「え」


目を開けるスレンツ。


スレンツ「!?」


アビー「もうその鎧と刀は使えない、アンチ魔法効果もない、買い換えるのね」


スレンツはおしっこを漏らし、何度も何度も、地面を殴り、泣いた。


アビー「そうよ、それが、・・挫折よ」


アビーはクランツの手を取り、王都を出た。


国を出ない限りは好きにして良い、ただし、他国との戦争になれば、テレポート用紙にて王都に戻るように。


その王命を受けての旅立ちだった。


幼いクランツの口癖。


幼いクランツ「いつか冒険者達と一緒に冒険してさ、沢山沢山珍しい景色を見たいんだあ!」


朝霧、二頭の夫婦馬、片方の馬に二人。


馬が疲れたらもう片方に乗り換える。


ゆっくりゆっくり移動する。


広い国土が見渡せる山の中腹。


朝日が出てきた。


クランツ「この実は食べられるんだ!美味しいんだよ!食べ過ぎたらお腹が緩くなるけど」


アビー「本当だ!美味しい!んふふ」


アビーの活躍は各町で有名になり、操られたゾンビドラゴンを退治した時、生きた伝説となった。


犯人は今だ逃走中。


アビーばかり伝説となり、クランツは付き人という噂。


その噂にご機嫌が悪いアビー。


クランツ「まあまあ、僕はこの方が良いよ」


アビー「ぶー、私の活躍はクランツのお陰なのにい」


クランツ「王様は理解してるし、それに・・」


アビー「?」


クランツ「たった一人でも良いさ、僕はアビーが知ってれば」


アビー「〈キュウン〉今晩は寝かさないんだからあ!」


クランツ「うわっぷ!?」







30年後。


アビーとクランツは他国との戦争に多大な貢献をし、その後、騎士団の最高位、白衣の称号である真っ白な法衣を承り、引退。


スイスとカナダとオーストリアの良いとこ取りをしたような神々しいミンダルカの丘という高原に小さな家を建て、悠々自適に暮らしていた。


二人の子供に恵まれ、賑やかな毎日。


畑を耕し、収穫し、豚、羊、牛、鶏を殺し、肉、骨、皮、毛皮、全てを頂く生活。


どうして殺すの?と泣く子供達に、生き物の命を頂く事、感謝をする事を教えていく夫婦。







ミンダルカの丘の麓の巨大な町、ミンダルカ。


そこは飲める水路が至る所に流れ、その水を飲むのが不安なら、沈殿方式の浄水場を通したパイプから流れる上水道が町の至る場所で無料、大量に使える。


その町に、絶大な権力である、宗教、ニムニストという宗教の支部があったのだが、先日、その支部長が亡くなった為、本日、後任がやって来た。


ニムニスト宗教の部下達がギルドに許可を取らず、勝手に中央広場に木組みをし、高い台を設置。


支部長「我輩が、神の代理人、サザムントである、今日からこの町はニムニスト教の為に税金を増税される事と相成った、皆さん、これも全て神への奉仕活動の為、謹んでこれを受け入れますよう」


ギルド長「どれほど上がるのでしょうか?」


支部長「ふむ、まだ正式に決まってはおりませぬが、まあ、今の50倍は払って頂きませんと」


ギルド長、皆「ご!?ふ、ふざけんなあ!!そうだ!あんまりだあ!んなに払えっかよお!?馬鹿かてめえ!!」



支部長は空に巨大な火球を作り出した。


支部長「お黙りなさい!下民共があ!!優しくしていれば付け上がりやがって!我らは産まれついてのSランク!!言わば神に選ばれし者なり!!あなた方は黙って払えば良いのです!」


赤い悪魔のような太陽の熱がジリジリと民衆を脅迫する。


支部長「それに、落ち着いてください、何も今すぐ50倍とは言っていません、徐々に景気が良くなるに連れ、上げていく、そう言っているのです、それに50倍とは町全体での話、個人の話ではありません、ハッハッハ」


