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第1話 兄と妹 (その2)

部屋の前に立って、インターホンを押す。中で鳴っている音がする。


「ですから、何度呼んでも出ないって言ったでしょう!早く開けてください。」と女が急かす。

 

「向井さん!おられないんですか!」と大声で叫んでみる。

一刻も早く開けてやりたい気持はあるのだが、やはり管理人としての立場もある。一応の手順は踏まねばなるまいと考えていた。

ついで、ドアをドンドンと叩く。

ドアに耳を付ける。それでも、人の気配はない。


「妹さんが来られています。お返事がなければ、部屋を開けさせてもらいますよ。」と、ひときわ大きな声で叫んでみる。

「もう、それでいいでしょう、早く開けてください!」女は、もう待てないという顔をする。


隣の部屋の女の子が顔を出す。そのまた隣のお竹さんも出てくる。何事?という顔をしている。


「申し訳ありませんが、お部屋開けさせてもらいます。」と叫んで、合い鍵を差し込む。

ガチャッという音がして、鍵が回る。


ドアを開けると、源次郎の脇を掻い潜るようにして女が部屋へ飛び込んでいく。勝手を知っているのだろう、迷いもせずに右手の和室を曳き開ける。そして一瞬棒立ちのようになってから、中へ倒れ込むように入る。

「忠明さん!」という叫び声がする。

でも、入り口に突っ立っている源次郎からは、中の様子が分からない。


「入りますよ。」と声をかけてから、突っ掛けを脱いで中へ入る。和室をそっと覗き込む。布団らしきものがちらりとだけ見えた。


「救急車、救急車を呼んでください!」と女が叫ぶ。顔面蒼白である。

「えっ!・・・・あっ!・・・はい、救急車ですね。・・・・」と源次郎は狼狽する。

 

部屋の入り口でその様子を見ていた隣の部屋の女の子が、自分の持っていた携帯電話を差し出してくれる。でも、源次郎はどうして良いのか分からないでいる。



(つづく)


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