19話
「う、後ろ・・!」
恐れに歪んだ茅ケ崎 蓮の顔。
背筋にツララを突き刺されたかのように振り返る佐渡 悠真と砥部 悠翔。
「っ、、っ、、あ゛、、、ぁ、、、」
座り込みながら三人の事をしたから見上げている巨大なガエルがいた。恐怖が体を縛りつけた。喉が張り付くほど乾いていた。泣きたかった。逃げたかった。どこかに行ってくれ、叫びたかった。しかし声は出なかった。他の二人の声も聞こえなかった。
銃弾の雨を風と共に躱した化物。カポエイラの技、ホレーを使い銃弾を躱した悪魔ガエルだが、彼らはその姿すら捉えることが出来なかった。緑色の残像しか見ることが出来なかった。
チャリ、チャリ。
額の高さまで持ち上げたものは鍵。このゲームを脱出、あるいは、キャンセルするために必要な鍵。見せつけるように飲み込んだ。
「「あ・・・」」
ビーーー!!ビーーー!!
絶望の声と同時にゲーム内に警報音が二度、大きく鳴った。
「やべえ!!」
「うあーーーー!!」
「時間、時間が!!」
残り20分の合図。
制限時間。
無差別に、そして強制的に、ゲームへと引き込んだ人間、プレイヤーを殺しきらねばならぬ時間。
20分。
今それは脱出しなければいけない時間へと変わった。残り時間20分、ここから脱出しゲームをキャンセルしなければならない。邪神との取引によって自らに課したリスク。太く、強靭な鎖の縄が徐々に徐々に首を絞めていく。
死。
20分以内に脱出できなければ死。
「蓮!悠翔!落ち着け!!」
佐渡 悠真の怒声。邪神の言葉を遮りこの能力を提案した男。強姦に尋常でないほどの性的興奮を覚え日本で124人の女性を毒牙にかけた男。カエルへの恐怖を払いのけ声をあげた。
「殺せば終わる!」
茅ケ崎 蓮、砥部 悠翔が冷静を取り戻す。
「この化物を殺せば!銃弾をぶち込みゃあいいだけの事だ!!」
BANG!!
ヴォン!!
銃声とほぼ同時。発せられた音はカエルが腕を振るった音。大きく振りかぶり、投げたのは一掴みの石。拾い集めた、ただの石ころ。
散弾銃。
強大なステータスにものをいわせ投げた石ころは銃弾の雨だった。
「ぼふぇあ!」
「ぞぼおっ!」
「げはっ!」
三人の凶悪犯の、頭を、腕を、胴体を、足を、突き破った。
「一回じゃ終わらせない・・」
死者が乗り移ったかのような声だった。
「死者の怒りはそんなに生易しいものではない」
掴んだ左手の銃弾を悪魔ガエルは握りつぶした。




