第16話
校則を無視した派手な金髪に、制服のズボンに付いたチェーンがジャラジャラしている。
「おっ、たかちゃん! よかった、無事そうで~」
ボクの姿を見て、勅使河原くんが元気そうに笑顔で手を振っている。どうやら、スタンガンでやられたのは大丈夫みたい。
「さてと……あのデカいヤツの姿が見えねぇな。一発お見舞いしねぇと、やられっぱなしは俺の主義じゃねぇ」
よっぽどアイツにやられたのが頭に来ていたようで、なんか凄く血の気が多いようだ。
「勅使河原くんは、下がってて」
「え? 俺だって――」
「いいから。早く」
「はいはい」
声の主の一言で、勅使河原くんが呆れ顔を浮かべる。
そして、助手席の扉が開き、女の子が下りてきた。一目見てすぐに分かった。短い黒髪、清楚な雰囲気……間違えるはずがない。
「ホノカ?」
「姉御!」
で、でも、どうしてここに……
「テメェが頭か?」
「……」
ホノカが総長の言葉に答える様子もなく、ゆっくりとこちらに向かってくる。いつものにこやかで優しそうな表情と違って、凄く怖そう。
「ナギくん拉致ったのって……アンタ?」
総長に向けて、ホノカがガンを飛ばす。初めて見る彼女の恐ろしい目つきからは、憎悪や怒りを感じ取れた。
「さぁな? 俺は漢の決闘を邪魔されたのが気にいら――」
それは一瞬の出来事だった。ホノカが強烈な右のアッパーカットを繰り出す。総長の顎が砕けたような鈍い音をあげ、身体が宙を舞う。
ボクは驚いた。人があんなに浮くのかという衝撃よりも、温厚なホノカからは想像も出来ない行動に……
「ナギくん、怪我してない? ごめんね。ウチがあの時、いなかったから……」
ぶっ倒れている総長なんて目もくれず、涙を流して一目散にボクに抱き着いてくる。さっきの殺伐とした様子はどこへやら、普段のホノカだ。
「やっほ~渚くん、大丈夫?」
後部座席からマリンも下りてくる。ど、どうなっているんだ?
「ええっ、に、2代目も……」
副総長がマリンの姿を見た途端に声を漏らす。
周りを見回すと、喧嘩が収まっていた。どうやら、刃美乱の総長の失神KOによって、全員の戦意が喪失したらしい。ハゲの男たちが呆然と立ち尽くしている。
こうして、ホノカの会心の一撃によって、抗争は幕を閉じた。




