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29話

 


「見えません」



「はぐっはぐはぐはぐ・・・・」



「なにも見ることができません」



 料理をむさぼる少女。頭の上側についている黒いケモノミミ。ピンと立ったその耳の先端が食べる勢いにつられ不規則に揺れている。


「不可になってますね、鑑定が」


 悪魔ガエルの意識は料理にも少女にも向いていない。



 新たなる一品、それはカルビ丼とトウモロコシのかき揚げ。カルビ肉の照り、そしてからっと揚げられたトウモロコシの甘い匂いが立ち上る一品。


「はぐはぐはぐ・・・」


 一心不乱にかきこむ。もうすでに二品完食しているというのに飛び掛からんばかりの勢いだ。口元には定番といえる米粒がついている。


「すごい食欲ですね」


 上位の存在。


「うーむ、どうやら、これは、やはり・・・・」



 それは死体が持っていた知識。


「自分より上位の存在に対しては鑑定できない、ですか。もちろん高レベルな隠蔽のスキルをもっている可能性もありますが・・・」


 感覚が否定する。恐らくこの少女は自分より、いわゆる上位の存在という奴なんだろう。詳しいことは分からないが、だとするのであればそれは自分が少女に対して感じる恐れの証明でもある。



「俺氏、理解不能。強そうに見えません。それなのにどうして強いと思ってしまうんでしょう」


「あっかー、おかわり」


「はい」


 無邪気というのだろうか、なんの迷いもない、当然おかわりをくれるだろうと疑ってもいないようだ。親子であれば納得できるのだがそうではないはずだ。


「記憶さえあればそれがはっきりするんですがね。だれが私の事を転生させたのか知りませんがあまりにも不親切すぎますね。カエル型の悪魔ですし」



 ひとりごとを言いながら能力を発動すると、ゆっくりと料理が下りてくる。


「何度見ても不思議な光景です」



 何もなかったところから物体が出現する。ちなみに「あっかー」というのは俺氏のニックネーム。大きな悪魔ガエルさん、略して「あっかー」になったらしい。


「名前が思い出せいないのに先にニックネームが決まってしまうなんておかしくないですかね」



「わほっ」


「ステーキ丼です」


 香ばしく焼かれた表面にブラックペッパー。断面はミディアムレアーのピンク色で濃い目のタレがたっぷりと駆けられている。中心に盛られた三つ葉の上には卵黄が溶かしてくれと言わんばかり。


「良いスキルを手に入れました」


 これさえあれば餓死する心配がない。


「熱々というのがさらにポイントが高いです」


 料理はいつも作り立てという一番おいしい状態でいつも現れる。



「戦闘に特化した能力でないことは少し残念ですがね」


 もしもそうであれば目の前で無我夢中に肉に食らいつく少女にビビる必要はなかったかもしれないと思う。


「はほ、はほ」


 肌寒い夜の気候と相まって怪獣のように口から湯気を吐いている。




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