35 護衛任務 3
「コーナーさん達は、索敵とか使えるんですか?」質問するキル。
「残念なんだけれど俺たちには使える者はいないんだ。気配察知なら皆んなそれなりに使ってるつもりなんだけれどもね」とコーナー。
索敵は気配察知よりも遠くまで生物の存在を知ることができる。
それが何かまで経験により推測ができる様になるので視界の開けていない場所では便利なアーツだ。
気配察知は索敵より狭い範囲内で生物の存在を知ることができる。
「索敵ができると良いんだけれどもね」とコーナー。
「索敵を身につけるためのスクロールが有りますよ。ゼペックさんのスクロール工房に行けば売ってます」とキルが宣伝した。
「そういうスクロールがあるのか〜、でもスクロールってとても高価だろう」
誰もが口にする言葉をコーナーも口にした。
「そうかも知れませんが、能力が身につくことを鑑みれば安いと思いますよ。俺もクリスもそれを使って索敵ができますからね」
「そうなんだ!君達索敵使えるんだね」
「はい。獲物を直ぐに見つけられますし安全な獲物を選ぶこともできますから便利ですよ」とキル。
「80000カーネルしましたけれど、私は索敵ができる様になって良かったと思ってますわ」クリスが自身の感想を述べる。
「80000カーネルかあ。やはり高価だよなあ、今は気配察知で間に合っているからなあ。考えるところだよなあ」渋い顔のコーナーで有る。
「索敵ができると、たくさん獲物が狩れますよ」とキル。
「それで君達は毎日大量に獲物をとって来るんだね」納得するコーナー。
「そろそろ魔物の住むポイントに近づくぜ」ブランが注意を促した。
キルは索敵をして見る。確かに前方に魔物が住んでいる地帯が有るのがわかった。
その中でこの馬車の通り道に近い魔物で襲ってきそうなものがいないか気をつけて見る。
「この辺で見かけるベアーくらい強くて6頭とかで行動している魔物って何ですかね?」前方に見つけた要注意の魔物について聞いて見るキル。
「この辺の草原で群れで狩りをして1匹ではベアーくらい強そうな奴って言ったらライガーかな。奴らは1匹のオスと数頭のメスとその子で集団行動をする。最も危なくて避けるべき魔物だぞ」ブランが言った。
「じゃあそれですね。オス1とメス4、子供といってもメスより弱い程度の個体が1の6頭の群れが襲って来そうな位置に居るみたいですよ。このまま進めば接触しそうですね。こちらを見て逃げると思いますか?」とキルが言うとコーナーは御者とガンザに声をかけた。
「前方にライガーの群れがいるらしいぞ。見えるか?止まってやり過ごそう」
「見えたぞ、ライガーだ。ヤバイな!こっちを見てるぞ」
ガンザが怒鳴った。護衛の皆んなに緊張が走る。
「戦闘準備をして相手の出方を見よう」コーナーが指示を出す。
「滅多に有ることでは無いんだがなあ」とブラン。
「奴らは基本狩りをするのはメスの仕事だ。メス4頭がまず近づいて来るかだな」
コーナーがライガーの習性を教えてくれた。
「4頭が近づいて来てますね」
キルの索敵によりライガーの動きで狩りが始まった事が判明した。
「おいおい、マジかよ」
コーナーの足元に光の紋様が現れ体に吸い込まれて行く。
続けてもう一つ別の紋様が現れこれもコーナーに吸い込まれていった。
コーナーが何かのスキルをつかったのだろう。強化魔法の類か?とキルは思った。
見ればブランもガンザも強化魔法を使っている。キルはその紋様を目に刻み込んだ。
スクロール職人はこの紋様を蝋皮紙に刻み込んでスクロールを作るのだ。
だから何らかのスキルを見た時はその発動の紋様を覚えておくことが大切なのだ。
「俺たちは遠距離攻撃が主体ですので射程に入り次第攻撃を開始して良いですか」
キルが許可を求めた。
「頼む、近づかれる前に倒してもらえれば助かる」
「ケーナ、クリス、高いところに陣取って矢と魔法の準備だ!」
ケーナとクリスは御者台の上からライガーを狙うポジション取りだ。
キルは銀の翼と共に前線で身構えた。
6頭のライガーの群れが近づいて来る。
手前から4頭のメス、その後ろに若者、最後尾に大きなオスがヒタヒタと迫る。
キルは両手にストーンショットのスクロールを構えた。
4頭のメスライガーが戦闘態勢に入る。拡がりながら前方を囲う様に近づいて来る。
「ケーナ、右!」キルが指示を出す。
そしてキルは正面の2匹にストーンショットをお見舞いした。
吹っ飛ぶ2匹のライガー。と同時に右のライガーにケーナの強射が突き刺さる。
ケーナの矢が眉間を貫き矢が深々と突き刺さった。
左のライガーがクリスの射程圏に入るとファイヤーボムをお見舞いするクリス。
ライガーの頭が右半分吹っ飛ばされて絶命する。
キルのストーンショットを受けたライガーがむくりと起き上がるの
を見て2発目のストーンショットをお見舞いするキル。流石に2発目でトドメとなった。
ケーナの矢を受けてライガーはピクリとも動かない。立ったまま絶命した様だ。
「ガオーーーーン」
大きな咆哮が響き渡り雄のライガーと子供のライガーが真っ直ぐに突進して来る。
全速力で突っ込んできたのだろ
うあっという間に目の前まで来ている。
ブランとガンザが2頭を受け止めるべく進み出た。
ブランが雄ライガーの爪を盾で受けながら右手の剣を突き立てる。
ライガーはブランの剣を爪で叩き落とす様に受け止めた。
コーナーは横に回り込みながら首筋に上段から斬り下ろす。
ライガーから血飛沫が飛び散った。
ガンザは子ライガーと剣と牙、爪の闘いを続けていた。
キルはガンザの加勢に入り横からストーンショットを撃ち込むと、子ライガーの動きはガタリと鈍りガンザの剣でトドメを刺された。
ブランとコーナーの2人は白熱の戦いを強いられていたがガンザとキルが戦いに加わると四方から剣撃を受け続け最後はコーナーによってトドメをさされた。




