賊だ!領主軍出撃!
血沸き肉躍る戦いだ
頑張れリョーチ伯爵軍
戦えリョーチ伯爵軍!
「若旦那様、賊が出たそうにございますぞ」
執事のセバスチャンとメイド長が血相を変えて報告に来た。
「賊だと?どこに!どんな相手だ?」
ちゃんと血相は変えてくれてもメイド長ののほほんぶりは相変わらずだ。
「はいー。西の開拓村近辺でレンダさんのニンジン畑を穴ウサギが食い荒らしましたぁ」
メイド長、ちゃんと演技して!穴ウサギではなく魔物とか正体不明の何かとか言って!とか思いながらも仕方ない。そこは巧くフォローしておくか。
「うむ。敵を知り己を知れば百戦危うからずだな。正確な報告大義であるぞメイド長」
「ご褒美くれても良いですよぉ若旦那様」
とか言いながらメイド長が手の甲を俺に差し出す。そこに接吻をしてくれということだ。お前は王女様か?しかしそれもそれで面白いから領主たる俺がメイド長の御前に跪き、挙句手の甲に接吻してやる。
「ふふふぅ。今日この日の思い出は墓の中まで持っていけますよぉ~」
うん。こいつは持って行かないよ。こんな遊びはメイド長の中ではガキの遊びなのだ。何たる大人な女の対応だ。
「領民の財産はそれを徴収するしないに関わらず領主たる私の財産だ。賊を討ち果たすぞ。領主軍総数3万を出撃させるぞ」
ごめんなさい。万ははったりです。俺と槍が上手い執事のセバスチャンと門番のゴンザの3人の事です。
「御意」
「若旦那様、留守はお任せくださいませ~」
そこに今回は援軍も来てくれた。
「マシナ様、私も加勢いたしますわ」許嫁のママーナが助成を申し出た。実はママーナは馬術と弓術が人並み以上に上手い。この加勢はありがたい
「おお、子爵領より1万の援軍が」
「お兄ちゃん、私も遊びに行く」
妹のイーナも姉のように慕うママーナと出掛けたいようだ。
「ああ。来るかい?でもイーナはちゃんと安全な所で見ているんだよ」
「はーい」
元気な約束もとりつけたところで馬を揃えて出撃だ。ママーナの馬は当家の馬房に居るし、イーナは俺の馬に一緒に乗ればいい。
「各地で賊軍討伐の義勇軍や散開勢力を拾いながら進むぞ、出撃」
「狩人さんや現地の方々の事ですわね」
唯一のツッコミ役であるメイド長がお留守番なのでママーナがちゃんと方向修正してくれる。マジでありがたい。来てくれてありがとう。そして少しだけ邪魔だ。気分が盛り上がらない。
あっという間に開拓村には辿り着ける。何の事は無い。開拓村と言うより3年前にあった他国間の戦争で流民が流れ込んできたので、領都の西側で畑仕事をしてもらう実験農場の成れの果てだ。被害状況の報告を聞くと賊の数は15万(穴ウサギ15匹の事)、ニンジン畑の被害は1割ほどだという。
捜索をしてみれば早速賊の一部と遭遇した。ママーナがすかさず矢を射掛けたが賊はこちらに気付いて逃げてしまった。
「いえ、手応え有りですわ」
ママーナが賊の消えた方に走り出す。全軍でママーナを先頭に進むと深々と矢が刺さった賊が倒れていた。
「今夜はウサギの鍋ものですな」「一番槍は頂きですわ」「お嬢さんが仕留めたぞ俺たちも負けるな」
ワイワイと皆が称賛したり督励したりしている。士気はうなぎのぼりだ。勝てる!領主軍はこの賊に勝てるぞ。
ついに賊の本拠地(穴ウサギの巣)をつきとめた領主軍は義勇軍の所持していた攻城兵器(穴ウサギを狩れる犬)や毒ガス攻撃(穴のそばで火を燃やして燻り出しているだけ)で全ての賊を殲滅し、更に周囲の魔物の群れ(近辺に居たオオカミ2頭と鹿3頭)まで討伐できた。
勝利の栄光と興奮冷めやらないまま開拓村に帰還した俺たち領主軍一行は領主軍主催の祝宴に突入し論功行賞まで行った
「戦功第一、一番槍他7万撃破。ママーナ・モンダナエ子爵令嬢。銀貨5枚と毛皮3枚、矢15箭を下賜」
「嬉しいですわ。マシナ様」
「戦功第二、3万他オオカミ1万撃破。義勇軍ポクテ。銀貨5枚と矢15本を下賜」
「義勇軍じゃなくて狩人ですが感謝します」
「戦功第三……」
その日は開拓村の宿に宿泊し翌日帰ることになった。祝宴も大いに盛り上がり、開拓村の住民たちにも親しく声をかけ、村長一同が自分たちのような元異国民にまで優しくしてくれて感謝しますとホロリとしていた。異国民じゃないよ。もうお前たちは俺が愛し守り慈しむ領民なのだ。
みんなの酒も適度に回っているようだ。逃した魔物(有害鳥獣)の話や狩った賊の利用方法で宴もたけなわだ。今日この日、領の平穏を取り戻せた事は素直に嬉しい。わが領は今日も平和だ。
いやそもそも穴ウサギなんかを賊とか言わなきゃいけないくらいには穏やかな領なんだけどね。
読んでくれてありがとうございます
このサイトの利用方法がまだぎこちないですが、少しずつ慣れていってます
昨日はこれ書く前に寝ちゃったから早朝投稿ですじゃあ、今日はお休みなので2度寝します