聖典 第7話 正しい復讐
ギア・カタロス編最終話です。
グラがしっかりと保護できていれば死ななかったんじゃないか。
でも一番最初に変わってしまったのは両親のせいだ。
両親がいれば普通の暮らしができていたはずなのに。
――誰かが両親を殺した。
フリードにクエストなんて受けにいかなければよかったのに。
――誰かが両親を殺した。
両親をフリードで殺した奴が憎い。
――誰かが両親を殺した。
何のために。母さんも父さんもいい人なのに。
――誰かが両親を殺した。
殺した奴が憎い。復讐したい。
――誰かが両親を殺した。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
――誰かが両親を殺した。
「お兄!」
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる
――誰かが両親を殺した。
「お兄?」
復讐したい復讐したい復讐したい復讐したい復讐したい
――誰かが両親を殺した。
「お兄!、お兄!」
憎い、復讐したい、殺してやる、憎い、復讐したい、殺してやる、憎い、復讐したい、殺してやる、憎い、復讐したい、殺してやる、憎い、復讐したい、殺してやる、憎い、復讐したい、殺してやる、憎い、復讐したい、殺してやる、憎い、復讐したい、殺してやる、憎い、復讐したい、殺してやる、憎い、復讐したい、殺してやる、憎い、復讐したい、殺してやる、憎い、復讐したい、殺してやる、憎い、復讐したい、殺してやる、憎い、復讐したい、殺してやる、憎い、復讐したい、殺してやる―
「お兄!何ボーっとしてるんだ!」
気づけば、目の前にはギアがいた。そしてグラはギアを抱いた。
「ごめん!俺がお前を守ってあげれなかったばっかりに!」
「お兄。俺こそ、ちゃんとした判断ができなくてごめん。」
「俺が気づけばお前を止められなくなってたんだ。俺は…兄失格――」
「そんなことない!俺がしっかりしてればお兄に迷惑かけることなかった!俺がこんな奴になったから…」
「俺が止めるべきだった。お前をしっかり、愛してやれなかったから―。」
兄弟の愛は、仲良しでいれば完成するものじゃない。お互い喧嘩して、認め合って、一緒に笑って、一緒に泣いて、互いの悪いところを指摘して――
それこそが死んだからこそ分かったグラの兄弟愛というものだった。
「お兄は、兄失格なんかじゃない。お母さんの言いつけを守った。なら母さんは何も言わない。でも、俺は言いつけを守れなかった。」
ギアはお母さんに、一つ言われたことがある。
「お兄ちゃんに迷惑かけちゃダメ。自分で善悪をきちんと考えて動くのよ。」
その言いつけを守れなかった。それを死んで後悔している。
「だから、お兄も自分が悪いって思うなら最後に俺の味方になってほしい。」
「わかった。お前を信じて、俺はお前の見方をする。」
二人とも泣きながら、そう言った。
「お兄と一緒に、正しい復讐をしに行きたい。だから俺を殺したリアの味方をしたい。」
「…なにかあったのか?」
意外な言葉にグラはギアに聞いた。
「俺は俺の聖書を読んだ。そこでお兄が『両親が事故でなくなった』って嘘をついたのも分かった。
そしてそのあとに、リアについていけば、両親を殺した奴に復讐ができるはずだと書いてあった。」
そういうと、グラは弟の言葉を信じて「わかった。俺はお前の味方をする。」と言った。
そして二人の横の白い場所が開く。
「お兄、行こう!正しい復讐をするために!」
「わかった!俺の償いとして俺はお前に味方する!信じてるぞ!ギア!」
「うん。」
こうして二人は開いた扉の向こう側へと吸い込まれていったのであった。
「よかったわ。あの二人がしっかりした方向に戻ってくれて。」
「そうだな。それじゃ俺たちは『正しい復讐』を見せてもらおうかな。」
そう言って女性と男性―ギアとグラの両親―は二人の行いを見守っていた。
―聖典 ギア・カタロス編 終了―
また聖典が動き出したら、是非、立ち寄ってください。