エロについて -2-
私はすごくエロが好きだ。
言わずもがな好きだ
これにはちゃんと理由があって、我々の誕生はエロだからだ。
これは間違いない。
エロが我々を創造する手段である以上、我々からエロは奪えない。
「やだー。男子ったらスケベ。...死ね」
とこぼす女学生達に言うことがある。
"死ね" は ちょっと言いすぎかな...って。
その場では平気な振りをしても、意外と我々は傷ついているのだ。
エロはコミュニケーションの手段の最上級だ。
口で伝える"愛している"のどこに愛の根拠があるのだろうか?
いや、ない。
エロは愛する二人が全身を持ってして愛情を伝え合う。
エロ以外に真実の"愛を"伝える手段は無いと言っても過言ではない。
私はエロが好きだ。繰り返す。
繰り返すというのもエロに大事だ。ほんとに。
エロとは恐怖である。
エロとは安心である。
そして、人を狂わせる悪魔である。
こんな文字の駄列を書き、空しくなっている。
しかし、エロが好きだ。
エロは我々の暇を潰してくれる。
私はあなたの中に入りたい...
私はあなたを中に入れたい...
我々は不完全な存在であるが故に、他者を取り入れることで完全に為ろうとするのかもしれない。
[ある話]
「君に質問がある?」
「なんでしょうか?」
「キスとはなんだと思う?」
「セクハラですので、訴えまーす。」
「まあ、待て。過剰反応だよ。それは。」
機械で作られた少女に私は話しかけた。
少女はスマートフォンを両手でいじりながら、私の方は一切見ていない。
私はコホンと咳払いをした。
「君が私の言いたいことをもっと深く掘り下げることが出来れば、低俗とは程遠い高尚な会話に君が今、参加できていることを感謝したくなる...」
「もしもし、総理でしょうか?」
「こらこら、日本の行政権の属する内閣の首長たる国務大臣にいきなり電話をかけるでない。
向こうもきっと忙しいんだから」
「総理が博士に電話代わってくれって言ってます」
少女はスマートフォンを私に差し出してくる。
「おいおい...そんな冗談に私が騙されるとでも...」
スマートフォンを受け取って耳に当てると、テレビで聞き覚えのある声が内閣総理大臣を名乗ってきた。
あっ本物っぽい。
「あ、そ、そ、総理ですか!?あ、私はちっぽけな発明家のはしくれでして...」
あまりに急なことだったので、受け答えがしどろもどろになってしまった。
総理はひとしきり私と私の作った機械の少女のことを褒めると、忙しいのでこれくらいで失礼するよと言った。
「ははぁーー。お忙しい中お時間を使わせてしまい申し訳ありませんーー。国を、国をどうか良くしてやってくださいぃ。」
私は床に置いたスマートフォンの前で正座をして、頭を垂れた。
スマートフォンが ツー ツー と電話の終了を告げる。
私は汗だくだった。
「あのさ、君」
「はい。なんでしょうか?博士」
「なんで、総理大臣の連絡先知ってるの?」
「"友達"だからです。」
「あっ、そっか友達だからかー...」
私は立ち上がると、すーっと息を吸い込んだ。
「...って、納得できるかぁぁぁぁ!!」
私がサイヤ人なら着ている白衣を破いてしまっていただろう。
少女はそんな私には一瞥もくれない。...昔は優しい子だったのに。
いつの間にか床にあったはずのスマートフォンを回収していたようで、ソファーに寝転んでさっきのようにそれをいじり始めていた。
「ってそんなことはどうでもいいのじゃ!」
私はビシッと少女を指差した。
「唇と唇を重ねあい、男女の愛情を確かめあう行為である接吻とも言われるその行為。深く愛し合う男女は更に進んで舌と舌を絡ませあうという。
ロボットである君からは想像し難い行為。それが『キス』だ。私は知りたい。私のつくったロボットが、"キスをどのように理解しているのかを。
さあ君の8年間の集大成をここに示してくれ!」
「無理です」
「何じゃと?」
「ですから、そういうキモイことを平気で言ってくるような人は『無理』だ」と言ったのです。」
少女は立ち上がると部屋を出ようとする。
「あっ、これからは洗濯物一緒にするの止めてください。親父臭が服に付いちゃうので」
少女はそう言い残すと自分の部屋へスタスタと帰っていった。
私は少しその場で顎鬚を擦りながら、考え事をした後、リビングの椅子に腰かけ、熱いコーヒーを飲み、一息ついた。
そして、あることに気づいてしまった。
「あいつ...もしかして思春期じゃないのか?」
エロについて -2- -終-