17 2人の新人 3
ゼペック爺さんに晩飯を買って帰らなくてはいけないキルである。
それなりの時間に明日の予定は決めておきたい。
ギルドの片隅で2人に金を分配しながら、
「明日はどうしたい?今日の成果は初日にしてはまあまあ上々の方
じゃないか?」と話し出すキルだ。
「え、コレで上々なんすか?」
理解不能という顔つきで聞き返すケーナである。
「冒険者なんて1年で2/3が消えてゆく仕事なんだぜ。初めから
食えるほど稼げる奴はいないと思うよ」
「そうですわよね」
「私たちも消えてゆく口なんすかね?」
「イヤ、初めからここまでできる人は少ないぜ。弓や魔法は充分に
生き残ることができる力を持っていると思う。
ただ荷物を運んだりする力とか後は逆境に耐える力とかはどうだろうな?」
「キル先輩にだけ荷物を持ってもらって申し訳ないっす」
「今日のことはいいんだけれど大量の獲物を運ぶのは1人では無理だからな。
弱い魔物は安いからたくさん運ばないといけないし、
強い魔物を倒せるようになるまではいろいろ我慢が必要だと思うしね」
「そうですよね」
「明日はどうしたい。また俺と一緒に狩りに行くかい?
街の清掃の仕事なら8000カーネルになるからそれも有りだぜ」
「そういう仕事をする時期もあるってことっすよね」
ケーナは驚き顔で言った。
「そうだな。俺なんてそれが今のところメインの仕事だからな」
「そうなんですか、あれほど手際よく狩りをしていたのに」
投げナイフの手際を思い出しながらクリスは言う。
「俺は生産職のスキル持ちだったからな。
戦闘職の冒険者みたいなわけにはいかないのさ。
成長は遅いに違いないからな。君たちのスキルとジョブは一致しているんだろう」
「「ハイ!」」
「それなら成長が早いっていうからな。
力だってきっとすぐに強くなるさ。なんとかなるだろう。
もし当座の金に困っているなら明日は清掃にするのもありだぞ。どうする?」
「そう言う仕事を覚えておくのも大切なことですわよ、ケーナ、
明日は清掃の仕事を覚えましょうか?」
真顔で言うクリス。
「わかった。明日は清掃で!」
キル、ケーナ、クリスは、ケイトさんに明日の清掃の仕事の手続きを
してもらうのだった。
「それじゃあまた明日ギルドの前で8時に合流したら清掃行くぞ。
今日はコレで解散だな」
「キルさん、3人の出会いを祝ってコレから一緒にご飯を食べませんか?」とクリス。
「そうですよ。一緒にご飯にしようっす」
「俺は爺さんに晩飯を買って行かなくてはならないので、
すまないがそれはできないんだ。悪いな」
「そうっすか、残念っす」
「じゃあ明日よろしくお願いします」
キルは2人と別れて晩御飯のかいだしだ。
いつものようにパンと惣菜と焼肉を買うと工房に帰って行った。
工房の前でぼーっとしているゼペック爺さんが見えてきた。
いつも何を見ているんだろうかと思うキルだった。
ゼペック爺さんの近くまで行くと爺さんもキルに気がついてキルの
方に寄ってきた。
「おお、帰ったかキル。今日はどんなだった」
「今日は新人の冒険者2人と一緒に狩りに行ってきました」
「ホウ! 狩りか。で、何か取れたのかのう?」
ニンマリしながらゼペックが聞く。
「小手調べなのでコッコキーとケンケンと一角ウサギを狩って来ましたよ。
今日の稼ぎは1人700カーネルです」
気まずそうに答えるキル。
「そりゃあ大した稼ぎじゃのう。ハハハハハ!」
大笑いをするゼペック。
「これからですよ。でも2人とも腕は確かと言うかやれば出来る子達でしたよ」
「そうかい、そうかい、それは良いこっちゃ」
「そういえば、ストーンショットのスクロール、強力でしたよ。
一撃で一角ウサギを狩れました。アレ良いですね」
「そうか、材料はあと幾つ分残っておるんじゃ?」
「えーと。あと9枚蝋皮紙があります。魔石の粉もその分くらいはあるかなあ?」
「魔法を使ってなければ魔力は充分に有るじゃろう。
8つ位は今日作れるのう。作っておいて損はないぞよ」
「そうですね、作っておきます」
ゼペックのアドバイスに素直に応じるキルであった。
2人で晩御飯を食べたあとストーンショットのスクロールを8つ作れた。
9つ目は魔力が足りなかった。
MP89でスクロール1つ作るのにMPを10消費するとすると8つ作れる。
つまりはそう言うことらしい。覚えておこう。
そして今、紙はあと1枚、ストーンショットのスクロール12、
ステータスのスクロール4を持っている。
売れるあては無いし強い魔物に対してはストーンショットを使っても
良いかもしれない。




