第2話 どうしようもない日常と儚い友情
なんで朝なんだ。さっきまで楽しく酒を飲んでいたはずなのに。
最近はほとんど毎日のように康太の家で飲んだくれて、気が付いたら朝になっているという生活をしている。昨日も、いつもと同じように康太と二人でくだらない話をしながら酒を飲んでおり、目を覚ますと康太宅の天井と目があった。
「おはよう!ラーメン食いたくない?」
ベランダで朝の一服をしている康太が俺に言う。
「確かに。じゃあ二限の民法はラーメンに変更だな。」
「いや、民法は受けないとだめだよ。その後にラーメン。」
なんでそんなところだけ真面目なんだ。
「待て。二限終わりってことはみんなと同じタイミングでの昼飯になる。もし満席で入れないなんてことになったらどうする?お前に責任がとれるのか?」
どうしても講義に出たくない俺は執拗に食い下がる。
「じゃあ、俺が単位落としたときは責任取れよ。」
完敗だ。参った。
「というわけで、どうせいつもみたいに、風呂入ってからじゃないと行かないとか言うと思って、今日はバスタオルを用意してます!」
バスタオルくらいいつでも出せる用意しておけ。というかお前は普段何を使って体を拭いているんだ。
「それはどうもありがとう。お借りします。」
重力を十二分に感じつつ体を起こすと、不意にスマホが鳴った。一郎からのラインだ。
「階段から落ちて入院することになった。申し訳ないんだけど、鍵を渡すから、俺の着替えとかを病院に持ってきてほしい。」
あの一郎が階段から落ちるとは。恐らく気前のいい客が来て、予想以上に飲まされでもして酔っていたのだろう。
「おい康太。親友の大ピンチだ。一郎が階段から落ちて入院することになったらしい。今すぐ着替え等を届けてやらないと。風呂に入ったり、講義に出ている場合じゃないぞ。」
わざとらしく切迫した表情を作り、険しい雰囲気を出す。これはさすがに勉学に対してだけは真面目な康太も断れまい。
「…ラーメン食ってからな。」
もし俺の身に何かあったときは、真っ先に一郎を頼ることにしようと心に決めた。