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いないようでいる中二病の高校生の妄想、もしくは熟考、もしくは暇つぶし

作者: 孤愁 哀

 連載中の小説「非人少年、轗軻流転。」の番外編です。……こんな早い段階ですいません。

 是非、非人少年、轗軻流転。読んでください。

 曖昧だなぁ、と少年は考えた。


 曖昧。


 一体何が曖昧なのかと言えばそれは世界が、である。

「世界は曖昧だ」

 少年は声に出してニヤッと笑った。なんだか自分がほかの人間と違うような気がしたからだ。

 さて、少年が何故こんなにも中二な感情を抱いているのかと言えばその原因は今日の放課後での出来事である。


 少年は高校に通っているのだが、今日の放課後にちょっとした揉め事があったのである。揉め事の詳しい内容は具体的な内容はここでは省略させてもらうが、まあ、有体に言って、もしくは端的に言って揉め事とは喧嘩であった。おいおい、高校生にまでなって喧嘩かよ、と突っ込みたい人がいるかもしれないので一応付け加えておくと、少年が通っているのは男子校で血気盛んなうえに女子がいないので遠慮する必要がないのである。すなわちこれは、野性を意味する。本能のままに二人は喧嘩した。殴り合った、蹴りあった、悪口雑言を浴びせかけあった。もっとも少年は喧嘩の現場には立ち会わせてなくて、その時間は図書室で一人、本を読んでいたのだが。

 さて「だが」という表現をたくさん使っているのは少年の口癖だからである――というのは置いといて、とにかく大きな喧嘩だったのでその後先生が来て、警察が来て、そして臨時ホームルームが開かれたのだ。

 詳しい内容はやはりここでも省略させてもらうが、どちらが先に手を出したからどちらが悪いだの、どちらがどれだけ相手を殴ったからどちらが悪いだの、まぁそういった低レベルな反省らしきものが続いて、最終的には落ち着くべきところ――喧嘩両成敗というやつである――に落ち着いたわけだが、どうもこのホームルームの内容が少年の心に引っかかっているのである。つまり、正義と悪について。


 少年は今現在家族と喧嘩中である。両親とかではなくて、家族と、だ。他人に言わせたらそれは喧嘩ではないのかもしれないが少年は一切家族と口をきいていない。そんな状況だからこそ、少年はふと考えてしまっているのだ。

 曖昧だなぁ、と。


 誰だって知っていることなのかもしれないが、正義と悪には明確な基準は無いし、はっきりした境界もない。ただ言えるのは正義と悪は互いに相対するものであって、言ってみれば負の数と正の数みたいなものだ。自分の立つ位置によって正義と悪は入れ替わる。つまりは相対的なものなのだ。しかも現実世界は仮想世界とは違って、残念なことに純粋な悪も純粋な正義も存在しない。曖昧なのだ。

 別にこれは正義と悪だけに言えることではない。世界すべてに言えることだ。

 

 だって、そもそも世界をみている人間という存在が、『人間』と一括りに呼んでいいものかわからないほど、曖昧なのだから。


 ふーっ、と少年は深く息を吐き出して満足げに笑った。どうやら彼なりの結論に達したようである。それはよかった、と私は内心ほっとした。何かしら自分なりの答えを出すことは自分の支えになる。もうすぐこの少年にはその支えが必要になるだろうから。

 しかし、どうやら少年は純粋な正義は存在しないと思っていたようである。もったいない。彼は純粋な正義に最も近い存在であるのに。それ故に純粋な悪にも最も近い存在でもあるが。――何しろ、彼、少年、海原優衣は人間ではないのだから。


 是非頑張ってもらいたいものだなぁ、私は少年みたくニヤッと笑った。

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