◆第12話 雷神の落とし子と新たなる旅路
門外で待っていたイグライアは深々と頭を垂れた。
「器と姫は預言を越え、共生の道を示した。神域側は干渉を当面控えよう」
ギルドでは凱旋パレード。祝勝ホールで檸檬スパークリングとラムネが飛び交い――深音は早々と酔った。
「颯人……もっと、くっつけ……」
頬を紅れない、稲妻の金と紫が瞳でゆらゆら。
肩越しにシャルトリューが乾杯。焔豹は照れ隠しにハンマーでシャンパン栓を飛ばす。
雷禦バリアの内側で微かな静電の弾ける音。
(これが、俺たちの“平穏”かもしれない――)
深音がぐらりと身体を預け、ラムネをこぼす。
透明な炭酸が鎖骨から胸元へ滴り、紫紋が淡く輝く。
「服が……しみになる……」
「洗えば大丈夫だって」
「……あすも、共に挑むぞ」
小声で囁き、深音は俺の手を握った。静電気がパチッ――だが痛くない。温かい。
**真名石の裏面**に、未だ開かぬ「蒼海門」の座標。
イグライア曰く「海の向こうで“神殺し”が芽吹く」らしい。
ギルド長は新大陸調査隊を結成、〈雷哭の苗床〉に参加を打診が来た。
深音は瓶を掲げた。
「次は、大海の彼方でラムネを飲むとしよう!」
雷光と拍手が弾け、俺たちは新たなる航路へ――