148 天剣のキラメキとキル 6
3階層に降る階段の手前の広間で一休みができた5人、階下から魔物が登ってくる気配が今のところないのが不思議に感じるキルである。
キルの考えからするとリザードマン達は3階層から追いやられて来ているはずだと思っていた訳で、階下からリザードマンなりそれ以外の魔物なりとかが出てきて然るべきだと思う訳である。
「魔物が下からやってくると思っていたんですけれど………来ませんね」
暫く眉間に皺を寄せて不審を募らせていたキルが疑問を口にする。
「下から出てこないようなら………これで魔物の氾濫は止まったって事にして良いのでしょうか?」
キルの疑問にグラが答えた。
「そういう事になるかなあ? ドラゴンは倒したし普通ドラゴンといえばボスキャラだからなあ」
「ブルードラゴンが逃げ出すような魔物が下の階にたくさん居るなんて想像したく無いわね」
そう言うサキの顔に微笑みはない。
「3階層の調査もするべきかのう?グラ、どう思う」
ホドは黙ってグラを見てめている。
「俺はここで逃げ出したいね。この先は碌なもんじゃ無いに違い無いよ」
グラは渋い顔でそう答えた。
「よくブルードラゴンに勝てたと思うわよ。キル君が居なかったらきっと全滅だったわ」
「じゃろうのう」
ホドも頷いていた。
「そのキル君は3階層に行くべきだと思うかい?」
「実はこれより先はヤバイと思ってました」
キルは自分の考えをみんなに話し出した。
「ブルードラゴンが下の階から押し出されたのは間違いないと思います。
下の階にはもっと強い魔物が溢れているに違い無いんです。
なのになぜ階段を登ってこないのでしょう」
少し考えてからキルが続けた。
「仮定の話ですが階段の広さの関係で登って来れない魔物が溜まっているのかもしれません。それならば運が良い。刺激せずにそっとしておけば氾濫は起きないでしょうから」
「なるほどな。確かに説明としては成り立つ考えだな。」
「ここで暫く様子を見て、下から登ってくる魔物がほとんどないならそれでよしとしましょうか?」サキが言った。
「こう言う仮説はどうじゃ? 3階層でブルードラゴンが2匹になって1匹のブルードラゴンが分かれて子分を引き連れて上に出てきた………と言う考えじゃ」
有りそうな話ではある………と思うキルだった。
それなら3階層以下は普通の状態であると言う事になる。
「いずれにしても階段を下っていけばわかることさ。きちんと見極めだけはしてから戻ろうぜ」グラが正論を吐いた。
やはり3階層の状況確認はしない訳にはいかないらしい。
「しょうがないわね。うちのリーダーは頭が硬いんだから」
サキがそう言いながらも納得顔をしていた。
しかし3階層に今より強い魔物がひしめいていたら最悪は全滅する事になる。
何か策はないだろうかと考えるキルである。
そして思いついたのが天剣の4人に聖級冒険者に進化してもらうと言う事だった。
「あの〜、これは提案なんですが、4人は聖級冒険者になるつもりはありませんか?
緊急避難的に借金でスクロールをお渡ししますよ。そうすれば少しは3階層に行っても戦えそうな気がしますよね。今のままではかなりヤバイと思うんですが」
キルは思い切って⭐︎5スクロールの購入を提案した。
「2億5000万だったよなあ」グラは⭐︎5のジョブスクロールの値段を覚えていた。
「4人分で10億を貸してくれるんじゃと?返せぬかもしれむぞ?」
「そうよこの後死んでしまうかもしれないのに」
「………………」
「それでも……自分も死にたくはないので………」
「…………」
沈黙が続いた。
「俺はいずれ買うつもりだったから貸してもらえるのはありがたいね。買わせてもらうよ」
その答えが呼び水になってみんなが買う事に同意した。
キルは⭐︎5のジョブスクロールをみんなのぶんを作り手渡した。
4人はスクロールを使って聖級冒険者に進化した。すでに討伐経験値は十分に達していたのだ。それはキルは鑑定でわかっていたのでこの提案をしたのだったが。
聖級になって自信を深める4人である。
3階層に下って行く準備は整った。
だが3階層のボスは下手をすれば王級の魔物だ。
これで戦力が充分に整ったとは言い難かった。
ここでキルはもう一つの事実に気づいた。
今⭐︎5のジョブスクロールを作る事によって20000MPを消費して経験値を2000獲得した事と王級スクロール職人への進化があと少しだと言う事である。
あと1200で進化できる。
後3個⭐︎5のジョブスクロールを作れば王級に進化できるのだ。
そうすればステータスが相当上がる。戦える………と。
そしてキルは剣士、魔術師、盾使いのジョブスクロールを作って王級スクロール職人へと進化したのだった。
キルの進化を見てグラ達4人が目を見張って驚く。
「もしや………」
「王級スクロール職人に進化しました」
キルが答えた。




