幼馴染のレーナ2 朝ごはんだよレーナさん
皆のアイドルレーナさん
早くも2回目の登場です
レーナさんワッショ~イ‼‼
「起きやがれマシナーーーーーー‼‼」
早朝。と言うよりまだ空も白んでいない時間帯に、俺は布団のシーツを力任せに引っ張られ、その勢いでベッドから転げ落ちて目を覚まさせられた。クソッ!朝でも無い時間帯からなんて日だ。窓から見える墨汁を流したかのような空に映える下弦の月の美しさがむしろ俺のザマ無いぶりを際立たせる。寒い。めっちゃ寒い。
「何すんだよレーナ!」
「何もかにも無いわよ!」レーナの切り返しはほぼ間髪を入れない「朝ごはんよ!」
「はぁ?」
こんな日の出も迎えていない時間帯に朝ごはんの無心に来たのか?そう言ってやった。
「違うわよ!私が朝ごはんを作ってあげるのよ!男心をつかむにはまず胃袋からつかめって書いてあったわ!」
「へー?どこに?」仕方なく俺は着替えをしながら聞いてみた。
「ラ……ライトノベル?」
あ。コイツ口籠った。多分自分の思っている事ってあやふやな話なんだろうなと思ったがそこに突っ込んでも騒ぎになるだけだ。生暖かく見守ろう。
「で?何を作ってくれるんだい?」
「目玉焼きトーストよ」
ああ。それなら余程の事をしても不味い物は出ないだろう。
「それじゃあ待たせて貰おうかな」俺は比較的に安心して待つことにした。
「今から美味しい目玉焼きトースト作るわよ!」とか言いながら既に魔道具の調理器具にトースター、油やフライパンまで用意して俺の寝室で調理を始めている。
何時から起きて用意してたんだコイツ無駄に早起き過ぎるだろうが高血圧か?それとも早起きしなければ死ぬ病気なのかこんなに早くなくても良いだろうがなんで俺の部屋に突撃隣の朝ごはん作ってんだ意味分かんねぇよコイツ。
加速度的に頭が回転してやっとまどろんだような頭の中の霧も晴れていく。いや増して焼かれたトーストの香りと卵を加熱する時の音が頭の中をしゃっきりさせる。うん。たまには幼馴染みと頂く朝食も悪くは無い気がしてきた。
「はい。出来たわよ!早く食べなさいよ!」
皿に乗せられた目玉焼きトースト。焼いたパンの香りがたまらないな。しかし出てきたものに俺は仰天した。
「おいこれはなんだ?」
「だから目玉焼きトーストって言ってるでしょ⁉」
出てきた目玉焼きトーストは白身の部分にたっぷりと紫色の何かが乗っている
「いやこの紫色は何だって聞いてるんだ」
「ブルーベリージャムよ!」
「え?それ美味しいの」
「何言ってるのよパンに目玉焼き乗せるでしょ?ジャムも乗せるでしょ?パンに乗せるものどうしが乗ってるだけだから美味しいに決まってるじゃないの⁉」
そうか。コイツ調理手順とか方法とかじゃなくて味の足し算が壊滅的なんだ。おれそんな事知らなかったよ。
「お前食べ物で遊んじゃダメだよって躾けられなかったのかYO?」
「遊んでなんかないわよ!」
「じゃあお前食ってみろ!食えるもんなら食ってみろ!」
「私の分は有るわよ!」と言ってもう一枚出した皿にはオレンジ色がたっぷり乗った目玉焼きトーストが有った。こいつマーマレードを塗りやがった。
「食べ物で遊ぶなって俺が怒るぞ」努めて冷静に俺が言ったらレーナは目先を変えてきた。
「マシナ!ここに立ってて!」何故か開け放ったドアの前に俺を誘導した。
「構わないがなんだ」
レーナは廊下からパンを齧りながら「遅刻遅刻~」と言いながら駆けてきて俺に出合い頭にコツンと衝突し、そして転んで見せた
「あ、大丈夫?って声をかけなさいよ!」
「え?」
「声をかけなさいよ!」
「あ、大丈夫?」
と、声をかけたら例のマーマレードをたっぷり塗ったトーストを口で挟みながら、そして上目遣いで俺を見て「こっちこそごめんなさい」
と言いながら服をはたき、もう一回上目遣いで見た後走り去っていった。
マーマレードを廊下にボトボトこぼしながら。
「あれもライトノベルとかいうので知ったのか?」俺は思わず独り言ちした。
「そうですねぇ~。でもあの子の想いは気付いてあげて欲しいですぅ~」
その独り言に反応したのはいつの間に俺の背後に居たメイド長だった。
答えを返す気にはならない。そして今はメイド長の顔を見る気にもならない。この茶番に全面協力したのはきっとメイド長だから。
「床がマーマレードだらけだ。蟻が集る前にきれいにしておけよ」
「もうやってますから安心してください~」
なるほどメイドや側近たちが雑巾を手に茶番の跡を掃除している。ってかメイド長は早くもキッチン用具の片付けまでしているじゃないか。
あんなムチャクチャなレーナだが、思いのほか人気者なのだな。仕方ない。お前たちの余興とお楽しみに付き合ってやるよと思いながら、ベッドメイクが終わった寝床で二度寝した。
レーナさんのムチャクチャぶりの前にフラグもテンプレも存在しない
進めレーナさん!弾けろレーナさん!歌えレーナさん!踊れレーナさん!
書いてる本人はレーナさんは意外に好きです
あ。
読んでくれてありがとうございます