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九鬼零士の霊滅師  作者: 双葉
第1章 『霊滅師編』
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第1章22 『赤い夜』





正輝まさきぃ!! 回避しろ!!」


「うお!? あぶね!!」


「あまり近づき過ぎるな! お前まで魂を吸い取られるぞ!」



 古き天空の池とは、千影ちかげ零士れいじがデートでか訪れた場所。そして零士が初めて声の主の姿を見た場所だった、凄まじい霊圧と集結し始める霊魂の影響で空は赤く染まり、月も妖しい光を放っていた。


 千影が到着した頃には他の霊滅師れいめつし達も参戦していた、しかし強大な力を手に入れつつある『アイツ』はゲームで言うなら全体攻撃を繰り返し、近寄ってくる霊滅師達を薙ぎ払っていく。



真妃しんきさん! アイツの周りに漂っている邪魂じゃこんを吸引しながら戦えませんか!?」


「バカを言うな千影! アレだけの量を吸い続ければ死ぬだけだぞ!」


「しかしこれでは疲弊していくだけです!」



 鬼狩り(おにがり)の刀を持ったアイツは負のエネルギーをどこからか供給しているようだが、それを探している隙がない。アイツは刀を軽く横へ縦へと振るだけで無数の斬撃を飛ばしてくる、何人かはこれを喰らい地面に倒れ込んでいる。



「フハハハハハ!!! お前達の魂も吸い上げてこの日本を破滅にしてくれるわ」


「ふざけんな! それでも元霊滅師かよ!?」


「そんな何百年も昔の事なんぞ、忘れた!!!」



 そう言いながら正輝へ斬撃を飛ばす、上手く刀で弾きながら回避していくが物量が激しく弾き返せなかった攻撃をダイレクトに喰らい吹き飛ばされる、昔は神社だったガレキの山にたたきつけられてしまった。



「ちっ! 正輝!!」


「はぁぁぁぁあ!!!」


「甘い、甘いぞ巫女!!!」



 大きく振りかぶった為にアイツには隙が出来たと思い、千影は刀を何度も振りかぶり衝撃波を次々に出していく。しかしそれを霊力で出現させた結界で全てを防がれる、千影は諦めずに結界を破壊するために高速で接近するが、




「うぐっ!? きゃぁあ!!!」


「千影!!」


「弱い、今のこの私の前ではお前達はハエ同然。これで終わりにしてやる」


「好き勝手にしやがって、消滅させてやるよ!!」



 アイツは刀の先を空に掲げると力を溜め始める、それをさせまいと渾身の霊力を刀に増幅させて突き刺す様にアイツの結界に突進する。結界に弾かれそうになるが足でふんばり、力を入れながら刀を押し込む。


 真妃の巫女服は霊圧の威力でボロボロになっていく、それでも構わずに結界を突き破る為に死ぬ気で刀をどんどん押し付けていく。弾き飛ばされた千影は正輝と同じようにダメージが大きく、立てずに居た。



「こんな結界如きにぃぃぃい!!! はぁぁぁぁぁぁあ!!!」


「何?」



 アイツの張っている結界はまるでゴムのようにしなり始める、少しずつ歩みを進めていく真妃は一気に刀を押し込むと、派手な爆破音と共に結界は崩壊した。



「ぐぅぬぅ!!! 結界を破るか巽の人間め」


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」



 結界が破れるとアイツは少し体勢を崩した、結界さえなければまだチャンスはあると真妃は荒い呼吸の状態で相手の肉体へ切り込む。誰にも見えない速度で刀を高速で乱切りしていくが、



「フハハハ! 無駄無駄ぁ!!」


「な!? うあぁっ!!?」



 切り刻んだ筈の肉体は自己再生し元の姿へと戻る、巨大な腕で払い抜けられた真妃は防ぐことが出来ず、ガレキの山へ叩きつけられた。現状は最悪の状態、他の霊滅師も奮闘するがキリがなく次々と倒れていく。


 その中で千影は何とか立ち上がり、ある事に気がついた。



「切っても回復する肉体、邪魂を吸引し続ける刀…………」



 そしてずっとその場から動かない『アイツ』は、霊力を回復する為に毎度刀に邪魂を吸収している。千影は色々と思い返す、零士が後天的に力を得た方法はあの『刀』を握った事によるもの。


 そこまでわかれば凄く単純な事で、あの肉体は本体では無くアイツの本体は『刀』であると千影は考えた。



「真妃さん! 正輝さん! 刀を集中して狙います!」


「ぐっ! はぁ、はぁ、はぁ、刀を? 何でだ?」



 痛みに耐えながら倒れた状態から四つん這いになる、真妃の返答に、『あの霊鬼の本体は刀です!』と強く答えた後高速で動きながら刀に攻撃をしていく。


 真妃は千影の話の真実を知る為に、よく目を凝らしながら相手の刀を集中して見てみる。千影が刀を狙い始めた途端に邪魂を吸引しなくなった、むしろ刀を庇いながら肉体で千影と戦っていた。


 それがわかると真妃は声を張り上げて皆に知らせる、



「私らが刀を狙う!! お前達は奴の肉体を狙えッ!!」



 その声に奮起した霊滅師達は高らかに『おおうッ!!』と返事をし、起き上がっては走り出し立ち向かっていく。霊鬼アイツは少し焦りを見せ始めた、チャンスは今しかないと最後の力を振り絞りながら赤い夜の中で火花を散らしていく。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 その頃、千影の神社でずっと眠っていた零士が意識を取り戻した。ゆっくりと上体を起こすと不意に視界へ入った左手の甲、あの印は消えてしまっていた。少し頭はクラクラするが生きていることがわかると、零士は安堵していた。


 だが力を失った零士は助けに行くことは出来ない、今まさに死ぬかもしれない戦いに出ている皆を助けることが出来ない。



「結局何もできないのか、俺は……」



 赤い月は薄暗い部屋を不気味に照らしている、せっかく目覚めたのにこうして待っていることしかできない、そんな自分に苛立ちを覚える。


 しばらく俯いて居ると部屋の引き戸が静かに動き、中に入ってきたのは美鈴みすずだった。



 美鈴の手にはある物が握られていた---




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