第12話
いつだっただろう……小さい頃、ボクがホノカに教えながら一緒にギターを弾いていたっけ? ボクの家に集まって2人。小さな茶色の丸机とベッド以外には、ギター関係の物しかない寂しい部屋で。お菓子を食べたり、ゲームしたりしながら。
「ナギくん! 『きらきら星』ってどうやって弾くの?」
ホノカが目をキラキラさせて聞いてきたのがきっかけだった。いつも1人で練習していたし、人に教える経験なんてある訳ない。それに、あんまり上手くないから自信も無い。
「ねぇ、早く教えてよ~」
小さなギターを持ったホノカがベッドに腰掛け、足をパタパタさせボクを急かす。
「えっと、始めのドは、ここの弦を押さえて弾くの」
指をさしてドレミを教えていく。
「こう?」
ホノカが不安そうに弦を押さえる。
「その隣のフレットだね」
「フレット?」
「だから、その……」
人に教えるのって、思っていたより何倍も難しい。5弦の3フレットって言っても、初心者には伝わらないだろう。きっと、太い弦から1、2……って思っているかもだし。ボクがホノカで一緒にギターを持って教えようとしても、1つしか無いから出来ないし。口で説明するのも難しいし……そうだ!
「えっ……」
ホノカの左手と、ボクの手が触れ合う。
「この指をここにするの。それで、右手で弾いてみて?」
ホノカの人差し指を、押さえるフレットへ優しく動かす。こうやって教えるのが早いかな。分かりやすいし。
「これで弾くの?」
「うん」
ホノカが右手で弦を弾くと、ジャーンと低いドの音が鳴る。アンプ繋いどけばよかったかな。エレキギターならではの迫力が無く、音が小さい。
「鳴った鳴った! 次は!」
嬉しそうにホノカがはしゃいだ様子でボクに話す。
「もう1回ドを弾くの。で、次は何も押さえずに、ここの弦を弾いて……」
手取り足取り教えていき、2人だけの時間が過ぎていく。そして、楽しい時間はあっという間に終わり、帰る時間になりホノカは家に帰っていく。でも、翌日も早くにボクの部屋に来て、ギターを教えて……そんな幸せな日常が続いていたっけ。
でも、小学生の高学年くらいの時にやめたんだ。
ボクが恥ずかしくなって一方的に。
それで、中学の期末テスト前だったよな。ボクがホノカに自分の部屋で数学を教えてもらっていた時だ。ずっとしていて、休憩で一緒にケーキを食べていると、ホノカが部屋にあるギターを見つめてポツリと呟いた。「また教えて欲しいな」って、寂しげな表情で。
あの時のホノカの表情が忘れられなかったのに、どうして……
真っ白だった記憶に色付いていき、大切なモノを取り戻す。