支部長の部下達「ハッハッハ」


しかし・・。


悪ガキ「うるせえ!このデブ!豚!少しは自分で鍬持って畑耕せえ!」


支部長「・・ああ・・悲しいですね、神に仇成す不届き者め、家族も同罪です、丁度良いです、死刑にしましょう、壇上に連れて来なさい」


支部長部下達「は!」


悪ガキ「うるせえ!てめえなんか偶然Sランクに産まれただけだろうが!神に許されないのはお前の方だばあか!ミンダルカ舐めんじゃねえ!この町には国王よりも凄い人が居るんだぞ!てめえなんかお呼びじゃねえんだよボケえ!」


支部長「・・?はあ?何を訳が解らん戯れ言を・・早く連れて来い、まずはその口、焼いてふさいでくれよう」


ギルド長「その子の言っている事は本当です、止めといた方が・・」


おばさん1「そうよ!誰に唆されたか知らないけどさ」


おばさん2「アビー様は怖いからねー」


支部長「?アビー?どこかで聞いたような・・?」


支部長部下1「支部長!アビーとはもしや、白衣のアビーでは!?」


支部長「な!?何を馬鹿な!?あやつは何処かで野垂れ死んだという噂ではないか!」


悪ガキ「は!笑うぜ!見ろこの頭のたんこぶ!あの足癖悪いおばさんに踵落とし食らったんだよ!一昨日な!因みにパンツは青だった!」


支部長「ああ!?まだそんな戯れ言を!そんな人物が居るなら最初に私の耳にー・・まさか」







一年前。


ニムニスト教、本山、ニムルニストロール宮殿。


サザムント「ほう?そのような素晴らしい土地が?」


ヨルダ「ええ、それはそれは美しく、麗しい、綺麗で飲める水が使いたい放題、美人も多いと聞きますわ」


サザムント「ほう?ほう?それは是非に行きたいものですなあ!はっはっは!」


ヨルダ「ニーチェ様は是非後任は貴方にと」


サザムント「なんと!まことですかな!?」


ヨルダ「ええ」


サザムント「うっひょ、ははごほん、いやいや、まだまだ後任には早いお話、まあ、気長に待つと致しますよ、それでは」


去った。






ヨルダ「はい、しかと」


ニーチェ「うむ、良い」


ヨルダ「しかし、あの悪党を何故そんな天国へ?」


ニーチェ「天国が何故天国たるや、それを?」


ヨルダ「?・・良い環境だからでは?」


ニーチェ「人は人なのだ、ヨルダよ、天国の環境が天国のまま続く為には、守護が必要なのだ」


ヨルダ「しかし、我ら以外にあのサザムントを成敗出来る人材等・・ハ、魔物ですか?」


ニーチェ「いや?人さ」


ヨルダ「人?しかし・・そんな人材は」


ニーチェ「ははは、知らぬも無理はない、もう35年前の伝説なのだからな」


ヨルダ「あ!待ってください!確か聞いた事があります!いえ、見た事がありまする、絵本、・・まさか?」


ニーチェ「その本を流通させたのは我が父上だ、最も、本人達は廃止を願っていたらしいがなくくく」


ヨルダ「生きているのですね?」


ニーチェ「ああ、殺しても死なんよ、あのおばさんは」











現在。


アビー「なんだい?下の風がおかしいと思って来て見れば」


悪ガキ「〈ぱああ〉ババア!!〈ドン!〉イッイイイッイイいいい~~ってえええああああ〈ゴロゴロゴロゴロ〉」


悪ガキを押さえていた部下達と悪ガキの頭に木の丸弾が当たり、頭を押さえて転がる。


アビー「アビー様か、アビー様かアビー様とお呼び!」


悪ガキ「アビー様しかねえじゃねえか馬鹿じゃ〈ドン!〉あああほほうおおおおお!?」


また頭を撃たれのたうち回る。


支部長「ま、ま、まさか白衣のアビーか!?」


アビー「ん?・・・・・・・・・・誰だい?」


支部長「き、貴様がアビーなら尚更都合が良い!おい!アビーとワシを転送しろ!サシならば勝てる!こやつは旦那と離れたら魔法無効弾は撃てん!」


支部長部下達「は!」


支部長部下達は2万人。


全員この場に居ないにせよ、大規模人数である。


一斉に向けられる転移術式に成す術は。


アンチ魔法服。


支部長「あにい!?」


支部長部下達「だ、駄目だ!アンチ魔法です!魔法が効きません!」


支部長「ならば魔法現象ではなく、科学事象だ!空気を燃やせえ!エンパイア!」


