◆第5話 温泉郷クエストと暴走雷竜
馬車に揺られ一日、渓谷の底から湯気を噴き上げるテルマリウムに到着。
■クエスト内容
> ・源泉を占拠した雷竜ヴォルトゥスの討伐
> ・溢れ出す高電圧蒸気により温泉街が営業停止へ追い込まれている
宿はギルド指定の療養旅籠〈驟雨亭〉。
> 「雷竜討伐前に温泉で身体を慣らせるといい。混浴だが時間帯で区切られている」
──のはずが、風呂場の魔術時計が雷障害で停止。
夕方六時、《男湯タイム》と思っていた俺は浴衣を脱いで岩風呂に入り、そこで真っ白な肌の深音と鉢合わせる。
湯面に映る紫電、帯電で濡れ髪が身体に張り付き――。
「ぬ、ぬし! 混浴と聞いておらぬ!」
「俺もだ!」
どこまでも透明な湯に足音が迫り、振り向くとシャルトリューの銀髪。
「時刻が狂ってる? ──私は別に混浴でいいが」
猫目の射手は肩まで沈み、無表情で胸元を隠す素振りすらない。
(頼む、俺の理性!)
のぼせて湯を出た刹那、峡谷全体がブオォォと揺れ、夜空を紫の稲妻が裂く。
「雷竜だ!」
浴衣姿のまま武器を手に源泉洞窟へ急ぐ。
洞窟湖の中央で、雷鱗をまとった巨体が鎌首をもたげた。
俺はスキル《雷禦の器》を展開、《電撃無効》バリアで突進。
深音は巫女杵を鳴し詠唱――
> 「呼び雷て鎮めよ――《霹靂の奏》!」
天井の岩盤を打って落雷。シャルトリューの矢が弱点の喉元を穿ち、雷竜は怒涛の湯柱と共に沈んだ。
戦い終わる頃には浴衣も下着もびしょ濡れ。
「帰ったら……もう一度風呂だな」
「身体が冷えておる。肌が粟立つ」
震える深音に、俺は肩を貸す。電撃の痺れが身体を回り、妙に甘かった。