1 国家元首 旅立ちへ
なんと人間に過酷な幻日よ、また悪魔どもの怒り、ものを踏み潰す戦の神よ、あなたは大地に流れ出るマグマのような幻日の海に漂い、また現れては消えゆく、その様はまるで霧の中を進む視界の見え方に似る。
世界は無から物が生じる、あらゆる物からあらゆる種類が生じ、その法則は無限である。まったく何もない霧の中から天空へ鳥類が、忽然と出現し、大地からウロコを持つ魚族が生じる。幻日の霧の中では生物は溢れ食われまた消えていく、一定の木に、同一の果実がなる習性もなく、あらゆる木からあらゆる実が生る。
幻日の海は力あるものを避けるように割れ、人々に恵と丘を与えた。力あるものは世界の法則すら歪め火を水を光を与えた。しかしながら、物の本質はマルスであり無常なる幻日である。
気まぐれな名無しの力ある青年は異世界から死ぬべき魂と肉体を盗んで遊ぶ、と民に言い放って突然消えた。それと同時に幻日の海が街を城を覆い全てが船となって浮かび上がる。
聖霊も堕天使も悪魔も妖精も妖怪も考えうる全てを内包する;世界;は幻日と呼ばれる日々の中で十日と十四日の割合で乳白色の海が通っていく。法則はすべてその地域の力のある者が歪め、具合が違う場合もある。だが幻日の海とその前に現れる深い霧はどこに行っても姿を変えることはなかった。
「アーアーマイクテスト マイクテスト聞こえていますかー
あるじ様よりつーたつでーす」
拡声魔法により全ての住人に通称アホの子による命令伝達が始まる。
事前の回覧板連絡により船街の外の作業は完全に終わらせてある抜かりはない。
「つーたつしまーす。暇なのでちょっとそこまで行ってくる。留守はまかせた」
どよめきと、混乱が住人たちに広がる、と同時に空間が裂け世界的圧力の一部
即ち、神域の一柱が消えたのだ。
世界の 法則が 乱れる!
瞬く間に世界は霧に呑まれ海が迫る。警報魔法光と防衛設備の駆動音とともに
地球の片隅で私腹を肥やし丸々と太った国家元首は人民の前でのたまった。
「私ほど自己批判が出来ている者がこの世界にいるだろうか?いやいない!
我ら世界共産党は潔白で自己浄化できている!
金や汚職にまみれた資本主義の豚どもよ、よく聞けそして、現実をみろ」
青年は見ていた。
えーと何か書けばいいんだっけ?あぁ苦情か、うーん どうしよう とっ散らかっちゃった。
だれかーー苦情を感想欄に書いておいてー
地球の片隅でその醜悪な意志は暴走を始める。北東にある軍閥と配置替えを行った南部地方の長どちらも強い欲望にまみれていた。
だれが命令するでもなく上と同じことをしているにもかかわらず、
仲間が殺された。恨みとなり積もっていく北国の雪のように。
雪解けを試みる人々もいた、しかし経済が交通が通信がそれを許さなかった。
表面上上っ面だけは保っていたが党の技術部なるものが自由な発想をもとにしたあの大国やあの経済圏についてこれる訳もなく、スパイや裏切り者探しに大金を使い巨大諜報組織を作り上げてしまう。
「魔法のような科学技術に頼るな!古典的な監視と密告を重視しろ」
最初はそれで良かったのに科学技術の進歩はそれを許さない。
「どうせ、監視カメラがあるだろ自動認識だし、適当でいいよな」
穴は開いた。
あの大国の裏にいて本来の共産党の親は予言と称して国家の解体を模索し始めた。
えっ?あの共産主義国家でクーデターはあり得ないって言いたいの?
どっちかっていうと主義よりお金じゃないのかだって?
