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雷哭シンフォニー!-チート級スキルで帯電の巫女を守りつつ、最強ハーレムで異世界を轟かす高校生の大冒険-  作者: NOVENG MUSiQ
第2章|蒼海門の呼び声と雷哭の花嫁候補──新天地へ拡がる波動──
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◆第15話 ラグドール司祭ラジアと月虹の黙示録

 新大陸沿岸に(ただよ)月虹礁(げっこうしょう)は、夜明け前になると(おぼろ)な月虹を礁全体に架ける。舟底を(こす)る暖流の音が鼓膜の奥をくすぐり、俺は寒さより甘い酩酊(めいてい)を覚えた。


 礁の中央で待つのは、白銀の祭壇と蒼衣(そうい)の司祭――Ragdoll(ラグドール)Raziah(ラジア)。柔らかさを宿した微笑が、夜霧ごしに淡く輝く。

 「(さかずき)を奪われたままでは、蒼海門は完全(かんぜん)に咲かぬ。どうか力を」

 ラジアは胸元の聖印(せいいん)を握り、深音と視線を重ねた瞬間、紫と虹が重ねた光が波紋を描いた。


 杯を奪ったのは月虹礁地下に眠る古竜(こりゅう)の亡骸、骨の迷宮だ。通路は湿った珊瑚の匂いで満ち、(したた)る水滴が遠雷のように反響(はんきょう)する。

 「()を抜くな。骨の影が動く」――焔豹がハンマーをかざすと、雷骸虫(らいがいちゅう)が牙を剥く。


 戦闘でラジアの蒼衣の肩紐(かたひも)が裂け、透ける肌が灯りに浮かぶ。逢月が「修繕(しゅうぜん)」と布を渡そうとしたが、ラジアは首を振る。

 「これは試練(しれん)。月虹は欠けてこそ()ちる」

 彼女の囁きは潮騒(しおさい)より静かで、しかし確かに熱を帯びていた。


 最深部。宙に浮く杯を守る雷骸虫の王。りんせの白拳(はっけん)が風を裂き、深音が雷哭(らいこく)(うた)を唱う。俺は皇器で二人の稲妻を束ね、紫白(しはく)双閃(そうせん)を放つ。

 轟音の後、骸虫は塵となり、杯が月虹色に脈動(みゃくどう)した。


 地上へ戻ると夜明け。月虹は朝日に溶け、ラジアは祭壇に膝をつき、瞳に涙を宿す。

 「杯はあなた方の旅路を祝福(しゅくふく)する。どうか私にも、その未来(みらい)看取(みと)らせて」

 深音が(うなず)き、ラムネ瓶を(ささ)げる。透明な泡が虹光を映し、三人の唇へ甘い炭酸を分けあった。


 ――こうして杯は取り戻され、蒼海門の開花へ一歩(いっぽ)近づく。

 しかし俺の胸奥で皇器は静かに震えていた。月虹の色は美しいほど(もろ)く、そして――何かを予兆(よちょう)する。

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