378 ライガー狩り 1
荷馬車を運転するキルは草原に到着する前からライガーの群れを索敵で見つけている。荷馬車から降りればすぐ安全に狩に移れるように周囲の状況は、危険な魔物がいないことは確認ずみだ。
荷馬車から降りたゼペック爺さんの視界の中に飛び込んできたのは昼寝をするライガー五匹の群れだった。
「おや! おるのう」
「スゲ〜な。探す手間が省けたぜ。ラッキー!」
「もしかして、分かっててここに止めたのかしら?」
ドロンがキルを笑顔で見つめる。キルは黙って頷いた。
「いよいよ……ですか?」
シキがビビりながら荷馬車を降りた。
「さて、どうしようかのう」
「ゼペックさんが四匹、残りを三人で……で良いんじゃないですか? 俺は基本サポートに回りますから」
「んじゃ、まずワシが四匹倒すとしようかの」
ゼペック爺さんが身体強化のスキルを多重がけし、強力な光に包まれステータスが一気に上がる。
横で見ていたシキが目を点にして口をパクパクしている。
「さすがはゼペックさん! やっぱりスゲ〜な!」
キルケがニヤリと口の端を上げる。そしてキルケも防御力強化のスキルを使った。
足元に展開する魔法陣と体を包む光、キルケの防御力が上がる。
ライガー達が跳ね上がるオーラに反応し、のそりと起き上がると戦闘形態に変化し始める。キル達を敵とみなして、応戦の準備をしたらしい。
体の筋肉が膨張し全体が一回り大きくなる。そして牙と爪が伸びていく。
雄ライガーが咆哮する。
ガオーーーーン!
戦闘開始の合図だ。
敵が身構える前に、チャチャッと何匹か倒しておけば楽なのになとキルは思いながら、成り行きを観察する。
五匹のライガーがヒタヒタと近寄ってくる。
ライガーの狩りは雌ライガーの仕事だが、これは狩りではなく戦いだ。雄ライガーも初めから戦いに加わっている。
五対五の戦いといえども強力なオーラを放つゼペック爺さんを前に全力の戦いは必至と緊張し覚悟を決めた目つきのライガー達だ。
初めに動いたのはドロン。
彼女はゼペック爺さんから買って身につけた『飛剣撃鎌鼬』を放つ。
ドロンの振った両手剣からエネルギーの刃がライガーを襲う。
(おそいな……)
キルがそう感じた剣撃を、やはりライガーは素早いフットワークでギリギリ躱わす。
剣撃のスピードや大きさは、放った本人のステータスに依存する。ステータスが低ければその剣撃の威力も低いのだ。
警戒を強めていたライガーにはなんとか躱せるスピードだったが使い所では有効なスキルには違いない。
「く!」
悔しそうにドロンが息を吐く。
次の瞬間ゼペック爺さんがライガーに群れの中央に踏み込む。
一瞬の出来事にライガー達の動体視力が追いついていない。突然目の前から消えたゼペックが隣に現れたという感覚だ。
ゼペック爺さんのの拳が唸りを上げる。一匹の雌ライガーが右脇腹を痛打されてくの字に折れ曲がりながら吹っ飛んだ。
次の瞬間ゼペック爺さんの右回し蹴りが別の雌ライガーの頭部を蹴り潰していた。
一気に二匹の雌ライガーが即死した。
ゼペックは、拳法の型のような構えをとって残りのライガーに隙なく身構える。
「おおー! さすがは師匠!」
シキが感動して驚きの声を上げる。
「ワシはまだ、お前の師匠じゃないわい!」
弟子にした覚えはないとライガーを警戒しながら言い放つ。
三匹のライガーは、ゼペック爺さんを恐れて飛び下がり距離を取っていた。
「こっちの二匹はワシがもらうぞい!」
なんともカッコイイことを言うゼペック爺さんが踵を返して拳を繰り出す。
「飛竜拳!」
ゼペックの拳が飛んでいき雌ライガーの鼻面をとらえた。
エネルギーの拳に顔面を潰され、崩れ落ちる。
キルケも雌ライガーとの間合いを詰めていく。キルケに隠れるように剣を構えているのはシキだ。ドロンは大きく左に回り込んで雌ライガーを挟みうちにしようと試みる。
ゼペック爺さんは雄ライガーに睨みを効かす。
「ター!」
キルケが鉄拳を振るうが雌ライガーは横に飛びのいて三角飛びで後ろのシキに飛びかかる。
「わー!」
シキが剣を降りまくっると引っ掻き攻撃を繰り出したライガーの爪がたまたまぶつかる。だが力の強さがまるで違うためシキはそのまま吹っ飛ばされた。
回り込んでいたドロンが背後から飛剣撃鎌鼬を放つ。
雌ライガーはシキに攻撃した直後だったため、躱し遅れて背中に剣撃を受けた。傷から血が飛び散りライガーが悲鳴を上げる。
ギャーオー
キルケが追撃して正拳突きをくりだす。
バカーーン!
雌ライガーが逃げるように飛び跳ねながら打撃を受け流すがその脇腹のは拳の後がはっきりとついていた。
グオーー!
ドロンを睨みつける雌ライガーの傷は浅いのか、まだまだ余裕の表情だ。
吹っ飛ばされたシキがむくりと立ち上がる。特に大きな怪我はなさそうだ。そしてまた剣を握って身構えた。
八月一日より新作アップ予定です。
『お宝探し、しませんか?』 ダメダメおっさんが、超絶美少女と仲良くなっても良いじゃないか。俺ってそこはかとなく良い男かもしれません
よろしくお願いします。
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