180 魔石柱
「全軍止まれ!」
「チャリー1、チャリー2、冒険者の前面に出て持ち場を交代せよ。
チャリー3、チャリー4、トランドル騎士団の前に出て持ち場を代われ。
チャリー5は防御柵の設置。
ブラウン1〜5は待機」
第3騎士団長らしき人物が大声で指揮をとった。
騎士達はキビキビと行動を開始した。第3騎士団は総勢500人ほどの大部隊である。
キル達の全面にチャリー1、50人、チャリー2、50人の約100人が展開しミノタロスと戦い始めた。
トランドル騎士団の前方にもチャリー3、チャリー4が展開していた。
トランドル騎士団とレスキューハンズは後退して休養を取ることにする。
ガンクスが第3騎士団長に御礼と報告に向かった。ケーナも後から遠慮がちについて行く。
「トランドル騎士団長ガンクスであります。この度は早急なる対応有り難う御座います」
「第3騎士団長カルパスだ。ここまでよく戦線を支えてくれた。君たちの奮闘を讃える。よくやってくれた。これからは我々が主体となって戦う。援護を頼む」
「は!微力ながらお助け申し上げます」
カルパスがケーナに視線を向ける。
「君たちは冒険者かい?」
「はいっす。自分らはパリスから来たレスキューハンズていう冒険者クランっす。ミノタロスの討伐と異常発生の原因調査の依頼を受けてやって来たっす」
「そうか、君たちは君たちの仕事をこなしてくれ。気をつけてな」
「はいっす」
直立するケーナ。カチンコチンである。
ブリキの人形のような足取りでケーナは仲間のところに戻ってきた。
「ケーナちゃん、どうだった?」
エリスが聞いた。
「こ、怖かった」
「休んでて良いんだよね?」「うん、うん」
「良いみたい。なんか、すきにしていいみたい」
ケーナの喋り方がいつもと違っている。
カルパス騎士団長の迫力に圧倒されてしまったようだ。
「ケーナ、しっかりして。みんなはこの間にしっかり休むのよ」
クリスがしっかり指示を出す。
「あ、ありがとう。クリス。だ、大丈夫っすよ」
ケーナもなんとか立ち直ったようである。
レスキューハンズは騎士団達から少し距離をとって待機するのだった。
その頃グラ達4人はミノタロスの進化の原因を見つけられずにいた。
「何か進化の原因になりそうなものはないのか?」
地上に降りて採取していなかった何かを探していた4人だったが何も見つけられない。
「無いのう」
「おかしいわね。なにかあるはずよ」
探している間にもどんどんミノタロスへの進化は起こっている。
町へ向かうミノタロスの数はどんどん増えていたのだ。
「何か視点がズレていたのかもしれないな。少し遠くからもう一度眺めてみよう。
何か気づくことがあるかもしれない」
グラの提案で4人がフライで空を飛び進化が起きている領域を遠くから観察した。
1時間ほど観察を続けていた4人だが、サキが突然叫んだ。
「円だわ。進化ゾーンは円状、しかも円の中心ほど進化している」
サキの言葉を確かめてロムが言った。
「たしかに円じゃ。円の中心に原因があるに違いないぞ」
「中心には何もないよ。地下に何か埋まっているのかな?」
「中心に攻撃を撃ち込むわ!@#¥##-*¥%/*-¥/:エクスプロート」
円の中心部が爆発して大きな地響きと砂埃が立つ。地面がえぐれる。
えぐれた地面の中に魔石柱が顔を出した。
「あの柱、凄い魔力を内包している。あれが進化の原因だ!」
グラが叫んだ。
「どうしてこんなものが地中に埋まっているの?」
サキが当惑して顔色を変えた。
「わからないが、これを破壊して取り出せば進化は止まるはずだ」
「その通りじゃ」
「はああーーーー」グラが気合いを貯める。
「兜割り!」
大上段から振り下ろした剣により魔石柱にビシリとヒビが入りガラガラと崩れていった。
「これはかなりレベルの高い魔石のようなもの。カケラを回収しよう」
「マジックバッグがミノタロスでいっぱいになりそうなの」
「キルを呼んでストレージに収納してもらうのじゃ。とても持ちきれる量じゃないぞ」
「拙者が呼んでこよう」ホドが飛んで行った。
「まだ埋まっている柱も取り出さなくては」
グラは残りの柱も砕いて取り出そうとした。
ホドがキルを連れ戻り、キルは魔石柱の破片をストレージに収納する。
「土の中にまだかなり埋まってるみたいですね。土精霊に取り出してもらいましょう」キルはそういうと上級土精霊を召喚した。
土精霊が土の中から魔石柱を引き上げる。1メートルの欠けた柱が引き上げられた。
その柱をグラが砕く。そしてキルが収納した。
「このかけらはかなり質が良い。⭐︎6くらいの魔石に相当しそうです。大きさは200個分くらいはありそうですね」
「その魔石柱は君が引き取ってくれ。良い材料になるだろう?」
「はい。助かります」
「後は進化したミノタロスを全て倒せば依頼完了じゃな」
ロムがニヤリと笑った。