ならば、女さ ねぇ
老人でもやすらぎを求めて女性を買うことがある。地球の物の本質はエロスであり愛情なのだ。
その豊かな乳房に顔をうずめ又はあの若い太ももに頭を預けて眠る。
国家元首も同じで若いころ大女優を射止めても、愛人と抱き合っても死への不安はやすらぎを求める原動力になりえる。愛への渇望はとだえることはなかった。
それを付け込まれた。
「やられた、愛人の家族になりすまし北東軍閥の将校が襲いかかってくるとは」
片足を撃たれ足を引き摺り、巨大ホテルの関係者用通路を逃げながら一人つぶやく
「手引きしたのはあの南部地域のバカ市長だろう。諜報部は何をしていたのか」
魔法のような科学技術は時として人を堕落させる。
自動化が悪いとは言えない、警備もVR化して才能あるものを使ったのに使っていたのに、と彼は思っていた。
外から見ている私としては彼は貧弱すぎて話にならない。
防壁になるべき駒の選定に某大国の信奉者を増やし、彼本人も機械に使われる。
自律したゴーレムが主人に噛みつくことを考えていない、笑い話だ。
主人たるもの○○を増やせと命令し、ただ突っ立ってるのは愚かだ。
地球圏で戦場散った魂と交信したとき一兵卒の子供が言っていた言葉をおそらく死ぬであろう彼の魂に刻み込んでやろう。そうしよう。
{やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ}
うむ、良い刻印魔法が書けたぞ。ん?どこぞから電波がガガ
{話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず}
続きがあったのか!知らなかった。
おっとついに最後の時が来たようだ。
共和国諜報部高級将校の3番手 女性部隊長は歓喜の声を上げた。
「やったー!ついにここまで来た!このカジノ付きリゾートホテルの設計も含めて私で三代目、他国に対抗意識を燃やし自滅に走る経済を横目に見ながら遂に私が共和国初の女性国家元首になることができるのよ」
「そうです。我ら元北東軍閥一門もあなたのお祖父様も貴方様の成功を確信しております」
怒り 恨み 欲望 すべてを内包し少数精鋭のお嬢様部隊はついに決起した。
合成音声技術の進化は超えることのないと思われた壁を突破した。
いま、古めかしいラジオからインターネット上の公式放送からも前国家元首のメッセージを繰り返し伝えている。
『私は現実を見ていなかった。正当な評価を得るべき人民の軍隊を軽視していた。海の方向性にばかり執着し陸の重要性を無視してきた。私は謝らなければならない。人民に市民に軍人に!』
『自己批判をするならば、無理な高速鉄道計画も話題にしなければならない。先日中央新興都市路線で橋脚破損事故が起こった。あれは共和国にあるまじき腐敗と汚職の象徴である。』
『今、公務に従事していない軍人や退役軍人は黒い旗を持って再生の象徴として街頭に立ってもらいたい。そして、この国が平和であることを国内外に知らしめてほしい。我々共和国は再誕するのだ』
『再生のための多少の破壊も享受しなければならない。これは再誕のための痛みであって不幸なことではない。私は今回のこの場所でこの痛みの責任を取る。支持できる人民は黒い旗を持ち再生の祈りを捧げよう。』ガガッ ピーピーピー
それからは単純な事だった。共和国人民解放同盟なる組織による黒旗革命は赤い旗を燃やし尽くした。
浮浪者用死体袋に詰められた前国家元首はこれから彼の熱狂した東南海岸の海へ
もう判別できないように水酸化ナトリウムでただれさせ不法に投棄された。
完全に死体になったあの塊を私は利用することにした。最近使いだした闇の魔法により復活を試みる。
なんせ私は火や水、光など大概の魔法は使えるのだが偏っていてどうも具合が悪い。
闇で復活した副作用や刻印魔法がこんな感じに作用するとは知らなかった。
「主様、これはあんまりだ」
基本ネクロマンシーに近く従順になるのだが、さてどうしたものか?
「まあ、フッ化してミイラになったり 炭化してゴーレムになるよりは良かったのではないか」
泣いているその黄色い小太りの鬼に対して赤い上着とパンツを差し出しながら言ってやった。
「そして、お前の名前ぷーさん な!」
はちみつ色の体毛にぼってりとしたお腹と赤い上着と虎のパンツ、鬼の証の一本角
ぷーさんの冒険が今始まる。
この世界の一般的な個人の感じる時間的流れ
始月日 海が霧と共に忽然きえ世界が大地に蔽われる。大地は森林、山岳、砂漠、遺跡などランダムで現れる。しかし、地形魔法で囲った場所は前回の変異と同じ物が出来る。
凪月日 人々が霧玉狩りに街の周囲を探索する。霧玉とは海の残りカスで局所的に魔獣の発生や霧の壁を作る。前回の終月日に地形魔法で囲った場所に種を蒔いていると完全に育ち切った状態になり収穫ができる。
終月日 凪月日が何回か続いた後、風が吹き霧が出始める。農作物の種を魔法で抽出し地形魔法で覆った農地に種を蒔く。