248 クリス出撃す
緑山泊
幹部達が集まる中、ジルベルトがスタインブルクとベルゲン王国の戦争が始まり、王国各地の動きを伝えた。
スタインブルク軍が想定された戦場マークキスの北を東進してダミアに向かいそこで戦闘状態に入っている事。
スタインブルク軍4万、うち2万はさらに東進する気配だと言う事。
王国軍2万はダミアに到着、マークキスは4000、ダミアは3500、アムテルは3500の兵で籠城している事。
王国軍は追加で王都から兵1万を派遣した事。
その他の貴族も次々と軍を派遣していつ事。
内訳はベルゲンケルト、ベルクレスト、軍2500づつ。ルビーノガルツ軍1200、パリス侯爵メレンハイトの軍1300で貴族軍系7500で有る事。
このような情報を伝えると、ジルベルトはため息をついた。
「ゾルタン様、お願いが御座います」
クリスはゾルタンに直訴した。
「我が父、ルビーノガルツ侯爵が援軍としてダミアに向かったと聞きました。私が父を助けにいくのを許してください!」
ゾルタンはにこやかに笑った。
「クリスさん、あなたが行くことを妨げたりはしませんよ。それはあなたの自由です。
『15の光』の皆さんもクリスさんに付いて行きたいのではありませんか?」
「自分もクリスを助けたいっす!」
ケーナがついて行きたいと言うとみんなが行きたいと言い出した。
「そうでしょうね〜」
ゾルタンが笑う。
「本来ここで私が反対してはいけないのでしょうが……でも、全員がこの場合を離れられるとロマリアに対する押さえが不十分になります」
ゾルタンの表情が曇った。
「これはお願いなのですが…本来なら皆さんを喜んで送り出すべきところなのを知った上でのお願いとして、クリスさんについて行く人を限定していただいて、ロマリアに備えていただきたいのです」
「俺たちが残ってロマリアに備えよう」とグラが言う。
ロム、ホド、サキが頷いた。
ジルベルトが申し訳なさそうに言った。
「もう少し残ってもらえないだろうか?」
「大丈夫です。私一人で行って来ます」クリスが気を使った。
「では、ケーナさんとあと数人ということでは?」とジルベルト。
「そんならわしが一緒に行くぞい。クッキーはどうじゃ?わしらはロマリアの押さえにはならんでのう」ゼペック爺さんがニコニコしながら言った。
「私で良ければ行きますよ」クッキーも恐る恐る声をあげる。
ゼペック爺さんとクッキーはこれでも特級拳闘士だ。
「お爺ちゃん大丈夫?」モレノが心配そうに言う。
ルキアがモレノを睨んだ。「大丈夫でしょ!特級なんだから!」
。
ゼペック爺さんとクッキーはロマリア戦には参加していなかった。
と言うか今まで戦争には参加していない。
だが戦力も装備も王国軍に混ざればその中ではトップクラスの実力と言えるだろう。
そんなゼペック爺さんが意気揚々と名乗りを上げたわけだ。
だが、キルも皆んなも実は心配だ。
「じゃあ、俺も参加して良いでしょうか?」
キルが遠慮がちに参加を申し出た。
「わかりました。キル君が参加すれば安心でしょう。ロマリアが動いても残りの人達で何とかなるでしょうしその配分で良いのでは無いでしょうか」
ゾルタンがにこやかに言った。
エリスやユリア、ユミカとマリカ達もクリスと一緒に行きたそうにしていたが我慢してくれたようだ。
「皆さん、ありがとう御座います。一緒に来れない皆んなもありがとう。私たちはまたきっとここに帰って来ますから心配しないで待っていてください。」
クリスがエリスやユリア達に向かって言った。
少女達はクリスに抱きついて一時の別れを悲しむのだった。
無理もない、戦争なのだから絶対生きて戻れると言い切れないのだ。
「大丈夫よ。キル先輩もいるんだし、自分がクリスを守るから!」
ケーナが皆んなに笑って見せる。
おいおい、自分がクリスを守るなんて、変なフラグを立てるなよ…と思うキル。
いや、ケーナもクリスもゼペックもクッキーも皆んな俺が守るから大丈夫!
そう自分に言い聞かせるキルだった。
「グラさん、エリス達6人の事頼んでも大丈夫ですか?」
キルがグラに6人の事を頼む。
「なあに、大丈夫さ、サキもいるしな」
グラがキルに安心して行ってくるように胸を叩く。
サキもニッコリ笑って手のひらを上げた。
「それじゃあぼちぼち出発しようかのう」
ゼペック爺さんがやる気満々に笑った。
クッキーはチョコんとゼペック爺さんの背後にくっついていた。
キル、クリス、ケーナ、ゼペック、クッキーの5人はルビーノガルツ侯爵軍を助けるために緑山泊を後にするのだった。




