249 クリス再会す
ルビーノガルツ侯爵クリーブランドは1200の兵を連れてマークキス南東の貴族軍集結地にいた。
そこには貴族軍7500とベルゲン王国四天王ボルタークとウェンリー率いる王国直轄軍1万が集合していた。
「ダミア近くのダミダナル平原で王国軍2万とスタインブルク軍の2万で戦いが始まったようです。別のスタインブルク軍の2万がさらに東のアムテルに向かったとのこと」
「うむ」ルビーノガルツ侯爵クリーブランドが頷く。
幕舎に行って相談せなばならないな…このままではアムテルが危ない。
そこに駆け込んできたのは執事のギルバートだった。
「旦那様、クリス様がお見えです」
ギルバートの言葉に顔色を変えるクリーブランド。
「クリスが、クリスが来ただと。早くここに呼べ」
「お連れ様もご一緒でよろしいでしょうか?」
「かまわぬ!早く呼べ!」
「ただいまお連れします」
ギルバートはそう言うと幕舎を出て行った。
ルビーノガルツ侯爵クリーブランドはソワソワしながら幕舎の中を歩き回る。
クリスとはもう一年ちかくあっていないだろうか。
パリスの街中にいた頃ならいつでも会えると思っていたが、パリスの街から忽然と消えた時には驚かされた。
冒険者になることなど許すのではなかったと後悔しても今更遅い。
いっそこの際クリスを家に呼び戻そうかとも思うクリーブランドだ。
もうアムテルのことなど忘れてしまった。
ギルバートに連れられて幕舎にクリスが入ってきた。後ろに見覚えのあるキルという少年とあと数人が一緒だ。
「クリス!よく無事でいた。パリスから消えてしまった時には心配したぞ!」
クリーブランドがクリスに駆け寄りその両手を掴んだ。
「お父様、心配をおかけしました。申し訳ありません。でも今日は私がお父様の事を心配して駆けつけました」
クリスの顔が厳しく引き締まる。
「うむ。すまぬな、だが国を守るは貴族の務め。出兵はさけられぬ」
クリーブランドが毅然と言い放つ。
「はい。それはわたくしも理解しております。ですのでわたくしの力でお父様をお助けしようと参ったしだいです」
「そうか、ありがたい話だが数名の兵が増えたところで些細なもの。我がそばで控えていてくれ。その方が安心だ」クリーブランドの顔は娘の身を心配する親のそれで有る。
「お父様、今の私は以前の私とは違います。今、私は神級魔術師なのです。きっとお父様のお役に立つことができます。それに一緒に来てくれたキルさんとケーナちゃんは同じく神級冒険者ですからとても強いですよ。」
クリスの言葉にクリーブランドが愕然とする。
「神級冒険者が3人も援軍に駆けつけたというのか?」
「ワシとクッキーもこう見えて特級拳闘士なんじゃぞい!」
ゼペック爺さんが自慢した。エッヘン!
「ナナナなんと!そんなに強い人たちが揃っているとは思いもしなかった。クリス、でかしたぞ!これでスタインブルク軍など恐るにたらん!」クリーブランドが拳を握ってガッツポーズをした。
「そうじゃろう!そうじゃろう!」
ゼペック爺さんが得意げだ。
「よう御座いましたなあ…‥ご主人様……クリス様が神級魔術師になられるとは……」
ギルバートが目に溜まった涙をハンカチで拭っている。
「キル君!久しぶりだね。クリスの事をよく指導してくれた。まさか神級まで進化するとは思いもしなかったよ。本当に世話になった。ありがとう」
クリーブランドはキルを見つめると近づき握手をするのだった。
「えーと、あの、彼女に迷惑をかけてたのは俺の方で……俺のせいでパリスから逃げるようなことになってしまって、申し訳ありません」
「事情は知らんが今はまたこうして会えたのだから良いではないか」
「お父様、キルさんは何も悪いことはしてないのです。ただキルさんの能力を我が物にしようと狙われただけなんです」
「詳しいことは分からんがキル君が悪い人間ではない事はわかっているつもりだよ。クリスチーナ」
ルビーノガルツ侯爵クリーブランドがクリスに笑顔で答えた。
クリスも安心して笑顔を見せる。
「では今回はクリスとキル君達の力を借りるとしよう。一緒に幕舎についてきてくれ」
クリーブランドがこれからの行動を将軍達と相談するために幕舎に行こうと誘った。
「では行こうかの!」
ゼペック爺さんが楽しそうにニヤリと笑った。




