6話
「俺氏、見間違い!?」
スキル画面をスクロールしていた指が止まった。
「カポエイラ・・・」
カポエイラ、それはブラジルの奴隷たちが生み出したと言われる足技を中心とした格闘技。
「カポエイラ!カポエイラのレベル1が1Pで売ってる!安っす!カポエイラ超安っす!」
悪魔ガエルの人差し指は微かに震えている。
画面に表示されるものが、いわゆる魔法といわれるスキルから、体術に分類されるスキルへと変わっていった。柔道、空手、ボクシングなどの格闘技の項目の中でひときわ目を引いた。
他の項目がLv1を獲得するのに10P、20Pと必要なことが記されている中で、カポエイラは一桁だった。しかも1Pであった。
「俺氏、ついてる!」
タップした。
「獲得しますか?もちろんYES!YES、YES、YES!!」
<カポエイラ Lv1 を獲得しました>
頭の中に機械的な女性の声が響いた。
「ふぉふぉ!どんどん行きますよーー!」
タップ。
「たったの2ポイントですか!答えは、イェーース!」
<カポエイラ Lv2 を獲得しました>
「イェス」
「YES」
「いえーす」
・・・
・・・・・
・・・・・・・・
<カポエイラ Lv10 を獲得しました>
「カポエイラ習得済み、ですか!ふぉおおふぉっふぉおふぉお!!味気ない、なんとも味気ないですねえ、もう終わりですか。ポイントはまだまだ残っているというのに、ふぉーーーふぉふぉふぉふぉ!」
異様なハイテンション。もちろん周囲には誰一人としていない。その満足そうな笑顔を見る限り彼は自分が今、デスゲームに参加させられているという状況をすっかりと忘れてしまっているようだった。
「フォフォフォフォフォ!やりました、俺氏。カポエイラコンプリート!!」
もちろんスキルポイントはまだ残っている、それは事実。カポエイラLv1が1Pだったのも事実。だがこういったシステムでは当然ともいえる、レベルが高くなればなるほど必要とするポイントは多くなっていくのだ。
「ふぉふぉふぉ、お、お・・・カポエイラ、カポエイラ・・・カポエイラか、なんだっけ、それ」
ドクン!
心臓が不規則に鳴った。