24話
赤き顔。
緑の顔が赤く色付いた。
「恥ずかしい・・・」
世界征服の宣言。誰もいないと思っていた。星に誓ったあの思い。随分と大声だった気がする。
「恥ずかしい」
じっとりと汗が滲んでいた。冷静になって見るとあれは本気というよりも酔っ払いの戯言みたいなものだったと思う。まだ始まったばかり。異世界生活は始まったばかりだ。世界征服宣言は早すぎる、そして中二病臭い。
「寝てたから気づいてないか?」
獣人の少女はガッツリ寝ているように見える。
「デスゲームで全員死んだはずじゃ・・・」
誰もいないと思っていたからこそ言ったのだ。
「そうじゃなければ言わなかったのに」
眉よりも短く一直線にそろえた前髪。さらりとした髪を後ろで括ったいわゆるポニーテール。整った顔立ち。可愛いのだろうが口元から垂れているよだれがそれを大きく損ねている。
ケモノミミであり、そして日本人的な顔。それはデスゲームで死んでいた人々のヨーロッパ系の顔立ちとははっきりと違う顔の造り。
「将来は間違いなく美人になるでしょう」
だが、それより。それよりも気になる事。
「強い…」
この少女、強し。
分かるはずが無い。剣を交わしたわけでもない、立ち合ってすらいない。それ以前に相手は立ってすらいないのだ。わかるはずがない。
「不思議です」
ただ寝ているだけの少女の強さなど分かるはずが無いのだ。
だが、わかる。
「強い…」
背筋に悪寒のような感覚。
「悪魔の本能・・」
悪魔の遺伝子に刻まれた本能の知らせなのかもしれない。
「たどすれば歯向かう必要はありません。このまま・・・」
小さな独り言。
今すぐにこの場を離れる、それしかない。
「チャンスです」
相手は寝ている。これほどの好機はそうそうない。自分よりも恐らく強いであろう存在が寝てくれている。
「そもそも…さっきとは全く状況が違います」
言い訳するように語る。
「極悪非道の死刑囚ではないです、彼女は。襲われたわけでもない。戦う理由がないのです、私には…」
逃げる理由を考え、述べる。
「戦略的撤退、そう言っていいでしょう」
「ちゃぷちゃぷちゃぷ、くらむちゃうだー」
「クラムチャウダー!?」
寝ている少女が唐突に発したのは聞き覚えのある言葉。
「アメリカ発祥の貝のスープ、クラムチャウダー」
その言葉が意味すること。
「異世界人!また!?」
さっき日本人の死刑囚と戦ったばかり。さっきデスゲームから解放されたばかり。
「絶対チートもってるじゃないですか」
危険。




