9話
「何でもします、人間を殺しまくって、世界を絶望させます」
佐渡 悠真、茅ケ崎 蓮、砥部 悠翔。
このデスゲームのゲームマスターであり転移した日本人。
そして死刑囚。
そこはいつもの独房ではなかった。死刑執行を待つための鉄格子のなかではなかった。どこまでも広がっているような空間、黒一色で手の先を見る事すら難しいほどの黒の空間。
「邪神様、どうか、どうか・・・」
膝をつき、頭を垂れ、顔中ぐちゃぐちゃで懇願する。
世間を騒がせた早隈池大学のサークル「パープルドット」の代表。それぞれがIQ148以上の知能指数を持つ天才。
強盗、殺人、強姦など、100以上の罪で有罪が確定された世紀の大犯罪者。大学のサークルを隠れ蓑として悪行の限りを尽くした。だが実際の数はその数倍に及ぶと言われる日本中を震撼させた犯罪集団の主要メンバー。
死刑執行を待つ3人に訪れた突然。
邪神。
穢れきった魂を持つ者、異世界に混沌と破壊をもたらす者を探していた。皆が寝静まった真夜中。その出来事は突然だった。体を捻じられるような強烈な痛みが全身を襲い、気が付くとそこにいつもの光景は無かった。
そこには辺り一面の黒と見慣れた二人の顔があった。
「なんだこれ、、夢か・・・?」
そんなものでないことはそれぞれが体感ではっきりと分かっていたが、口にせざるを得なかった。それほどあり得るはずのないことが起きていた。
目の前の闇が歪んだ。
「矮小な屑共・・・」
頭が痛くなる声と圧倒的な存在感、そして恐怖。目の前、近いのか遠いのかもわからない場所に何らかの異様な存在があった。
「ががががが、、、、ああああああ・・あああ・・・」
頭を無理やり押し潰すような感覚。うずくまり、悶え、転げ回る視界の中、他の2人も同じようにのたうち回っているのが見えた。次第に痛みが消えていくと同時に変化が起きた。
「はぁ、はぁ、はぁ、、、」
理解できていた。
「邪神様、どうか、どうか、御願い致します・・・」
目の前の存在がなんであるか、なぜ自分たちが選ばれたのか、何を目的としているのか、それが分かっていた。歯向かえば殺される、だが歯向かうつもりなど毛頭なかった。
「邪神様の望むような働きを致します、殺して、殺して、殺しまくって人間たちに絶望を、恐怖を与えます・・・・」
死にたくなかったから。他人を殺したならば生きれる、それなら答えは一つしかない。
「何でもします、人間を殺しまくって、世界を絶望させます、ですからどうか転生させてください」
いつ、とも分からぬまま死刑を待つ、そんなことは耐えられなかった。この地獄から抜けれるのであればなんでもするつもりだった。しかも罪悪感など微塵も無かった。騙され、盗まれ、殺される奴らが馬鹿、そう思っていた。
後悔することと言えば捕まったことに対するものだけ。チクった人間に対する恨み、検事への怒り、新聞に対する怒り、世間に対する怒り。自分はその他大勢の木偶の坊なんかとは違う選ばれた人間。何の能力も持たぬ屑共が事件発覚と同時に一斉に攻撃してきた。
「全員ぶっ殺す」
事件発覚後、自分たち以外の人間に対する嫌悪感は高まっていた。