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389 指名依頼 6

 早朝出発した『15の光』は二時間後には現着し爆撃を開始する予定である。


 気合の入った索敵による偵察で、キルは敵軍にバトルホースが数十匹飼われていることを掴んだ。おそらくその中の何匹かは空をも駆け巡る能力があると思ったほうが良いだろうと気を引き締める。


 おそらく数ある部族のリーダークラスがバトルホースを乗りこなしていたのかもしれない。聖級騎兵以上の名のある武将がかなりの数いたことを思い起こす。


 名が上がったのは、神級騎兵テムジ、王級騎兵のスブタ、ソルカ、シラ、チラン、チンバ、聖級騎兵のボル、オトラ、ウルゲ、ブハラ、ホージェの十人。その他にも名を知らぬ猛者が隠れているかもしれない。


「攻撃を開始します。サキさん、クリス、ケーナ、マリカは俺と一緒に空爆の用意! 残りはグラさんの指揮で随時攻撃と防御をお願いします。敵の空軍にも注意してください。バトルホースが数十匹いるようです。中には空を駆け巡るものもいるかもしれません!」


 キルが号令を下し魔法を発動し始める。


「アトミックインパクト!」


「「エクスプロミネンス!」」


 キル、サキ、クリスが最強の魔法を放つ。 

 

 巨大な爆発が地面ごと敵軍を吹き飛ばす。


「セイクリッドアローレイン」


 マリカの魔法で、数万本の光の矢が北方民族軍の人馬に降り注ぐ。

 

「エナジーアローレイン!」


 ケーナのアーツも針山のように一面に矢の絨毯を敷き詰める。


 キル達の攻撃は、波が押し寄せるように北方民族軍を侵蝕し始めた。


 突然の攻撃に何が起きたのか分からず逃げ始める兵士と軍馬。戦場は大混乱に包まれた。


 爆撃を受けていない後方の兵達が軍馬を連れて後方に逃れ始める。軍馬の絨毯が後方に移動して行く。


「グラさんここの掃討は任せます! 俺たちは追いかけて爆撃し続けます!」


「分かった! ここは任せろ!」


 キル達五人が追いかけ、逃げる北方民族軍に追撃の魔法攻撃を撃ち込むが、その追撃を躱すために五方向、さらには十方向と分裂して逃げていく。


 途中まで追いかけたがキル達は追撃を諦め取って返す。グラ達が逃げ遅れた兵士たちを殲滅していた。


 1回目の攻撃は成功だった。おそらく一万以上の敵兵を討ち取ったはずである。


「敵は細かく分裂して逃げました。たぶん部族単位で逃げたのだろうと思います」


 キルがグラに報告すると、グラは眉根を寄せて頷いた。


 十以上に分裂して逃げているので一つ一つは一万程度の軍隊だ。これからはその一つ一つを各個撃破することになりそうだ。


 心配していた敵のバトルホースによる反撃がなかったのは、奇襲に対応できなかったためだろう。抵抗らしい抵抗はなく、逃げることに終始しているようだった。このことが、逆に敵兵の損耗を少なくしただろうことは間違いない。


 結果的に言えば、敵の対応は最良だったのかもしれない。


「なかなかやるね! 敵さんも」


 グラがニヒルに笑う。


「それじゃあ、こっちも負けてられないね! キル君」


「はい。絶対に!」


『絶対に!』という言葉の中に、キルの決意が滲んでいた。絶対に負けるわけにはいかないのだ。


「各個撃破……しに行くか! できるだけ削っておかなくちゃな!」


「はい。索敵全開で潰しにいきましょう」


「一万程度の部隊なら、こっちも三パーティーに分けて挑んでも殲滅できるんじゃないか? そのほうが効率が良い。キル、クリスとケーナ、サキとマリカの三隊にその護衛を割り振るとすると……キルはユミカとモレノとルキア、サキとマリカに俺とエリスとユリア、クリスとケーナにはロムとホドってところかな」


 グラがパーティーを三つに分けて三方向の捜索追撃に当たるように指示を出す。こうなることは、想定していたのでグラはこの作戦とバランスの取れたパーティー編成を事前に考えておいたのだ。


「まだ、敵が空を飛んで応戦できないと決まったわけじゃない。人数が少なくなった分反撃には十分気をつけてくれ!」


 キルはまだ敵の反撃を恐れていた。敵には神級、王級、聖級の騎兵がいるのだ。


「四時間後にここに集合することにしよう。絶対生きて戻ってくれ。無理するなよ!」


 グラの指示で三パーティーが三方向に散っていく。北東方面にキル達。東方向にグラ達。南東方向にロム達が飛んでいった。それぞれが索敵全開で逃げた敵の軍を探して各個撃破する予定である。


 キルが北東方向に向かったのは最強の敵影ーーテムジがいると思われる部隊が逃走した方向だからである。敵の最強は自分が倒すーーパーティー最強の自分が倒すのが最も適切な作戦であり、仲間の安全のためでもあるはずなのだ。


 飛び続けるキルは、三十分くらいで敵の一軍の気配を索敵で感知した。

 

「こっちだ! いくぞ!」


「「「はい!」」」


 逃げたの敵兵がばらけた兵士を集めるために、水場の近くで陣取っているのを眼下に収めたのはそれから十分後のことであった。

 


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