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18話

 


「カエル!?」


 突然に地面から飛び出してきたカエル。



「こいつ間違えてんじゃねえの?」


「俺らはプレイヤーじゃねえぞ」


 2足歩行のカエル。大きな目玉、黄緑色に深緑色の模様が走っている。背中側の皮膚は緑色で腹部側は白色。ブヨブヨ感のある皮膚だった。



悠真ゆうま、こんなのゲームにいれたっけ?」


「しかしデカいな、2mくらいねえか?」


「おい!デカガエル消えろ、命令だ」



 ボギョッ!


 耳障りな低音、その後に突風。



 体を回転させ、両手を後方に付きながらの蹴り。メイア ルーア ジ コンパッソ。カポエイラ式の廻し蹴りが茅ケ崎 れんの頭部を直撃した。



れん!!」



 破壊。


 目はその蹴りを捉えることが出来なかった。あまりに素早く、無駄が無い。カポエイラLv10。それはカポエイラの技術の頂点。


 そしてステータス。基本戦闘力309,955,705、つまり三億越え。倒されれば倒されるほどに強くなる敵。おおよそ2倍の基本戦闘能力を持つというルールによって生み出されたアンデット、その破壊と吸収によって得た異常なほどの数値。


 技術とステータス、その両方がカチリとかみ合った時、人体を易々と破壊する。それを証明するかのように茅ケ崎 れん。その頭蓋骨は爆発したかのように破壊された。


 圧倒的な破壊だった。



 ドサッ。



「「蓮!!」」



 屍が地面に叩きつけられる音。茫然としていたがその音で意識を取り戻し、叫んだ。


 ギロリ。


 音が聞こえが気がした。


 二足歩行のカエルがこっちを見た。それだけだというのに体が痺れる。息が苦しくなった。自分の鼓動が大きく聞こえた。



「・・・・ぁ、、は、悠翔はると!銃だ!撃て!!」


「!!」


 佐渡 悠真ゆうまの声で我に返る。石化したかのように動けなくなっていた自分に気付く。腰に右手を伸ばし取り出したのは黒い物体。


「くらえ!カエル!!」



 BANG!!


 銃声。



 二つのリボルバーが火を噴いた。それは果てることなく続く。弾頭は全てがカエルの眉間へと、寸分の狂いもなく発射される。


 携帯用自動銃、これは佐渡 悠真ゆうま、茅ケ崎 れん、砥部 悠翔はるとの3人が自ら人間を殺すときに用いるものでゲーム外でも使用することが出来るように設定されたもの。



 恐怖と確信。


 目の前で友人が死んだ。否、殺されたことによる恐怖。想像を絶する死に様に対する恐怖。次は自分の番であるという恐怖。二足歩行のカエル、未知に対する恐怖。



 こういう時のために考えていた。備えておいた銃。ただの銃ではない。自動制御。予め定められた箇所へと自動で照準を合わせることが出来る銃。人間を簡単に殺すことが出来る。経験が無くとも、どんな状況であろうとも狙いを外す事が無い。


 その威力、地球のリボルバーの10倍に設定している。そして銃弾は無限。恐怖と確信。二人には両方の感情があった。



 ホレー。


 両手を地面につき両足と共にくるりと体ごと回った。カポエイラの床移動、ホレー。至近距離から発射された数十発の銃弾、そのすべてを躱した、躱し続けた。究極のホレー、それは銃弾よりも早い。



 ダッ!



「銃を避けやがった!」


「どこに行きやがった!」


 土煙と共に、カエルの姿が消えた。



「あがががあああ・・・」


 苦しみ喘ぐ声、それは茅ケ崎 れんの声。



「「蓮!!」」


 それはあり得ない事。頭部が破裂した人間は声を発することが出来ない。当然の事だ。だがそこに茅ケ崎 れんの声はあった。


 そして音。ガキ、ボキ、メキ、表現しがたい音が鳴り続く。音と共に失われた頭部が徐々に再生していく。ジグソーパズルを組み立てていくかのように、徐々に徐々に頭部が出来上がっていく。


 不死身。


 ゲームマスター。佐渡 悠真ゆうま、茅ケ崎 れん、砥部 悠翔はると。このゲームの創始者。ゲーム内において死ぬ事が無い。ルール。邪神との取引によって、引き受けるリスクによって得た強大な恩恵。三人はゲーム内において死ぬことはないのだ。



 バキョ!


「が、、はっ、は、は、は、、、」



 ひときわ嫌な音が鳴り、茅ケ崎 れんの頭部は復活した。



「はぁ、はぁ、はぁ、、」


「おい蓮、大丈夫か?」


「いでぇえ、痛でえ、すっげえ痛てえよお・・」



 ミスだった。


 想像を絶する痛みだった。生きたまま無理やりに頭蓋骨を捻じ曲げられているような苦痛。それが意識を保ったまま襲い続けた。時間にして一分にも及ばぬ時間、だがその苦痛は人間が感じることのできる最上級の痛みだった。


「痛てぇえ、、、痛てぇええよおおおお」


 茅ケ崎 れんの顔は自らの体液に濡れていた。いつも半笑いを浮かべ、弱みを見せることを嫌っていた男の顔は見たこともないほどに歪んでいた。


「蓮・・・」



 今まで一度もこんな事態は無かった。試すことすらしなかった。実際に死んでみるという事。今、この場においてハッキリと身を以て体験した。



 不死身は設定したが、無痛は設定しなかった。



 これがどれほど大きいミスなのか。身を以て知ることとなる。




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