218 王都ローリエ 1
王都に向かって馬車を走らせているキル。
王都に向かう街道は今までになくすれ違う人や馬車の数が多い。
それだけ王都ローリエが栄えているということなのだろう。
馬車はその日の夕刻にはローリエに着いてキル達は宿を定めた。
街の中央には城壁に囲まれた王城が建っていてその城壁の周りには掘が巡らされ満たされた水が外部からの進入を妨げていた。
街はその堀を取り囲むように発展していた。
「これが王都ローリエですか?」
宿屋を出て街の散策を始めたキル達一行、物珍しそうに辺りを見回しながら歩く。
15人が団体で動けばどうしても人の目を引いてしまう。
それが美少女だらけともなればなおさらだ。
夕食は王都で美味しいものを食べたいと思い良さそうな店を捜しながら練り歩いた。
「客が集まり始める前に入店しないと15人が入れなくなってしまいますね」
「うん。うん」
エリスが早めに店に入る事を提唱した。
「あの店なんて、オシャレでよくない?」
サキの指差した店は、良い匂いが漂う綺麗な店だった。
席も十分空いていそうだ。
「あそこに入ろう」
グラが入店を決め、みんなが彼に続いた。
1人2000カーネル前払い、25種類の料理を好きに食べられるビュッフェスタイルの店だった。
席を決めるとそれぞれが料理を取りに行く。
みんな好みの料理を選んでご満悦だ。
クッキーは用意された料理の分析に余念が無い。
一食で2000カーネルは安くは無いが内容的には高くはない。
王都での初の食事は満足のいくものとなった。
翌日は王都の観光に向かう。
ロマリア王国の誇る王立博物館には美術品、芸術品、歴史的遺産などが飾られている。
王都観光では1番の人気スポットだ。
モーモウと闘う闘モウを見世物にした闘モウ場も人気だが、キル達は初めに王立博物館の見学に行くことにした。
博物館行きの乗り合い馬車に乗り博物館まで移動。
博物館では厳重な警備のもとにとても高価な品物を見学した。
「此処って強盗団に狙われないんですかね?」
やはりこれだけ高価なものが揃っていたら強盗団は狙いたくなるだろう。
「過去に何度もそういうことは起きているらしいよ。」
キルの質問にグラが答える。
「そのせいでこれほど警備の人間がたくさんいるんじゃ」
ロムも付け加えた。
ちょっと数えただけでも20人以上の警備員が索敵で感知できる。
と同時に30人くらいの一団が進入した事も感知した。
「あ!これ盗賊来ました」
グラ達も索敵をつかって確認したようだ。
「あれ、ちょうど来ちゃったね」
「あなた達がそんな話をするからよ!」
サキが怒る。
「どうしよう?」
当惑するキルにグラが答えた。
「警備員がやられたら戦うしかないけど、きっとほら、警備員に強い人がいるからこの人がなんとかするでしょう」
確かに警備員の中に強い人が1人いる。警備責任者だろうか?
でもどうだろう…20人の警備員は分散しているため30人もの強盗団に各個撃破されそうだ。
警備員と強盗団の戦闘が遠くで始まっている。すでに5人の警備員が倒されてしまったようだ。
戦力的には警備員特級1上級14に対して強盗団上級30というところだ。
「手伝って来ます。」
キルが言うと待ったがかかった。
「此処は任せて欲しいである。」
ユミカが戦いたいと言う。
「此処はキル君が目立つよりユミカちゃんで十分だし任せてみれば?」
グラもユミカに任せろと言う。
「頼んだよ、ユミカ」
キルもユミカに任せる事にして様子を見守る。
ユミカが現場に駆けて行き警備の人間に声をかけた。
「助太刀しに来たである!!強盗団覚悟!」
ユミカが盗賊団に殴り込みをかけた。
聖級拳闘士のユミカに上級如きでは太刀打ちできない。
「ゲホ!」
「バキ!」
「ガツン!」
ユミカが一撃で盗賊達の意識を刈り取っていく。
警備員達が見惚れているうちにユミカは30人の強盗達を叩きのめしていた。
「たいしたことなかったであるなあ」
つまらなそうにユミカは言って戻ろうとする。
キル達14人も今近くまで歩いて来たところだ。
「ユミカ、もう終わったの?」とモレノ。
「終わったである」
ユミカがつまらなそうに首を横に振った。
緑の髪がたなびく。
警備主任の男が声をかけて来た。
「助かりました。彼女とても強いんですね」
グラが警備主任に対応する。
「ハア…戦うのが好きで困ったもんです…」
「いえ!彼女が来てくれなかったら我々やられていたかもしれません。本当に助かりました。それにしても強いですね。ぜひ御礼がしたいのでこちらにいらしてください」
警備主任に案内されて奥の部屋に入っていくのだった。




