日曜日の羽沢君2
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「おっも…お母さん何人分作るつもり…?」
渡されたメモ通りに買い物をしたらあんなに大きな買い物袋がすぐにパンパンになった。
食料ってこんなに重かったんだ…。
私は腕に日頃の感謝と食料というものの大切さを感じ、ずっしりと重い足取りで家路を帰っていたのだった。
しかし、なかなかに重いこの荷物。
行きは感じなかったスーパーと家の距離に嫌気がさす。
家まだかなぁー、腕疲れた。
そんな事を考えていた時、急に腕の重さが軽くなった。
ビリ
「嘘でしょ…?!」
見ると、重さで破れた買い物袋の穴から買った食料が落ちていっている。
そしてどうやら穴があいたのは今ではないらしい。後ろを振り返ると点々と今日の夕食になるものたちが落ちている。
「もぉぉぉぉやだーー!!!」
今まで気付かなかった自分に苛立ちながら、とりあえず近くに落ちているものを拾っていく。
人が周りにいなくて良かったけど、恥ずかしい…。
食料汚れてないかなぁ、無くしたりとかしてないかな、てかやっぱり今日だけいつもより量多いよね?じゃなきゃ破れないよね??
じゃがいもに手を伸ばす。
「あっ。」
私の他にもそのじゃがいもに手を伸ばした人がいた。
「あっ、ありがとうございます。袋が破れちゃって…」
穴があったら入りたい!
恥ずかしさでいっぱいになった気持ちを抑えながら顔を上げると、
「それは大変ですね…手伝いましょうか?」
神が降臨していた。
…っじゃなくて、それはそれは眩しい美少年が立っていた。
「ハっハザワクン!?」
思わず声に出してしまった私を見て羽沢君は不思議そうな顔をした。
「え、オレの事知ってる…もしかして同じ学校?」
「は、はい!同じ学校の同級生です…」
当たり前だけど彼は私のことを知らないらしく、なぜか私だけが彼を知っていた事がいけないことのように思えて俯いた。
「そうなんだぁ!…なんで敬語?笑同級生なんだし普通に話そうよ」
彼は意外にも気さくだった。すごい噂ばかり聞いていたから雲の上の人かと思っていたけど、私にも柔らかな笑顔を向けてくれた。
「うん…!」
それに応えようと私も笑顔を返したが、思わず顔を逸らしてしまう。だって、あまりにも彼がカッコ良すぎたから。
初めて見たのにすぐに羽沢君だって分かったのは彼の容姿が飛び抜けて良かったから。
こんな人羽沢君くらいしかいないだろうと思って口にだしたらやっぱり羽沢君だった。
「なんでさっきから目、合わせてくれないの」
また彼は笑った。
『眩しすぎて直視できません』と言いたいところだけれど、同じ学校だと知られた以上変な人だと思われたくないので言わないでおく。
「あぁーえっとー…じゃがいも。」
「じゃがいも…あ、これ!」
ごめんね、ずっと持ってて。
はい、と渡されたじゃがいもを受け取る。
無理矢理さっきの会話に戻したのは彼とこれ以上まともに会話していられないから。
はやく落としたものを拾って帰りたい。
なんだか自分が情けない。
足元を見るとボロボロのスニーカーに地味なジーパン。手元にはおばさんくさい破れた買い物袋。
見られたくない。羽沢君にこんな姿。
「手伝ってくれてありがとう」
五分もかからずにすべてのものを拾い終えることが出来た。
ちゃんと目を見てお礼を言うべきだけど彼の目に入ることも申し訳ない気がして。
彼の方を見ずにぶっきらぼうに言った。
「どういたしまして。」
彼を見てないから分からないけれど、彼はまた笑顔な気がした。
「また明日!」
やっぱり彼の方は見ずに、そう伝え走り出す。
「また明日。」
彼もそう言ってくれたけど、私は知っている。
もう彼に会うことはないのだと。会っても今日みたいに彼と話したりできない。彼に私の存在だけを見てもらうことなんてできない。
分かってる。
…はやく、家に帰りたい。この場からはやく…ーーーー。