むかしばなし
むかーしむかし
青い髪がたいそう美しい
姫様がおりました
姫様は 赤い髪の妹と
お城に二人で 住んでいました
姫様も 赤い妹も
いつか 空からやってくる
王子様のことを 待っています
それまでは 姫様も 赤い妹も
お城から出ることはできません
お城の中で 二人きり
お外の世界を 眺めたり
王子様のことを 考えたり
お城の中で 二人きり
遊ぶときも 眠るときも ごはんのときも
二人はいつも二人ぼっちです
ある日 赤い妹は 言いました
「王子様は いつ わたしたちを
迎えに来てくださるのかしら」
姫様は 答えました
「きっと今 いっしょうけんめい
わたしたちを 探しているところよ
もし 遅くても だいじょうぶ
わたしには あなたがいるのだから」
そのときです
ずっと閉まったままだった
お城のとびらが
バーン! と 開かれました
「ああ やっと 王子様が
やってきてくれた」
開いたとびらから
今までお城にはなかった
キラキラでポカポカの光が
たくさんたくさん入ってきます
「姉様 あれはなに?」
「あれは ひだまり よ」
「とても きれいね」
赤い妹が 答えよう としたときには
もう姫様は 術にかかっていました
ひだまりと ともに 現れた
〈光の勇者〉が
姫様に 魔法をかけたのです
〈光の勇者〉がかけた術は
〈光の封印魔法〉という名前でした
姫様は ひだまり がないと
生きていけない身体になりました
ひだまり のないこのお城では
このまま そのままだと
姫様は 死んでしまいます
ひだまり が手に入っても
身体を動かせるくらいの
ひだまり がないと
姫様は 眠ったままです
世界中すべての ひだまり が
ぜーんぶ 集まったとき
姫様のパワーが 充電されて
目を覚ますことが できます
それまでは 姫様は
生きていても
眠ったままになりました
赤い妹は
髪の色とおんなじ
真っ赤な涙を流して
悲しみました
大切な姉を失った妹の
悲しみ と いかり は
大きな 炎 となって
お城を 飲みこみます
〈光の勇者〉を やっつけた妹は
はじめての〈光〉を 手に入れました
それは ひだまり のカケラでした
赤い妹は 眠ったままの姫様を
真っ白なお部屋へ 運びました
そうして 赤い妹は
小さな小さな ひだまり で
大好きな姫様を 照らしました
「姉様 だいじょうぶ
姉様には わたくしがいますから」