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30話

 




「作戦変更しますかね、いったん」


 世界征服宣言。テンションが上がってしまったゆえの戯言。しかし心のどこかで本当に思っていた。



「いったんですが「大人しく生きている俺氏、だからいじめないでね作戦」にしますかね」


 星に世界征服を誓ってからわずか数分で勝てないと思う相手に出会ってしまった。あまりにも早すぎる。この調子だと世界には自分よりも強い存在はどれほどいるのかわからない。


「所詮は悪魔、ですからね」


 魔王、ではない。只の悪魔だ。余り調子に乗っているとあっという間に殺されてしまいそうな気がする。


「しかもカエル型ですしねぇ…雑魚感半端ないじゃないですか」


 殺し、略奪なんかはできるだけ避けたほうがいいだろう。


「まあ、自分の身を守る時くらいにしておきましょうかね」


 そうすると問題が生まれる。


「どうにかして金を稼がなければいけません」



 スッ。


「?」


 立ち上がった。



「私はもう行きます」


 箸を動かしていた手が止まった。


「ここにいつまでもいても仕方がないですし」


 ガツガツガツガツ


 速度が上がった。


「私も行く」


「?」


「一緒に行く」



 完食し、立ち上がり、こちらを見た。


「う、、」


 力を感じた。


 拒否する言葉、あるいは意志を感じ取られた気がした。


「一緒に行く」


 その眼、眠そうである。口元にはご飯粒が付いている。それにも関わらず何か圧倒されるものを感じた。


「い、いえ、大丈夫ですよ。えーと、あなたはとても強そうですからこの世界でも十分やっていけると思いますよ」


 嘘。


 知らない。この少女がどれほど強いのかも知らないし、この世界の事も死体たちが持っていた知識だけで実際に体験したこともない。保証する根拠など何もないのだ。


 ただ離れたいだけ。目の前の獣人少女。この少女を見ていると首の後ろがゾワゾワするのだ。


「あっちの方にいけば村があるみたいです。2日ほど歩くみたいですが貴方なら余裕でしょう・・・あるいはここにいて誰かが来るのを待つ、という選択肢もありますね。食料は街に十分ありますし」


 少女に示したのは自分が向かおうとしている方向とは反対の方角。


 ズイ。


 一歩前に進み出た。悪魔ガエルとの距離は10cmもない位だ。かなりの身長差があるため見上げるように目を合わせてくる。



「う、また、ですか…」


「イヤなの?」


 なぜだろう。悪いことをしてしまったかのような気持ちになった。


 そんなはずはない。たらふく飯を食わせ、これからの選択肢を示した。十分すぎるほどに親切ではないだろうか。特にこっちは悪魔だ。悪魔にしては神対応と言っていいと思う。


「嫌ではないんですか、、、えーと、その、、、」




 背後に異様な気配を感じ振り返った。


 だがそこには誰もいない。


 ただ当たり前のように夜の闇があるだけ。


 違う。


「なんですか、これ…」


 違った。そこにある黒は滲み、歪んでいた。




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