◆第10話 神域の門と運命の預言
裏組織〈夜闇ノ盟約〉のスポンサーを断ったことで、ギルド長のノアヴァランは禁書庫に眠る古写本を開示してくれた。そこに示された“雷哭の姫”の預言――
「雷の落し子が器と契りしとき、神域の門開かれ、天と地の鎖を断つ」
門は学園都市背後の断崖〈雲頂峡〉に隠された霊廟。
通行儀礼として“浄衣”へ着替えねばならず、深音は半透明の法衣を身に纏う。
透ける肩と鎖骨。紫電が薄布を灯し、肢体の曲線をあぶり出した。
「……視るでない」
頬を染めた深音に俺は慌てて目を逸らすが、儀式灯の光量が上がるたび生地はさらに透け――心臓が苦しい。
門前で待っていたのは“雷哭を封じた神官”の末裔イグライア。白磁の仮面越しに鈍い声を響かせる。
「器よ、姫を導き、しかし決して神域へ足を踏み入れるな。主はまだ“門”の試練に耐え得る器ではない」
忠告を押し切り、俺たちは門を開放。
瞬間、深音の出生痕である**雷神紋**が背に浮かび、門内の霊光が渦を巻いた。
霊気の吹き戻しで法衣が風船のように膨らみ、瞬く間に張り付くウエットルック。
雷紋の脈動と胸の鼓動が同期し、布越しに淡い肢体の彩りが浮かび出す。
(試練、早く突破しないと俺の理性が落ちる!)
最奥、巨大な水鏡。そこに映ったのは――
“轟雷皇ルドラス”、天界で深音を追放した雷神そのものだった。
「来たれ、“器”よ。姫を返せ」
鏡から伸びる雷槍。俺は咄嗟に深音を庇い、胸に紫電を受け止めた――。