支部長自ら炎魔法。


支部長部下達「エンパイア!」


炎が民衆ごとアビーを襲う。


支部長「うははは!例え発生が魔法でも発生した後の熱は科学熱!燃えろお!」


アビーの銃が〈ガチャン〉変形。


沢山のミニ弾丸が入ったマガジン。


アビー「一式、追尾弾〈ドン!〉」




追尾魔法により、追尾していき、当たると魔法、事象消去が発現する。


クランツの弾は当った瞬間に少し炸裂する。


しかし、当たるまでは普通の弾であり、魔法付与が可能である。


ただし。


付与可能なのは、アビー自身だけ。


全てのエンパイアが消去された。


支部長「ば、馬鹿な!?」


女の子「ママかっくいー!」


男の子を一人抱っこしている男性、隣には女の子が立って、男性のズボンを掴んでいる。


支部長「く!あいつだあ!奴を転移だあ!アビーから引き離せえ!アンチ服を来ているなら誘拐して引き離せえ!」


アビー「あーあ」


クランツに襲い懸かる部下達。


〈ドカドカバキドカ!!〉


周りの冒険者達がクランツを助け、部下達をボコ殴り。


支部長「な!?何故助ける!?教会を敵に回すつもりかあ!?」


冒険者達「は?知らんね?俺達はあんたを敵に回すんだ、教会は教会、あんたはあんた、ふへへ」


支部長「ふざけ」


ギルド長「それによー」


支部長「!?」


ギルド長「クランツさんはこの町に農業と、水路、上水設備、下水道設備、薬、体調マニュアル、魔物の生態、寄生虫問題、性病の知識、沢山沢山、王都の上の連中しか回らない知識を無償でこの町に流してくれたんだ、いや、流してくれてんだよ、んな恩人をみすみすやらす訳ねーんだわ」


周りの冒険者「ここは俺達の故郷だ、ああ、そうだ、この町は居心地良いんでね、ちげーねー、ぎゃはは」


アビー「そうだよ、クランツは私より凄いんだ」


クランツの子供、男の子「パパしゅもい?」


女の子「パパもかっくいー」


クランツ「いやあー」


アビー「こんな風だが、ベッドじゃ獣だからね」


クランツ「アビー!!」


マダム達「あらまあー!」


支部長「く、くそ!コケにしやがって!私は!SSSのサザムントだぞお!!この地は私のような選ばれし者こそ相応しい土地なのだ!私のモノだあ!!」


極大魔法、アルティメットフェニックス。


支部長「火山が噴火した事にしよう、なあに、安心しろ、石碑くらいなら建ててやる」


支部長部下達「支部長!?我々は!?」


支部長「うるさい!蝿共が!死ねえ!」


クランツ「アビー!」


クランツから少し変なマガジンが投げ渡される。


アビー「四式」


受け取り、アビーは背中に手を伸ばし、服から〈ずるう〉長い銃を取り出した。


マガジン装填、ショットガン。


フェニックスが来る。


アビー「無に帰せ《バフォオン》」


フェニックスごと、サザムントを撃ち抜いた。


フェニックスは瞬時に消え、サザムントは吹っ飛んだ。


サザムント「かは!!?」




アビーが近づく。


サザムントは右肩を負傷し、押さえて、唸っている。


アビー「お前さんはもう魔法は使えない、部下を連れて帰れ、二度と戻ってくるな、解ったね?」


支部長「・・ああ、解った」


アビーが離れた後。


冒険者達が近づく。


支部長「な、なんだ?もう決着は」


冒険者達「あー、悪いんだがよ、終わってねんだわ、取り敢えず筋は通さねーとさ、な?」


支部長「や、やめ・・・・あ、あーーーーーーー」




その後。


サザムントは田舎の寂れた町で、漁師の娘と結婚し、尻に敷かれた人生を送った。


しかし、死に顔は、悪くはなかったという。


ミンダルカの丘。


深夜。


アビー「クランツ」


クランツ「?なに?」


アビー「口を貸せ」


クランツ「はい」


アビー「んん」


クランツ「んーんんん〈ドサッ、ギシ〉」





満点の星が、小さな家の側にある湖に映る。


明日もミンダルカの町は平和であろう。


END。



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