第二話 『これ、音ゲーじゃん!』
『何やってんだ!』
怒鳴り声が耳を叩く。
俺は、息を吸った。
状況は分からない。
でも、ひとつだけ分かる。
今ここで求められているのは――“歌”だ。
「ノーツ……展開!」
叫ぶ。
ガシャン、と両肩が跳ねた。
装甲が勝手に割れ、砲台みたいな機構がせり上がる。
眩しい光のレーンが、一直線に前へ伸びた。
目の前には、不定形の黒いもや。
それが集まり、巨大なうねりとなって迫ってくる。
その瞬間――
ヘッドセットから、いや、身体の奥から。
低く、重い、序奏が鳴った。
聞こえる。
間違いない、俺の――いや。
この声で言うなら、“わたし”のテーマソングだ。
配信の最初に、いつも流してきた曲。
自分で作った。
自分で歌ってきた。
だから、身体が覚えている。
リズムが、弾丸になる。
レーンの上を走る光点――ノーツが、次々と敵へ撃ち込まれていく。
当たるたび、黒い霧が揺れた。
逃げるんじゃない。
“間”を取れなくなって、動きが鈍る。
これ、音ゲーじゃん!
『よし! このまま畳み掛けろ!』
言われるまでもない。
曲は、サビへ向かって勝手に盛り上がっていく。
俺は――歌うしかない。
「音楽は、ここにある」
その一言で、波形が跳ね上がった。
ノーツが光の筋になって走る。
同時に、機体のハッチが――ひとりでに開いた。
電飾が散りばめられたパネルが左右へ展開し、
羽みたいに大きく広がる。
……ステージだ。
観客は、ゼロ。
でも、舞台だけは完璧に整ってしまった。
俺は中央に立って、手を差し出す。
閃光が弾けた。
黒い霧は砕け散る。
けれど破片は落ちない。
砕けた黒は、光の粒へ変わり――
ふわり、ふわりと空へ還っていった。
空気が、澄む。
さっきまで抜け落ちていた“音”が、ゆっくり戻ってくる。
そして。
『……お前、誰だ?』
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次回「お前誰?」の続きです。よかったらまた来てね!




