10話
「俺達は特別な人間だ。その他大勢の馬鹿とは違う」
思っていた。だから邪神であろうがなんの躊躇もなかった。死ぬのは自分以外であるべき、苦しむのは自分以外であるべきだった。
だから頭を擦り付け、懇願する。
「いいだろう・・」
喜びと共に床に擦り付けていた頭を上げる。
「お前ら屑共に我の力の一片をくれてやる・・・」
「チート・・・」
佐渡 悠真は気が付いた。小説が頭をよぎっていた。
「邪神様、どうかお願い致します」
佐渡 悠真は必死の思いで声をあげた。勝手に声をあげた、そのことが邪神の癇に障るかもしれない、それも考えたが黙ってはいられなかった。
与えられる能力。異世界に手常人を圧倒する力、いわゆるチート。ここが勝負だと思った。驚く二人の雰囲気は感じたが、ここは勝負する必要があると思った。
「どうか、どうか、能力は俺たちに考えさせてくれませんか」
だがそれはどうしても譲れない事だった。自信があった。雑談としてではあったがもし同じ状況になったらどうするのが最善か考えていたから。邪神が考えるよりもよりよい能力を考えられる、自信があった。
「フン・・いいだろう・・・」
暫くの沈黙ののちに邪神は答えた。
「我が許すのはこの砂時計が落ちるまでだ」
邪神の存在が目の前から消えると3人はふらつきながら集まった。
「悠真、お前・・・」
「無駄話してる時間は無い、ここが勝負だ」
顔を見合わせ頷いた。砂は一粒一粒さらさらと落ちていっている。それほど時間の猶予が無いことは明らかだった。それからの時間は彼らの人生においてもっとも濃密な時間であった。
「リスクを負ってその代わり強力な能力を貰うべきだ」
佐渡 悠真は言った。
「ほかにも俺たちと同じようにチートを与えられた人間がいる可能性がある」
今度こそ誰にも邪魔されないように。自由に、好き勝手に。王のように、いや、神のように振舞うのだ。自分たちこそ選ばれし人間。その他の人間など虫けら同然だ。
「俺達で世界を支配するんだ」
3人一緒でなければ使えない能力。リスクを負う必要があった。失敗すれば死、というリスク。他者を圧倒する必要がある、佐渡 悠真は茅ケ崎 蓮、砥部 悠翔に説いた。
「ターゲットは人間にする」
数が多く思考が読みやすい。そしてなにより、それは邪神の思惑と一致する。殺せば殺すほど強くなり世界に恐怖と混乱をもたらすことが出来る。
「重要なのはそれが俺たちの仕業と誰にもバレないようにすることだ」
掴まるきっかけとなったのが、目撃者の証言。そのせいもあった。見つからない場所を欲した。一切の証拠を残さない必要があった。
どのみち邪神の望みを叶えるには人間という存在が敵になるのは致し方のない事だ。だったら、だったら徹底的に敵になる。
「別の空間に引きずり込んじまえばいい」
「俺達が自由にコントロールできる空間」
「そこで殺しまくる。トラップを山ほど撒いてな」
「デスゲームってわけだ」
邪神から与えられた時間いっぱい考えた末に生み出された能力。それは決して多くはない時間だったが天才である彼らは自信を持っていた。この能力をして世界の頂点に立つことを。
悪魔の計略。
無関係な人々をターゲットとする能力「黒い樹海」
3人の人間が考えた末にできたものだった。




