7話
気が付くと思ったよりもスキルポイントが減ってしまっている。カポエイラのレベルがどんどん上がっていく事に快感を覚えてしまっていた。
「カポエイラって格闘技?強いっ?知らない、良く知らないですよ、カポエイラなんて。あれ、もしかして、俺氏・・・やっちゃった?」
押し寄せる後悔。
「取得のキャンセル、取り消し、取り消しは・・・・・」
出来ません。クールな機械的音声が聞こえた気がした。
「ポイント返せーーー!!」
涙と鼻水。
「お、おで、おでのポイント」
涎。
BANG!!
放たれた銃弾。
響いた音とほぼ同時に到達した流線型の弾丸は悪魔ガエルのこめかみに。狙いすまされた一撃。
深く、深く突き刺した凶弾。凶弾が到達したのは地面だった。
「へ・・・?」
さきほどまで確かにそこにいた悪魔ガエル、そして確かにそこにあったはずの頭部の位置を銃弾は通過した。そして何者の命をも奪うことなく地面に突き刺さった。銃弾が開けた小さいトンネルは底が見えない。弾の威力を雄弁に表している。
「からだ、体が勝手に・・・」
頭部を破壊することは無かった。動いた。無警戒だった悪魔ガエルのこめかみに凶弾が触れる直前、両手を地面につき両足と共にくるりと回った。無意識のうちに躱した。
「カポエイラ・・」
これこそがカポエイラの床移動「ホレー」。カポエイラのことなど全く何も知らないにもかかわらず技の名が浮かんだ。これこそがスキルを習得するという事。何も知らずとも、一度もやった事が無くとも、まるで達人であるかのように悪魔ガエルの体にはカポエイラが刻み込まれていた。
「カポエイラ、おぬし!使える奴じゃねえですか!!」
感動。カポエイラが身を守ってくれた。役に立たない子扱いしていたことをすっかりと忘れ感動していた。ただタップしただけではあるがカポエイラは確かに身についていた。
「しっかり格闘技じゃないですか!」
意識状態において防衛する、考えずとも体が動く。それこそが体術を極めるという事だ。
「誰が、どこから、狙ったんですかねぇ・・・」
キョロキョロと周囲を見回す。狙撃されたのにもかかわらず悪魔ガエルにはどことなく余裕がある。それはまた狙撃されたとしても潜り抜けることが出来ると確信しているから。
「俺氏、予想。あれかも」
その視線の先には塔。高く、遠くにそびえる塔。見渡す限りこの空間内に高さを持った建造物はそれだけだ。
「あそこからなら計算も合いますね・・」
銃弾の角度は悪魔ガエルのこめかみの位置を通過し地面へと突き刺さった。それはつまり高い位置からの狙撃。
逃げる場所などない。遮ってくれるようなものなど何もないのだ。
「攻撃は最大の防御、ですからね・・」
悪魔ガエルは歩を早めた。
目的地はそう遠くはないはずだった。。