ウラル(五歳♂)
「おはよう。」
ある日、聞き慣れぬ声に目が覚めると飼い猫のウラル(♂:五歳)が獣人になっていた。
モフモフ長毛の茶トラ模様に黄金のツリ目・・・間違いない。ウラルだ。
何故?夢?それとも俺の性癖が具現化された?
「ご飯ちょうだい。」
ぐるぐると考えを巡らせていると、ウラルが口を開く。
「はいはい。」
ベッドから立ち上がると、ウラルは二足歩行でとことこと出て言ってしまった。
その後を追うように俺はキャットフードのあるキッチンへと向かう。
一体何故?ていうかめっちゃ抱きつきてぇ。・・・あ、別に抱きつけばええやん。俺、飼い主だし。
「ウラルちゃーん。スーハースーハー。」
ウラルに抱きついた俺はいつも通りに吸ってやった。
「・・・。」
大人しく抱きつかれ、されるがままに吸われるウラル。
「いや、そういうのいいから。ご飯ちょうだい。」
やんわりと俺を押しのけ、すり抜けたウラルはさっさとキッチンに行ってしまった。
さ、サイズアップした肉球が顔に・・・
「朝ご飯でございます。」
顔に押しつけられたビッグサイズ肉球の余韻に浸りつつ、カリカリを器に入れた俺は丁寧にウラルの前に置く。
「うむ。」
そう言ってウラルは器を抱え、スナック菓子のようにカリカリを手掴みで食べ始める。
その様子を俺は、自分の朝食の準備などをそっちのけで見つめていた。
ウラルはそんなこと気にも留めずカリカリを食べ続けている。
「ふう。」
そして、カリカリを完食すると、ウラルは口の周りを舌で舐め取りながらこちらを見た。
「いつものは?」
「はい、ただいま。」
そう返事をし、俺はウラルの尻尾の付け根をトントンと叩き始める。
ウラルはこれが好きなのだ。
「弱い。」
不機嫌そうにウラルは言うと、俺の腕を尻尾で数回はたく。
ありがとうございます。
「はいはい。」
心の中で尻尾はたきを感謝しつつ、今度は強めに叩く。
「そうそうそれそれ。」
「もういい。」
五分ほど叩き続けると、ウラルはそう言って俺の手を甘噛した。
「はい、ありがとうございます。」
今度は口に出して感謝を述べる。
ウラルは「えぇ・・・!?」とでも言いたげな顔をしたような気がしたが、気のせいだろう。そして、そそくさとキッチンを出ていった。
「・・・。」
後ろ姿を締まりの無い顔で見送る俺。
「・・・あ、やっべ・・・!」
しかし、ここでようやく時間がだいぶ押していることに気づき、慌ただしく自分の準備に取り掛かるのであった。