28話
闇夜を少量の光と共にゆっくりと降りて来た。
牛すき焼き。
薄切りの牛ロース肉がたっぷり。そしてネギ、しらたき、豆腐、シイタケ、白菜。甘辛の割り下がくつくつと音を立てている。鉄鍋の横には、ご飯と卵そして漬物。
「わぽー」
獣人少女の口元からは又してもよだれ。目が釘付けになっている。周囲に漂う香りは食欲をそそる。だからしょうがないのだが、こう何度も同じ人間のよだれを見るものだろうか。
コン!
料理を両手で迎えるようにキャッチすると、すぐさま卵を割った。シャカシャカと箸で卵を溶き、
「はぐっ!」
とろとろの牛肉を口に入れた。
「ほふ、ほふほふほふ、、」
幸せそうな顔で頬張っている。
「うーむ」
食べ方を知っている。すき焼きの食べ方。箸の使い方も完璧。つまりこのケモノミミ少女。日本人と考えて間違いないだろう。
「はぐはぐ、、」
お腹が空いてきた。スキルで作り出した料理はどうやら問題ないようだ。食欲が無かったが少女の食べっぷりが感覚を取り戻してくれた。
「私も食べましょうかね・・」
〇●〇●〇●〇●〇●
<特殊スキル クリエイティブキングヌードル>
◎地球の料理を召喚することが出来る。
◎呼び出すことのできる料理は、「一度召喚したことのある料理」、または、「ランダムで選択」、のどちらかを選んで発動する。
〇●〇●〇●〇●〇●
「クリエイティブキングヌードル発動、ランダム」
再び光と共に下りて来た料理。真っ白い皿に黄色い卵、そこにケチャップがかかっている。
オムライス。
ミニサラダとスープがセットになっていてバランスがいい。いかにも作り立てであるかのような香りと温かさを感じる。
悪魔ガエルも少女に負けぬくらいに食べることが大好きであり、なおかつ、このオムライスは大好物のひとつである。
「そうそう、それでいいんです。ケチャップこそが至高」
オムライスは上にデミグラスソースがかかっているものもあるが悪魔ガエルは断然ケチャップ派だった。
「良い香りです」
スッ、
触れる直前、手元から消えた。
行先はもちろんひとつ。
「はぐっ、はぐはぐはぐはぐ・・・・」
「はぅを!」
「?」
「い、いえ・・・なんでもありません。美味しいですか?」
「はぐ」
「そうですか・・・」
悪魔ガエルは夜空を見上げた。
「星がきれい…」
この輝きは異世界だろうと関係ない。それに気が付くことが出来た、だから良いのだ。
「料理を呼び出したところで体がだるくなったりという感覚はありません、つまりこのスキルは消費魔力が低いのでしょう。だからいいんです、また呼び出せば。カリカリする必要は」
「おかわり」
「はい・・・・」
今回は屈した。だがそれは今回だけだ。もう誰にも屈しない。基本戦闘力3億越えのステータスでこの世界を思うがままに生きる、無双するのだ。
「世界征服はまだ諦めてはいません…」
小さな声でつぶやくように言った。




