困った客人 (本作の趣旨的に)
ファンタジーとしてこれは有りなのかどうなのか
分からないけどまあ気にしないで行こう
お試しお試し~
執務が長引いてすっかり遅くなってしまった。
妹のイーナは俺の夜食のおこぼれをひとしきり食べたら自室に帰って寝てしまった。
子爵令嬢で婚約者のママーナも当家で夕食を食べた後帰宅してしまった。
メイド長は……ここに居るよ。こたつの対面でガチ寝している。こんな所で居眠りをして風邪を引いては気の毒だ。部屋に引き下がるよう促すと、お優しい若旦那様ですねと笑みをこぼして下がっていった。
深々とした夜。判をつく音とサインを走らすペンの音だけが聞こえる。なんと澄んだ静寂だろうか。しかしそこに聴き慣れない男性の声が近づいてくる。どうやら二人連れの人物なようだ。
「何者か?ここがリョーチ伯爵家と知っての押し入りか」
ドアを開け声の方に誰何した。聴き慣れない声の主たちは一瞬驚いたような顔をしたが恐れ入ったように深々と頭を下げた。
「これは失礼をいたしましたマシナ・リョーチ伯爵閣下。このような夜分のご訪問をお許しいただきたく」
男たちの身なりと言い小ぎれいな容姿と言い、見慣れないながらも見事な縫製と生地の衣服を観察し、どうやら賊ではないことを察知した俺は
「このような時間に訪問とは何用か」
と再び問いかけた。
「はい。私共はこの地の上空とある星の住民でございまして」
「まあその。宇宙人なんですよ」
おい宇宙人なんて言うな!こっちはファンタジーやってんだぞ⁉
「移動に使っていた乗り物が故障してしまったものですから滞在の許可をこのような遅くに頂きに参りました。なに。朝には修理も終わって帰ってしまうでしょう」
「乗り物って要するにUFOの事ですね」
おいUFO言うなファンタジーぶち壊しじゃないか!
「もちろん許可しよう。何かこちらで出せる必要な物は無いか?」
「ありがとうございます閣下。これはささやかなお礼の気持ちです」
受け取ったのは拳ほどもあるダイヤモンドの塊である
「こんな貴重なものを貰っては」
「気にしないでください。それ人造ダイヤでこちらの感覚で言うと銀貨3枚ほどですので」
人造ダイヤ出すならせめて異世界人と名乗ってくれないか?こっちはファンタジーやってるんだから!
「しかし宇宙人か。てっきりタコみたいな姿をしているものかと思ったが。意外と見た目は変わらないものだな」
「ああ。そんな宇宙人も居ますよバダンドル星人ですね。それと半人半馬のレンガッド……」
「それケンタウロスじゃないか?」
「いえ逆なんですよ馬の顔と人の足の姿なんです。ケンタウロスの残り物くっつけたような奴らなんですが好戦的でしてね。その両者の戦争に巻き込まれて不時着したんですよ」
「ほう。物音一つせずに不時着出来るのか」
「はい。緊急用反重力落下制御装置は無事でしたので」
もう!完全にファンタジーじゃないじゃんSFじゃん!やめてよ!ついでに漢字多すぎ!あとFの字キーボードで探すの苦労しちゃったじゃないか!滅多に使わないからね!
「で?その乗り物はどこに有るんだ?」
「はい。お屋敷の庭先に」
慌てて外を見てみれば、そこに巨大なハルピュイアみたいな物が転がっている。それがうねうね動いているのだ
「今修理誰がやっているんだ?」
「ああ。オートでやるんですよ。自分で自分を修理するナノテクマシンで修理しています」
ナノテクマシンっておまいら!もうツッコまねぇよ。
「ふむ。すごい技術だな。お前たちよくもこのようなみすぼらしいわが領を攻め滅ぼそうと思わないものだな」
「そんな事しませんよ。今この地は我々と同じく遠くの星々の我々に会いにこれるほどの科学技術、魔法力、錬金術が育成されるのを多くの宇宙人が期待して待っている状態なのです」
「そういう事なんです。ただ今日は挨拶まで。そして閣下の遠い子孫たちと私たちの後裔が互いに手を取り合えるようになるのを期待しています」
そうなる前に多くの知性ある生き物たちの住処だった所が、自分たちの力にあぐらをかいて滅びていってしまうそうだ。
「俺一人にそれを知らせてみたところで大した波風も起こせない事も織り込み済みか」
宇宙人は微笑みながら答えた。
「閣下はきっとその斜め上な事をしてくださいます」
「例えばどんな?」
「この宇宙人とのコンタクトを面白おかしくホラ話として伝承してくれるでしょう」
「閣下と自分の子孫の為にそうするでしょう。むしろそれを期待しているのです」
東の空が徐々に明るくなってきた。宇宙人との巡り会いは俺とか領地とか国家そんな話ではなく、もっとグローバルな話な気がする。
そうかと言えば一人一人の心がけにも思えてくるから不思議なものだ。
今日会ったことは絶対忘れないようにしよう。そして必ず立派なホラ話にしてやろうと誓いを立てた。
そうそう。貰った人造ダイヤは余りにも大きすぎて指輪にしたら重すぎるし、首飾りにしても肩がこるため、結局領内の博物館に展示したところ、見事なカッティングと余りの大きさに連日沢山の入場者が押し寄せる名物になった。
まあ、この話のどこがホラで
どこが本当の話なんかはこの俺にしか分からないのだろうが
楽しんでいただけましたでしょうか?